第615話:久しぶりにラルフ君と会う
依頼受付所からお店ゾーンへ。
あれ、買い取り屋さんと武器・防具屋さんとラルフ君パーティー?
「こんにちはー」
「師匠、よくぞ御無事で」
「無事だよもー。心配してくれなくても大丈夫だって」
ラルフ君達とは戦後ドーラに帰ってきてから初めて会うんだな。
皆に心配かけていたことを、少々申し訳なく思わなくないことを認めるのにやぶさかでない。
アハハ、自分でも何言ってるかわからん。
「皆で何見てるの? 新聞?」
「ユーラシアペナルティの記事ですよ」
「えっ?」
買い取り屋フリスクさんが笑って言うけど、ユーラシアペナルティ?
何それ?
「ほら、昨日ここで話してた魔法の葉青汁の……」
「ああ、あれか! 昨日行政府の前で新聞記者に捕まってさ。レイノス以外の警備を『アトラスの冒険者』が担当、重大違反者にはまっずい青汁飲ませるぞーって言ったら本気にしたみたい」
「さすが師匠」
冗談のつもりだったのにな。
とゆーかそんなん記事にするくらいなら、もっとしっかりとドーラ行政府は有力者に支持されてるんだぞーってことを書いてよ。
いや、購読者は読んでて楽しいエンターテインメントを求めているってことなのかな?
「いや、いいんじゃないですか? 魔法の葉は身体には無害ですし」
「ハハハ、トラウマになりますよ」
何かウケてるけれども。
しかし魔法の葉を口にするとトラウマになるのは大マジだ。
見ただけでショックを受けるようになる(実話&体験談)。
「師匠、少しお話よろしいでしょうか?」
「うん。食堂行こうか。ベルさんフリスクさん、さよなら」
「「毎度!」」
「バイバイぬ!」
何も売買してないのに『毎度』言われたぞ?
ヴィルはバイバイしてるけれども。
食堂でテーブルを囲む。
「緑の民に関しては師匠にすこぶるお骨折りいただき、長老達の商売に対する態度はかなり軟化したとの、オイゲン族長からの通信です」
「うん、緑の民は大したことないんだよ。皆商売はやりたかったみたいだから。交易もヨハンさんの絡まない、聖火教礼拝堂との間には始まってるの。でも紙を売り込むとなるとレイノスだからね。ヨハンさんを間に入れないと」
「何か上手い手段はありますか?」
問題はそこだ。
なるべくあたしが楽しめるやつがいいしな?
やり方なんていくらでもあるんだが、あたしのエンターテインメント判断基準に合格する手段となると……。
「ドラマチックなやつが感動的でいいかなと思ってたんだ。でも魔境で遭難した長老ズをラルフ君達が救い出すってアイデアは却下されちゃった」
唖然とするラルフ君パーティー。
感動が溢れ過ぎていたか。
「ちなみにラルフ君はどーゆー解決手段が好みだった?」
「……揉めることなく解決できれば、特に好みはありませんが」
「そーだったか。あたしは少々揉めても楽しめるやつがいいんだけど。まー人によって好き嫌いはあるしな」
あれ?
ラルフ君パーティーのあたしを見る目が尊敬じゃないな。
どうしたことだろう?
「魔境で救うというアイデアよりも、もう少し突飛じゃないやつですと?」
「ラルフ君緑の民の村行ってみる?」
血筋の面から最も恐れられているヨハンさんを、いきなり緑の民の村に連れて行くこと。
あたし好みの手段ではある。
ただ長老ズのヒステリックな反応を引き起こすかもしれないので、理性が否定する。
美少女精霊使いは無分別ではないのだ。
じゃあワンクッションおいてラルフ君ならどうか?
紹介次第で穏便に話し合えるのではないか?
「……自分がですか。なるほど」
「でもドラマチックにならないような気がして。あまり面白くなくない?」
「いや、あえてドラマチックじゃなくても」
「そお? どー考えても一番重要でしょ?」
ラルフ君パーティーが揃って首かしげてるがな。
これが師弟の断絶か?
断絶といえば、オイゲンさんに子供いないよな?
次の緑の民の族長って誰になるんだ?
サイナスさんに聞いてみるか。
「ぶっちゃけヨハンさんの血が最も緑の民族長正統だってことだけが嫌がられてるんだよね。だから緑の民の村に立ち入りません、族長にもなりませんって契約書なり誓約書なりに記せば万事解決だと思うんだけど」
「それでいいではないですか。師匠は何故ドラマチックに拘るんですか?」
「陰謀臭く物事を収めると、しこりが残るからだよ。ストーリー盛り上げて皆に知らしめる形で大団円に持っていけば、全員が納得するでしょ?」
「言ってくださればよろしいのに。師匠の趣味の問題かと勘繰ってしまいましたよ」
「あたしの趣味が最優先なのは間違いないけれども」
「師匠お!」
愉快な叫び声だなあ。
心地良いリアクションはラルフ君の一番いいところだぞ。
「でもたとえ緑の民が直接交易に参加しなくても、緑の民製の紙を使った商品とか印刷技術を用いた商品だとかは、さほど時間もかからず出そうなんだ。ヨハンさんには心配することないって言っといてね」
「了解です。父に伝えておきます」
「むしろ今力入れたいのは帝国との貿易の方だなー。輸入ばっかり多くなると、ドーラがビンボーになっちゃうよ。輸出品目を増やしたいんだ。ヨハンさんは何か考えてるかなあ?」
これまでのドーラの主力輸出品は魔宝玉とコショウだそーな。
魔宝玉はドーラの切り札だが、相場下落の危険があるので輸出量はあんまり増やしたくない。
しばらく貿易が細っていた関係もあって、帝国側の需要も大きいだろうな。
けど、いつまでもというわけにはいくまい。
魔宝玉の輸出額に対する比率は小さくしたい。
コショウはドーラでも最も気温の高い南部の半島部で作られていると聞いたことがある。
あたしは南部に行ったことないから、様子がよくわからんな。
「輸出に関して、高級羽毛布団はありなのではないかという父の意見ですが」
「高級羽毛布団? あっ、グリフォンの?」
「そうです」
すっかり忘れてたが、以前グリフォンの羽毛について商売にならないか、ヨハンさんの意見を聞いておいてくれと頼んだことがあった。
グリフォンの羽毛は洗うとふっかふかになるとのこと。
貴族向けの布団にはピッタリだろう。
「あたし忙しくてあんまり魔境行けなくなっちゃったんだよなー。ラルフ君達、グリフォン狩ったら羽毟っといて」
「「「「ムリです!」」」」
綺麗に声が揃ったね。




