第616話:ペペさんのお仕事
グリフォンの羽毛を使った高級布団か。
これこそドーラの売り物になりそうではあるけど、グリフォンもドラゴン帯に生息している魔物だしなあ。
倒すだけでレベル六〇くらいは必要か。
その後他の魔物の襲撃を撃退しつつ羽毛を毟っていくとなると、尋常でない難易度になる。
ムリっぽくね?
「せっかく倒せても、血だらけじゃ売り物になんないしな。倒し過ぎると絶滅も心配だし……」
そもそもグリフォンはしゅっちゅう出会える魔物じゃない。
考えてみればイシュトバーンさんの言ってた、強制睡眠で眠らせ羽毛毟って大儲けした冒険者ってのは上手くやったもんだ。
「偶然倒せた時に考えようか。商売になりそうなことがわかったのは覚えておくよ」
「父は砂糖も考える余地があると言ってましたね」
「砂糖かー」
帝国よりもドーラの方が気候的にサトウキビの栽培には向いている。
が、大規模に作ろうと思うと、平地の面積とかなりの水が必要なのだ。
クー川の水を使えるアルハーン平原にジャストフィットだが、将来爆発的に人口増えるだろうことを考慮すると、腹の足しになるものを作りたい。
砂糖の搾りカスから作る紙の需要が増えるなら考えないでもないが。
「砂糖は西域に任せたいな。どこかいいところがあれば」
西域はアルハーン平原よりさらに暖かいしな。
「ありがとうラルフ君。ところでクエストの方はどう?」
「今は魔境ですね。目指せ一〇〇体です」
「そーか。ラルフ君パーティーなら問題ないよねえ?」
「いつかドラゴン倒すのを目標としますよ」
「優秀な弟子で鼻が高いよ」
照れ笑いしてるけど、皆レベル五〇超えてるからね
高級人形系魔物を倒せないとしても、マメに魔境をウロウロしてれば普通にレベルは上がる。
問題ないと思うよ?
「師匠はこれからどうされるんですか?」
「ペペさんの話聞いてから、ザバンっていう、西域の自由開拓民集落行く予定なんだ。お茶が取れるの」
「お茶? 所謂本物の?」
「そうそう、本物のお茶。質がいいから、帝国への輸出品に考えてるんだ」
「ははあ、さすが師匠」
さすがなんだぜ。
「では自分達はクエストへ行ってきます。失礼します」
「行ってらー」
「バイバイぬ!」
魔境にビクつかなくなったラルフ君パーティーは頼もしいな。
でもつまらん。
頼もしくなくてもいいから愉快であって欲しいとゆー、師匠の切なる願いだよ。
さて、問題はスキル屋だ。
やっぱり突っ伏して寝てるけれども。
「たのもう!」
「たのもうぬ!」
「ふあっ?」
いつものやり取り。
寝ていた店主が飛び起きる。
「ペペさん久しぶり」
「あっ、ユーラシアちゃーん!」
ペペさんが飛びついてハグしてくる。
ついでにヴィルもぎゅーしてくる。
何なんだあんた達は。
「ユーラシアちゃんは帝国本土へ行ってたんでしょう?」
「うん。でもお土産はないんだ。ごめんね」
「ちょっと残念ねえ」
アハハと笑い合う。
「ペペさんがあたしと話したいみたいって聞いたんだけど?」
「あっ、そうそう。どうしたらいいかしら?」
「いや、だから何を?」
全部丸投げだぞ?
「えーと新政府関係で偉い人認定されたけど、私スキル作ることとロマン砲撃つことしかできないの。どうしたらいいかな、ってことでいい?」
「そお、それっ!」
満面の笑みを浮かべるペペさん。
ハハッ、可愛い。
「皆が働いてるのに、私何もしてないから申し訳なくて」
「余計なことするなって言われてるんじゃなかったっけ?」
「うん、でも……」
何もしてないのペペさんだけじゃないし、別にいいんだぞ?
逆にペペさんが動くと事件になりそうだから、動くなって言われてるんだぞ?
「ギルドの意見として、合同で『アトラスの冒険者』による取り締まりの権限に関する行政府の裁可受けてるじゃん。何もしてないわけじゃないよ。加えてペペさん作の魔法『ソロフライ』を組み込んだパワーカード『遊歩』のおかげで、パラキアスさんが三倍くらい働けるようになったから大丈夫。全然問題ない」
「……」
納得しかねるようですね。
本当にいいのに。
「新政府はペペさんの支持が欲しいんであって、働けって言ってるんじゃないんだよ」
「私もドーラに貢献したいの」
「そーなの?」
何てこった。
ペペさんは単なる自分本位のアーチストじゃなかったのか。
「じゃあスキル作ってよ。輸出するから」
「えっ?」
困惑気味の見た目幼女魔道士。
「例えばさ、『プチウォーター』って魔法あるじゃん? あれよりもっと簡単に、バケツ一杯くらいの水を魔法力に左右されずに作れると便利なんだけど」
「便利? 便利な魔法?」
ペペさんの感性とは離れてたか?
「戦闘に使用するような魔法をその辺で売るわけにいかないじゃん? でも逆に皆が覚えていてもいいような魔法もあると思うんだよ。簡単な魔除けの魔法とか、火事の時火を消せる魔法とか」
「……」
「便利な魔法が多くなって、皆の生活が楽になることを想像するのはロマンだよ」
「……それもそうねっ!」
乗ってきたぞー。
「で、便利さとは別に、ドーラは貧しいからお金儲けしたいの。ペペさんの魔法をどんどん輸出できれば新政府だって喜ぶんだなー」
「喜ぶぬ!」
抜群の合いの手出ました。
「魔法をホイホイ作るなんてのは、最強のロマンチストペペさんじゃないとできないことだから」
「わかったわ。魔法の方向で頑張る!」
「よろしくお願いしまーす」
よしよし、頑張ってください。
「ごめんね。ユーラシアちゃんのスキルを作れなくなっちゃうかもしれないけど……」
「え? いいんだよ。皆が幸せになる方がロマンだよ?」
「そお?」
疑問形いらん。
まあペペさんもやる気になったようでめでたし!
「まずさっきユーラシアちゃんの言ってた水魔法でいいのね?」
「うん、水魔法が一番必要性が高くて売れそう。あたしも普及用に欲しいな。完成したらギルドでも売ってよ」
「え? 私の睡眠時間がなくなっちゃう」
寝る前提か。
「武器・防具屋さんか道具屋さんで委託販売すればいいよ」
「そうねっ!」
アハハと笑って一件落着。
「じゃ、あたしそろそろ帰ろうかな」
「私も帰るね」
「早速スキル作るの?」
「いいえ、寝るんだけど」
うん、流れ的におねむの雰囲気を醸し出してたけれども。
「じゃねー」
「うん、またね」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




