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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第632話:いきなりメインヒロイン

 ――――――――――一三二日目。


 急いで朝食をすませ、びゅーんと飛んで緩衝地帯へ。

 輸送隊副隊長インウェンがあたしに話があるとのことだ。

 フェイさんのラブ話が進んでるんだろニヤニヤ。


 ちなみにうちの子達には、調薬に用いる魔法の葉を持って灰の民の村に行ってもらっている。


「ユーラシアさん!」

「待たせた? ごめんね」


 まだ時間が早いため、輸送隊の人員も全員が揃っているわけではない。

 けどちょっとインウェンソワソワしてるな。

 落ち着かせるためにあえてラブ話以外のところから入る。


「ふーん、交易の荷物も多くなってきたねえ。今何人で行ってるの?」

「六人です」

「今、緑の民の方にモーションかけてるんだ。もう少しでレイノス交易にも参加してくれそうなんだよね」

「楽しみですね。緑の交易品は紙や柑橘類ですか?」

「やっぱ紙が主力になりそう。最初はあんまりお金にならないけど、いずれ大化けすると思うんだ。ってゆーか、そーゆー感じに持ってく」

「あはっ、期待してます」


 いずれ緑の民も交易に加われば、輸送隊員の数も増えるしいいことだな。

 またレベリングせねば。


「輸送隊も順調そうで良かった。でもインウェンに負担がかかり過ぎだよねえ」


 隊長の眼帯男の指揮や責任感、戦闘力には合格点をあげられるにしても、事務処理はなー。

 一応読み書き計算はできるらしいけど、当てにならん。

 交渉事全般や報告・連絡、隊をまとめる細やかな配慮なんかは全てインウェンの担当になる。

 今のところインウェンが務めているのは、替えの利かないポジションなのだ。

 

「いえ、アレク君とケス君のコンビは、十分私の代わりが務まりますよ」

「うーん、あの二人未成年なんだよね。商売には信用も必要だから」


 アレクとケスはいつまでも輸送隊にいるわけじゃないだろうしな。

 『鑑定』持ちの赤の民ビルカが読み書き計算できるなら最適だと思うが。

 副隊長クラスの人員についてはいずれ考えにゃならんことだ。


「レイノスで買いつけてきたものをカラーズで売るショップも開店しまして、おかげさまで好評です」

「そんな店あったんだ? 気がつかなかったな」


 弁当屋と緑のショップばかりに目が行ってたわ。

 緩衝地帯のショップも多くなってきたもんだ。


「ユーラシアさんはレイノスへ自由に行けますから、用はないと思いますけど」

「でもどういうものを買ってきてるかは気になるよ」


 ってのはさておき。


「主要な議題について語り合おうじゃないか。新しい展開あった?」


 無論、フェイさんの縁談についてに決まっている。

 さあ、どんと恋。


「新しい展開というわけではないのですが、フェイ様の意中の女性が誰かというのが漏れ聞こえてきまして」

「ふんふん」

「それがユーラシアさんなんです」

「……えっ?」


 何が何だってばよ?

 あたしには関係のねえことでござんすよ?

 傍観者席でニヤニヤするつもりが、いきなりメインヒロインに昇格だぞ?


「どーゆーこと?」

「族長家親族から二人の令嬢を勧められたフェイ様がユーラシアさんの名を挙げ、もう黄の民内部に拘るべきではない。精霊使いの実力を評価し、伴侶として考えていると……」


 ええええええええっ?

 強い者同士が組むと強くなるってこと?

 考え方としてありっちゃありだ。

 わからんではないが……。


「悪の元締め的な発想なんだけど。フェイさんのやり口じゃないな」

「守旧派といいますか、飛躍した未来予想図を描けない族長家親族一同が大反対しているという……」

「ははあ、なるほど?」


 構図はわかった。

 家柄を大事にする親族一同は反対するに決まってる。

 今までの黄の民の慣習や人間関係があるわけだし。


「……私は正直、ユーラシアさんならばフェイ様に相応しいと思い……」

「そりゃあたしはフェイさんの嫁くらい務まるけれども」


 こら、インウェン。

 悲しそうな顔すんな。


「でもおかしいな?」


 あたしが意図的にそうしてきた面はあるが、今のカラーズは実質フェイさん中心に回ってるようなもんだ。

 フェイさんが族長代理だから年若だからと一歩引いた立場にいたので、全体がまとまっていた。

 フェイさんはバランスに配慮するタイプのトップなのだ。

 正式に族長に就任し、しかも外部の人間でありながらカラーズに大きい影響力のあるあたし(自慢)を嫁になんてことになったら、反発する勢力だって出てくるだろうに。

 情勢がわからないフェイさんじゃないし、大体……。


「フェイさん、あたしにラブじゃないしな?」

「えっ?」

「あたしにはわかるの」


 優れた乙女センサーが感知するからだ。


「頭から尻尾までフェイさんらしくないなー。とゆーことは何かのメッセージに違いないから……」


 フェイさんが話してた言葉を反芻してみる。


 『周りが過熱気味でな。ブレーキがかからん』

 『精霊使いの判断力に期待しているぞ』

 『数日中に迷惑をかけることになるが、よろしく頼む』


「で、あたしの裁量で動いていいってことだから……」


 ははーん、朧げながら概要が掴めてきたぞ?

 このままだとフェイさん好みのエンディングにならないから、あたしを放り込んで事態をかき回してやれってことだな?

 悪いやつめ。

 数日中に状況が変化するならば……。


「何かわかりましたか?」

「インウェン、安心して輸送隊の任務を果たしてきなさい。あんたがレイノス行ってる間に事態は動かないから。で、帰ってきたら急速にハッピーエンドの喜劇になるよ」

「えっ? は、はい」


 どうやらあたしが面白くする役みたいだな。

 愉快なイベントに参加させてもらえるようだから、一応感謝しとこ。


「全然心配することないって。インウェンにとってこれは悪い話じゃないんだ」

「は、はい……」


 ちょっとはホッとしたか?

 あたしの好きにしていいらしいから、インウェンを主役に据えてやろう。


「これはフェイさんのちょっとした悪ふざけだよ。えらく人が悪いなー。あたしを引き込めば、何でも愉快な方向に転がると思ってるんだから」


 極めてインタレスティングなので乗ってやるけれども。


「帰ってきたら、何かフェイさんに指令を受けるはずだよ。あたしにも関わることだから、その時また会おう」

「わかりました」

「じゃーねー」


 手を振ってインウェンと別れる。

 楽しみが増えたぞ。

 予定を空けておかないとな。

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