第629話:奇跡の三八歳
アイテム採取には実はかなりの知識が必要なのだ。
が、アレクは少なくとも書物レベルのことは知ってるはずだし、ちょっと目が慣れれば小遣い稼ぎ以上の収入にはなるんじゃないかな。
「ハヤテの住んでる『精霊の森』あるじゃん? あそこ緑の民の村との出入り口付近はダメだけど、深いところにはかなり素材や薬草もありそうな気配だったよ?」
「なるほど、見る目を養えば採取で儲ける手があるのか」
「おいアレク、おいらにも教えてくれよ」
「おらもお願いするだ!」
「黒の民の買い取り屋がオープンしたぞ? 素材はあたしに全部売ってくれて構わないよ。あたしも数が欲しいからね。薬草はポーションやマジックウォーターにできたらより儲かるよ。保存利くし。おゼゼ払ってでも誰かに教えてもらう価値はあると思うよ」
知識や技術はおゼゼになるのだ。
もっともアレク達も忙しいから、手を広げられるかはわかんないけど。
「お金を稼ぐ手段ってたくさんあるんだなあ」
「人間の欲望には限りがないのだ。いいものを目の前にぶら下げてやって、欲しくなりそーな煽り文句を唱えれば売れると決まっている」
「紙飛行機の前例があるから、強烈に耳に残る」
「サイナスさんたら褒めてくれちゃって」
「ユー姉のセリフは偽善的に聞こえる」
「偽悪的の間違いでしょ?」
「ユー姉は普段もっと悪いことを考えてる気がする」
おいこら、どーゆーことだ。
うちの子達まで揃ってこっち向きゃしないじゃないか。
あたしは清く正しく美しいわ!
「姐さん、明日は白の民の村に来てくれよ」
「うん。朝でいいかな?」
「おう、灰の民の村までおいらも迎えに来るから」
「ついでだから、アレクとハヤテも行く?」
「「えっ?」」
ビックリするところじゃないだろ。
「札取りゲーム試作品を、白の民の子達に紹介する予定なんだよなー来てくれると嬉しいなー。ちらっ」
「また擬音トークだし」
「おらは行くだよ」
「精霊のハヤテが行くのにボクだけ行かないと、何言われるかわかんないじゃないか」
「何言われるかわかんないのが不安なら決めといてあげるよ。栄えある『薄情キノコ』の称号を進呈しよう」
「脅迫が地味!」
笑ってる内に、灰の民の村が見えてくる。
札取りゲームを遊んでる子供達の生の反応を観察することは重要だと思うよ。
「あたし達は帰るね」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
何だかんだで久しぶりの魔境だ。
オニオンさんがにこやかに挨拶してくれる。
「またあたしビンボーになっちゃったからさ。時々魔境に来るよ」
「え? 例の魔宝玉クエストの依頼料は……」
「使っちゃった」
オニオンさんが目を丸くする。
が、あたしが行政府に出入りしてたことは聞き知っていたのだろう。
察してくれたようだ。
「……ドーラの種蒔きですね?」
「おっ、いい言葉だね。さすがオニオンさんだなあ」
ドーラを耕し、大きく実らせたいのだ。
あたしは種を蒔く人。
「最近変わったことある?」
「よく魔境にみえるのはラルフさんですね。今日も午前中に来てましたよ。エルマさんもコツコツ素材を採取しにいらっしゃいます」
「皆頑張ってるなー」
あたしも頑張って稼がねば。
とゆーかエルマが来るってことは、パワーカード工房の素材足りてないのかな?
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
「姐御、今日はどうします?」
「あとでギルドへ寄って換金したいな。ラルフ君を捕まえられたら、緑の民の村行くこと伝えときたいんだよね。これヨハンさんの了承がいるだろうし」
「ということは、タイムナッシングね?」
「そゆこと。素材も欲しいけど魔宝玉優先だね。『遊歩』で北辺の人形系パラダイス行こう」
「「「了解!」」」
びゅーんと飛んで北辺西、人形系レア魔物群生地帯へ。
◇
「まーこのくらいかな」
一時間ちょっとくらい狩りに精を出し、そこそこの量の魔宝玉を得た。
お礼とかに使う用途の手持ちの魔宝玉はまだあるが?
「まず、家に戻ろうか。少し取り置いておいて、残りは換金してくるよ」
「わかりました。私達は家で待っていればいいですか?」
「うん、のんびりしてて」
最近うちの子達は家で待機している時間が多い気がするけど?
「あんた達、暇な時は何してるの」
「あっしは森へ行ったり、飛ぶ練習したりしてやすぜ」
「ミーもセイムね。あとフィッシュハンティングね」
「うん、アトムダンテは休みを満喫してるねえ。クララは本読んでるの?」
「そうですね、本を読んでいることが多いです」
「何か新しいことわかった?」
「ヘリオスさんにいただいた『世界樹とともに』という本ですけれども」
「ああ、ペペさんの書いた本ね」
「あれを読んでいて、ペペさんの現在の年齢は三八歳ということがわかりました」
マジか?
なのにあんな幼女っぽいのかよ。
奇跡の三八歳だな。
「じゃ、帰るよー」
「「「了解!」」」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「やあユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「ポロックさん、こんにちはー」
ギルドへ来た。
さりげなくチャーミングを浴びて内部へ。
お、ちょうど買い取り屋さんのところに、ヴィルとラルフ君パーティーがいるじゃないか。
「師匠。こんにちは」
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
「ヴィルを構っててくれたの? ありがとうね」
「ありがとうぬ!」
アイテムを換金し、皆で食堂へ。
「オニオンさんが、ラルフ君パーティーはよく魔境に来るって言ってたよ。今日も午前中行ってたみたいじゃない。上級冒険者っぽいねえ」
「いえ、師匠のおかげです」
照れ笑いするラルフ君パーティー。
魔境と聞いただけでガタガタ震えだすパーティーだったのが遠い昔のようだ。
「で、魔境は置いといて商売の話だけど」
「冒険者の話はそこそこに、最短最速で商売の話ですね。さすが師匠」
「とは言ってもな。冒険者じゃなくても生きてはいけるけど、おゼゼは大事じゃん? あっ、でもあたし魔境行けなくなったら死んじゃうかもしれないな。どうしよう?」
「知りませんよ!」
「冷たいなー」
「冷たいぬ!」
笑い合う。
ネタが弱い時、ヴィルの被せツッコミのこうかはばつぐんだ!




