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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第622話:我らが勝利だ!

 デミアンの声がやや上ずる。

 

「ブラックデモンズドラゴン? ドーラでは確認されていないはずだが……」

「どんなやつ?」

「古代竜に次ぐ強さを誇る災害級のドラゴンだ。凶暴さではナンバーワンと言われている」

「ふーん、デミアンは皆を安全なところまで下がらせてくれる?」


 デミアンが驚愕する。


「自分のパーティーだけで立ち向かうつもりか? あれに?」

「あんた、気が高ぶると『悪くない』って言わなくなっちゃうねえ」

「ハハッ。美少女精霊使いは余裕があるな。悪くないだろう」


 正直支援が欲しいことは欲しいんだが、ちょっと危な過ぎる。

 どんな攻撃があるかもわからないしな。

 うちの子達に指示する。


「ウィッカーマンに準じたカード編成で。一ターンで片付ける」

「「「了解!」」」


 見たとこイビルドラゴンよりかなりヒットポイントは多い。

 しかし今のあたし達ならば、充分一ターンで倒せると見た。

 レッツファイッ!


 クララの勇者の旋律! ダンテの豊穣祈念! あたしのハヤブサ斬り・零式! 両方クリティカル! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・零式!  両方クリティカル! よーし、全部クリティカルだラッキー! アトムのコピー! あたしの攻撃を繰り返す。ハヤブサ斬り・零式! 両方クリティカル! もう一度ハヤブサ斬り・零式! 両方クリティカル!


「ウグオオオオオオオオォォォォォォォォ!」


 ブラックデモンズドラゴンが怒りに満ちた悲鳴を上げて崩れ落ちる……!

 闘気が消えたことを確認し、両手を上げて皆に声をかける。


「我らが勝利だーっ!」

「「「「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」」」


 下がっていた作業員達が駆け寄ってきて、爆発的な歓声を浴びせてくれる。

 よーし、皆さんに喜んでいただけたようだし、エンターテインメントとして合格点だね。


「あれを一ターンで倒すのか……」

「悪くないでしょ?」


 ニッと笑い合う。

 もうちょっと余裕をもって倒せると思ったのにな?

 何か底力みたいのがあったっぽい。

 隠してる力のある魔物がいるってことは覚えとこ。


「おっと、ドロップを確認しないと」

「姐御、『逆鱗』剥がしてきやすぜ」

「うん、お願い」

「ユー様、幽玄浮島珠です!」

「幽玄浮島珠かー」


 高級魔宝玉はゲットしても扱いに困るんだよな。

 そーだ!


「デミアン、これ依頼報酬代わりにもらってくれる?」

「これは……世界の秘宝的な魔宝玉なんだろう?」

「だからだよ。このクラスの魔宝玉になると迂闊に売れなくてさ。お家に飾っときなよ」


 天才冒険者がまじまじとあたしの顔を見る。

 いやん。


「ハハハ。悪くないな。もらっておこう」

「ありがとう!」

「礼を言われるのも変なものだ。悪くないが」


 高級魔宝玉の価値を知るデミアンならば、市場に流して相場壊すこともないだろうしな。

 おゼゼも持ってるだろうから、売却の必要もないはずだ。


「もうこれ以上召喚魔物出ないよね?」

「打ち止めだろうな。少なくともブラックデモンズドラゴン以上の魔物が召喚されるなど、考えられん」


 デミアンも最後という見解か。

 だろうなあ。

 これ以上はエンターテインメントとしてしつこ過ぎるし。


「姐御! 『逆鱗』五枚もありやしたぜ!」

「マジか? 大物だなあブラックデモンズドラゴン。イビルドラゴンでも今のところ得られた『逆鱗』は最高三枚なんだよ」

「イビルドラゴンを何体も倒してるのかい? 悪くないだろう」

「今日は儲かったなあ。開拓事業資金に組み入れよ」

「ん? 美少女精霊使いはいいのか?」

「今日はお肉腹一杯食べるつもりだからいいんだ。デミアンも食べていきなよ」

「ハハハ、悪くないな」


 デミアンも楽しげな様子になってきた。


「あたしは一旦前線に戻るよ。あっちは仕事が早いから、柵立てながら大分戻ってきてると思うけど」

「うむ、またあとで」


 『遊歩』でびゅーんと飛ぶ。


          ◇


「美味いなー」


 労働の後、青空の下で食べるお肉は最高だ。

 人数が多いと楽しいしな。

 今日はいい日だ。


 ちなみに次々と運び込まれる突進熊や何とかマウス(名前忘れた)に、調理班が悲鳴を上げたらしい。

 さらに毛皮は使えるからできるだけ傷をつけるななどと要求されて泣き出したため、クララが解体の手伝いをしていた。

 一旦帰ってクララ愛用のデカ包丁持ってきて、解体の神技を披露したら歓声が上がってたよ。

 クララの解体精肉技術はマジすごい。

 おゼゼ取れるレベル。


「精霊使い殿!」

「あ、オイゲンさん。お疲れ様でーす」


 緑の民オイゲン族長も上機嫌だ。

 久しぶりに冒険者っぽいことができたので、血が騒ぐのかもしれない。

 お疲れの様子でもないし、まだまだ現役でイケると思うよ。


「これで掃討戦跡地に水を引けますな」

「うん。水さえ引ければ、アルハーン平原は一〇〇万人の人口を支えられると思うんだ」

「うむうむ」


 満足そうだね。

 一〇〇万人ってのは決して大げさじゃない。

 掃討戦跡地はアルハーン平原のクー川右岸域に当たるが、それだけでも現在のドーラの人口の何倍もの人が暮らせると思う。

 移民は将来のお客さんで、ドーラ発展の源だ。

 大事にしないとな。

 

「明日、緑の民の村に伺うよ。印刷のことで相談があるから」

「サイナス族長に聞いております。例の識字率を上げるゲームの試作品ですな?」

「そうそう。それでね……」


 ちょっと交易とヨハンさんについて突っ込んだ話をしておこう。

 どーゆー反応があるだろ?


「製品ができあがれば、やはりヨハンさんの販売ルートに乗せざるを得ないんだよね」

「今他の商人を入れるのは現実的ではないでしょうな」

「で、もうちょっと緑の民にヨハンさんを受け入れてもらいたく思うんだけど」


 大量生産に取りかかるところで印刷止められちゃ、計画に大幅な遅れが出るしな。

 オイゲンさんも同様に考えてるとは思う。


「何か策がありますかな?」

「ヨハンさんの息子を連れていって、長老さん達に面会というのはどうかなと」


 もちろん明日いきなりというわけではなく、そう長老ズに打診してみるって意味だけど。

 ヨハンさんを直接伴うのは刺激が強過ぎるとしても、息子のラルフ君ならさほど風当たりが強くないのではないか?

 会わせさえすればこっちのもの。

 ラルフ君の持つ、レベルの低い者に対して優位に立てる固有能力『威厳』で、勝ったも同然だという目論見もある。

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