第618話:焼き肉パーティーは楽しみ
「当たり宝箱には罰則があったのか。でも後出しはズルくない?」
書いてないだけでウソついてるわけじゃないから別にいいけど。
いささか卑怯な気はするが、何か仕掛けてるくらいのことは当然あると思ってたしな。
「姐御の当たりハズレ判定はどうでもいいでやすが」
「ボス、どうするね?」
「当たりは開けないから関係ないな。今後もガンガン鳴らしちゃっていいよ」
あたしの行動を制限しようとするのが気に入らないわ。
クララが聞いてくる。
「もし銅鑼を鳴らした場合、宝箱の中身を貧弱にすると言われたらどうしますか?」
「もちろんお宝を回収してから鳴らす」
「今後ずっと宝箱の中身を貧弱にすると言われたら?」
「そんなんなったら、もうここに用はないわ。遠くからダンテの最強魔法で更地にして、クエスト終わらせちゃおう」
……やはり何かビクッとした気配があった。
うちの子達では気付けないほどのごく微弱な気配だ。
おそらくは主催者だろう。
知らんぷりしたろ。
「宝箱開けちゃいなよ。今日も元気にかっぱぐぞー!」
「「「了解!」」」
うちの子達が宝箱を順に開けていく。
「ええと、大きい絵ですね。特に魔力は感じません」
「こっちも絵だぜ。おっさんだ」
「アポーとパイナポーとペンのピクチャーね」
「また絵です」
「絵だぜ」
「ピクチャーね」
「今日は絵の日か」
宝物っぽいと言えば宝物っぽい。
有名な画家の描いた絵は結構なお値段になるものらしいし。
これらがどのくらいの価値があるか知らんけれども。
「前列の二枚と後列の四枚ではタッチが違いますねえ」
「本当だ。別人が描いた絵なのかな?」
「なかなかワンダフルなピクチャーね」
うむ、肖像画はもとより、静物画の方も表現しがたい説得力がある。
「きっといいものなんだろうねえ。でも困ったな?」
名画なら皆が見られるところに飾った方がいい。
しかし我が家にはほとんど誰も訪れない。
大体うちは埃っぽいしな?
絵を飾っとく環境じゃない。
「次イシュトバーンさんに会う時、持っていって相談しよう。絵のために一番良さそう」
「そうですねえ」
皆が頷く。
「じゃ、絵と空箱持って帰ろうか」
「あっ、姐御! あっしも銅鑼鳴らしていいでやすか?」
「私も鳴らしたいです!」
「ミーもね!」
「ガンガン心ゆくまでやっちゃってください!」
主催者は許さないみたいだけど、あたしが勝手に許可を出しちゃう。
だってあたしが聞きたいから。
散々銅鑼の音が響く。
うむ、いい音だ。
これ部屋の外には聞こえないのかな?
聞こえないわけないか。
とすると、立札の要求は外に住んでる人からの騒音の苦情とゆーこともあり得るな。
でも他人の迷惑になるならばそう書いてくれればいいのに、脅してくるんじゃ聞けないわなあ。
少々の疑問を残しつつ、転移の玉を起動し帰宅する。
チュートリアルルームに新人さん行ってるか確認したら御飯だな。
◇
「サイナスさん、こんばんはー」
夕食後、寝る前恒例のヴィル通信だ。
ちなみに今日もまだ新人冒険者は来てなかった。
『ああ、こんばんは』
「今日輸送隊帰ってきたんだっけ?」
『そうだね。夕方にはアレクも戻ってきたよ』
「この三日間、札取りゲームの進捗なかったなー。ちょっと残念」
『ユーラシアも忙しかったんだろう? 仕方ないじゃないか』
「忙しいこともあるけど、緑の民との絡みがなかったなと思って」
……昼間の疑問は質しておくか。
『オイゲンさんって子供いないんだよねえ? 緑の民の次の族長ってどうなるの?』
「長老達に子や孫がいるんじゃなかったかな。その内の誰かになるんじゃないか?」
『ああ、なるほど』
しかしあたし達が緑の民の族長宅行った時、随分歓待されてたと思う。
でも会ってないのは変だな?
『別の場所で家庭を持っていれば、族長宅に来る用事もさほどないだろ』
「とゆーサイナスさんの説か」
若干引っかかるけれども。
「今日ギルドでヨハンさんの息子に会ったんだよ」
『ふむ?』
「長老ズにヨハンさんの息子を会わせるって策はどう思う?」
『爆弾だなあ』
「あたしもそう思うけど、結局族長家とヨハンさんとの和解が必要じゃん? いきなりヨハンさんを緑の民の村連れていくのがなしなら、ワンクッション置いてラルフ君かな、と」
穏便に行こうとすると、ちょっと手詰まりなんだよな。
正確には展開が遅くてイライラする。
『ラルフ君というのがヨハン氏の息子か』
「そうそう。あたしを師匠と慕う感心な冒険者」
『君が師匠では、息子さんの苦労が偲ばれるなあ』
「苦労が偲ばれるのはあたしの方だろ」
まっこと失礼だな。
『話を通しておいて、会わせる手はあるな』
「話はしておくべきか。いきなりの方がドラマチックでインパクトあるんだけど」
『いきなりだと、あとで面倒かもしれないよ』
「あたしも面倒なのは嫌いだからなー」
『今度緑の民の村へ行く時、少し話を振ってみればいいだろう』
「いいね。明後日どうだろう?」
明後日ならアレクもケスもいる。
『札取りゲームの印刷をダシにするんだな?』
「そゆこと。自然に話を展開できそう」
『よし、明後日の午前中に訪問しよう』
これで札取りゲームの方も話が進むな。
『今日は君、何してたんだ?』
「大したことしてないな。例のお茶取れるザバンっていう自由開拓民集落へ行ってさ。輸出するから頑張れよって気合入れてきたくらい」
『結構遠くまで行ってるんじゃないか』
遠いっちゃ遠いけれども、転送魔法陣と『遊歩』があればすぐなんだよ。
「ザバンには一度誰か新政府の有力者を連れていきたいんだよね」
『芸が細かいね。パラキアス氏なら動けるだろう?』
「やっぱパラキアスさんだな」
あたしが尻叩いてるだけでは、重みと信用が足んないのだ。
ドーラ新政府の重役であるパラキアスさんか、さもなくばまだ見ぬ『西域の王』バルバロスさんなら影響力は強そう。
『明日はクー川沿いの魔物退治だ。よろしく頼むぞ』
「うん。焼き肉パーティー楽しみなんだ」
『ナチュラルにメインイベントが入れ替わってるけれども』
「えっ? どっちが重要かなんて言うまでもなくない?」
アハハと笑い合う。
皆で食べるお肉は格別だからなー。
「じゃ、サイナスさんおやすみなさい」
『ああ、おやすみ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『わかったぬ!』
明日は魔物退治!




