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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第624話:悪い子なの!

 今日のクー川沿いを少し上流の水引き込み口にできる地域まで確保する作戦について、事後処理を話し合っている。


「では得られた素材・アイテム・魔宝玉ないしその売却品については、開拓資金の方に回していいんだな?」

「うん、構わないよ。一つ簡単に換金できそうにない魔宝玉はデミアンの報酬にしたけど、御了承くださーい」


 冒険者はプロだから、タダ働きさせてはいけないのだ。

 価値はあってもおゼゼにならないものでデミアンを雇えた、と考えりゃお得だろ。


「君はいいのかい?」

「あたしはたくさん食べたからいいよ。ごちそーさま」


 フェイさん、サイナスさんが苦笑する。


「デミアンもありがとうね」

「こんなに楽しいクエストなら大歓迎だ。悪くない」


 うんうん、皆に満足していただけたようだし。


「かなり肉が余ったな。各村に配布するが、デミアン殿とユーラシアもいるか?」

「いただこう。妹が喜ぶ。悪くないだろう」

「デミアンって妹さんがいるんだ? あたしはいいや。もう入らない」

「今食べろって話じゃないからな?」


 皆が笑う。

 まあ突進熊の独特の旨みはクセになるけれども。


「では、今日はお開きですかな?」

「はーい、お疲れさまでしたー」

「ああ、ユーラシア」

「ん? フェイさん何?」

「数日中に迷惑をかけることになるが、よろしく頼む」


 何ですと?

 さりげないようですげーダイナミックなフリだな。

 フェイさんらしいっちゃらしいけど。

 

「迷惑というと?」

「私事だ」


 『私事だ』だけで察しろってことか。

 ははあ、例のフェイさんの嫁を決めるラブい話か。

 親族連中に詰め寄られて候補二人に絞られているという。

 あたしに話を振るってことは……。


「あたしの裁量で動いていいんだね?」

「もちろんだ」

「わかった。任せて」


 いや、わかりゃしないんだが、フェイさんのあの顔は面白いことを企んでるっぽい。

 あたしの好きにしていいとゆー言質も取ったし。

 エンターテインメントは大好物です。

 サイナスさんが心配そうにしてるけど、部外者はすっこんでろ。


「じゃ、あたし達は帰るね」

「吾輩も帰ろう。皆、さらばだ」


 ヴィルが寝てるから転移の玉を使えないな。

 人数オーバーだわ。


「クララ、お願い」

「はい。フライ!」


 びゅーんと飛んで帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーちゃん、いらっしゃい」

「あ、しまった。バエちゃんのところに持ってくればよかったな」


 新人さんがどうなってるか様子を見に、チュートリアルルームに来た。

 不思議そうにするバエちゃん。


「えっ、何を?」

「掃討戦で獲得した土地を使いやすくするために、川から水を引きたいんだよね。引き込み口にちょうどいい場所はまだ魔物の生息域でさ」

「あら、大変ねえ。要するにこれから来る移民のために水を引くということね?」

「うん。で、その水の引き込み口を確保するのに今日、魔物の掃討をやってたんだ。昼は狩った魔物肉で焼き肉パーティーだったの」

「いーなー」


 得意技の高速クネクネを見せるバエちゃん。


「かなりお肉が余ってさ。持って帰るかって言われたんだけど、お腹パンパンだったから断っちゃったんだ。ごめんよ、バエちゃんとこのお土産にすることまで頭が回らなかった」

「いいのよ。残念だけど。残念だけど」


 残念さ倍量ですけど。

 大事なことだから二度言ったのかな?


「突進熊っていう、若干臭みがあるけど旨みの強いお肉なんだよね。手に入れたら持ってくるよ」

「うん、ありがとう」


 ハハッ、嬉しそう。

 あたしも同じだけど、バエちゃんも結構いろんな種類のお肉を食べてみたい人のようだ。

 今後転送魔法陣が増えていくにつれ、もっと多くの種類のお肉を手に入れられるようになるんじゃないかな。

 期待しててちょうだい。

 

「ところで新人さんは?」

「今日午前中に来たの」

「ついに来たか。よかったじゃん。チュートリアルルームすら来なくて脱落じゃ、何にもできないもんねえ……あれ、バエちゃんらしくない表情だね?」


 めちゃんこ複雑な表情してるじゃないですか。

 何でよ?

 新人さん来るのは喜ばしいことなんじゃないの?


「来たは来たんだけど、来なくてよかったかも」

「どゆこと?」

「悪い子なの!」


 悪い子は選定段階で弾いてるんじゃなかったのかよ?

 何々? ははあ、クッソ生意気な子ということらしい。


「『サーチャー』っていう、他人のレベルが見える固有能力を持ってるの。その子レベル二なのね? 私をバカにしてくるの!」


 冒険者でもないバエちゃんを、レベルで見下したって意味がないのにな。

 レベルなんかなくてもすごい人はいるよ。


「早くユーちゃんに会わせてギャフンと言わせたいの!」

「あたしも実際にギャフンって言ってる人を見たい気がするから、エンターテインメント的にバエちゃんの意見には全面賛成するけど」


 でもちゃんと仕事してくれるなら、性格には少々目を瞑ってもいいんじゃないの?

 しっかりしたポリシー持ってる子の方が続く気がするよ?


「武器防具支給してテストモンスターと戦ってったんでしょ?」

「転移の玉だけ持って帰ったの」

「え?」

「冒険者でもないザコレベル者の意見で装備を決めるのは、最初で躓く原因になりそうだからだって! 失礼でしょう?」


 ……あながち間違ってもいないんじゃないかな?

 言い方はアレだけど、むしろ正論な気もする。


「次いつ来るか言ってた?」

「いいえ。忙しい、未来のことなどわかるわけないだって」

「ナイフみたいに尖ってるねえ」

「触るもの皆傷つくの!」


 ピンクマンにもまだ会ってないか。

 ま、会う会わんはタイミングだしな。


「面白そーな子みたいだね。『アトラスの冒険者』の説明はしたんでしょ? いつもみたいに」

「したわ」

「新人さん、理解はしてたかな?」

「うん。でも運営母体については話せないって言ったら、怪しい胡散臭いって」

「直に聞いちゃったのかー」


 いや、『アトラスの冒険者』の組織自体は怪しくて胡散臭いことに間違いはないよ?

 でもそう真正面からバカ正直に攻めると警戒されるじゃないか。

 困った子だな。

 ただバエちゃんが言うほど悪い子じゃない。

 むしろまとも。


「ま、いいや。いきなりドロップアウトってことはなさそうだから一安心だよ。また時々あたしも様子見に来るから」

「お願いね。またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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