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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第614話:『アトラスの冒険者』の資格を移す

 ――――――――――一二九日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」

「おっはよー、ポロックさん」


 朝からチャーミング言われるとチャーミングになった気がするよ。

 いや、あたしは元々チャーミングだったわ。

 チャーミングの伝道師としての自覚が足りなかった。

 もーれつに反省。


「その後シバさんどーかな? 元気?」

「やることが決まって、引き締まった面持ちのようですよ。早速ソールさんペペさんと話し合って、冒険者による取締りをしっかりやるとだけ決めて、ギルド内に張り紙してあります」

「よかった。もう安心だね」


 昨日あたしは随分働いた。

 マルーさんの直接の発言があったし、今朝の新聞でドーラの有力者が新政府支持でほぼまとまったことは知られたはずだ。

 となれば移民が来るまでは治安が悪化する要素はない。

 取締まりを受け持つ『アトラスの冒険者』がてんてこ舞い、なんて事態は起きないだろう。

 当面はさほど心配しなくてもいいんじゃないかな。

 

 それにしてもペペさんギルドに来てたんだ?

 何しに?


「ペペさんは、ユーラシアさんと話したいみたいですよ?」

「え? 何だろ?」


 また新しいスキルでもできたのかな?

 興味はもちろんある。

 ペペさんの作るスキルはアートでロマンでドリームでエンターテインメントだから。

 

「いや、新政府のお偉いさんになったので、戸惑っているようで」

「でもペペさんは会議出席しただけで、給料も出ないんでしょ? 義理を感じる必要なんかないのになあ」

「普段しないことを役割として振られるからじゃないですか? うちの義父もそうでしたよ」


 ペペさんに役を振るなんて無謀なことを、パラキアスさんやオルムスさんがすると思えん。

 いや、ペペさんはパワーナイン最年少(多分)だから、他の人に気を使うことがあるってことかな?

 さらに年下のソル君が忙しくしてる分、焦るのかもしれない。


「気にかけていてくださいよ」

「うん、あとで話してくる」


 ギルド内部へ。

 あ、おっぱいさんとヴィルが話してる。


「こんにちはー」

「こんにちは、ユーラシアさん」

「御主人!」


 ヴィルが飛びついてくる。

 よしよし、いい子だね。


「サクラさんにちょっと聞きたいことがあるんだ。一ヶ月半くらい前に『アトラスの冒険者』になったヨブって子がいるの」

「はい、カトマスのですよね」

「そうそう。ヨブ君の今のクエストの進捗状況ってどうなってるのかな? 差し支えないところまででいいから、教えてくれない?」

「少々お待ちください」


 何か魔道の装置弄りだしたぞ?

 ちょうど『地図の石板』くらいの大きさの端末だ。

 これでわかるってことは、チュートリアルルームのフルステータスパネルと連動してるのかな?


「……ヨブ・タルクスカルさん。チュートリアルルームを含めて三つの転送魔法陣が出てます。クエストクリアは落窪の月二四日が最後、魔法陣の使用は翌二五日が最後です」

「何だよもー! やっぱサボってるのかよ!」

「サボってるんだぬ!」


 あたしが見てた日のクエストクリアが最後だ。

 翌日はおそらくチュートリアルルームに『ホワイトベーシック』のパワーカードを取りに行ったんだろう。


「ユーラシアさんはヨブさんと関わりがあったんでしたっけ?」

「チュートリアルルームの係員と話してた時に、たまたまヌヌスツインズの前の冒険者が脱落しそうって話が出たんだ。まだ先輩冒険者のサポート制度がなかったから可哀そうだね、ギルドも損だね、じゃあ様子見に行こうかってことになって」

「なるほど」


 おっぱいさんが大きく頷く。

 揺れる。

 実に見事で羨ましい。


「ま、個人的にヨブ君は割とどうでもいいんだけど、弟のノブ君の才能は惜しいかなと思ってるんだ。やる気もあるしカンもいい。で『竜殺し』の固有能力持ち」

「ヨブさんノブさんでパーティーを組んでるんですね?」

「うん。ノブ君まだ一〇歳だけど、なかなかやる子だよ」


 ああいうやる気のある子こそ『アトラスの冒険者』であるべきなのだ。

 兄ちゃんの自宅警備に付き合わされてるのはもったいないじゃないか。

 自分の意思で動けるといいのになあ。


「ユーラシアさんが評価するのでしたら、ヨブさんからノブさんに『アトラスの冒険者』の資格を移しましょうか?」

「えっ?」


 おっぱいさん随分サラっと言ったな。

 『アトラスの冒険者』の資格移すなんて、簡単にできるの?

 いや、移せればいいなあとは思ってたけど。


「えーとノブ君未成年だけど?」

「成年か未成年かは『アトラスの冒険者』の要件にありません。成人を選んでいるのは暗黙の了解に過ぎないのです」

「そーなんだ?」


 何となく『アトラスの冒険者』は成人か、エルマみたいに成人見習い扱いの子が選ばれるんだと思ってた。

 成人の方が自分の人生に責任を持てるからってだけで、絶対のルールじゃなかったらしい。


「今回は特殊なケースですね。親御さんの了解を得られれば問題ありません。転送魔法陣もそのまま使用できますし」


 合理的っちゃ合理的だな。

 働いたら負けだと思ってるヨブ君は寝て暮らし、冒険者したいノブ君がバリバリ働く……。


「……誰も損しないね」

「損しないぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。


「最後に転送魔法陣を使用してから三〇日後、今月の二四日正午をもってヨブさんの『アトラスの冒険者』の資格は失効いたします。その五日前に弟ノブさんへの権利の移管について打診してまいりしょう」

「うん、その前に動き出して真面目に冒険者活動するならいいけど、多分ヨブ君はサボっとるわ」


 だって自宅の殻に閉じこもるカタツムリだし。


「サクラさんが行くんだ?」

「一番早いですね。家を存じていますから」

「面白そうだね。あたしも行っていい?」


 おっぱいさんがニコッと笑う。


「心強いです。出勤前にまいりますので、朝七時となりますが……」

「わかった。今月一九日の朝七時ね。あたしもヨブ君家知ってるから、そこで待ち合わせよう」

「わかりました。ではお願いいたします」


 普段なら朝七時はまだチャーミング乙女の睡眠時間中だが、エンターテインメントには勝てない。

 おっぱいさんを待たせるのも失礼だから、早起きしないとな。


「さよなら」

「バイバイぬ!」


 おっぱいさんが笑って手を振ってくれる。

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