第611話:語呂も重要
フイィィーンシュパパパッ。
イシュトバーンさん家へやって来た。
「おう、来たか。精霊使い」
「こんばんはぬ!」
「ヴィルも一緒か。可愛いな」
「何してんの、こんなところで」
転送先でイシュトバーンさんとお付きの女性達が待っていた。
「待ちきれなくてな」
「どんだけ暇してるの。カゼ引くってばよ」
お付きの女性達にお肉を渡す。
「あんたの言葉は温かいな。……持ってるのが正体のわからんアイテムってやつか?」
「そうそう。あとで見てよ」
「もちろん構わねえが……数が多くねえか? しかも全部マジックアイテムじゃねえか」
「みたいだねえ。これ、お待ちかねの飛ぶパワーカード『遊歩』だよ」
「おう、ありがとうな。二〇〇〇ゴールドだったか?」
「毎度ありー」
二〇〇〇ゴールドを受け取り、使用法を説明する。
つってもイシュトバーンさんはパワーカード知ってるからな?
「カード起動すると即『ソロフライ』状態になるよ。飛びたい方向に意識向ければ、そっち行ける」
「やってみるぜ」
フワッと浮き上がり、確かめるように進んだり止まったりする。
何だ、上手じゃないか。
実につまらん。
ヴィルも喜んで一緒に飛んでるけど。
やはりレベル低めの人の方がコントロールしやすい説が有力だな。
「全然問題ないねえ」
「全然問題ねえな」
「これに頼ってると足弱るから、なるべく歩きなよ?」
「おう、行けるところまで歩いて、疲れたら飛んで帰るのがいいかもな」
「レイノスで飛んでると新聞記者来ちゃうんだけど?」
「空高いところをすげえスピードですっ飛ぶからだろ。歩くのと見分けつかねえくらいなら平気だぜ」
おおう、なるほど。
そーゆー使い方はあたしには用がないけれども。
「もう一つお土産あるんだ。イシュトバーンさんってお酒飲む人だっけ?」
「おっ? 美味い酒は大好物だぜ!」
海の王国で買ったお酒を渡す。
「これ、海底のお酒なんだ。海藻を発酵させて作るんだって。珍しいでしょ?」
「ほお?」
「おいしいかどうかはわかんないけど」
ビンを熱心に見つめているイシュトバーンさん。
「ありがたくいただこうじゃねえか」
使用人から声がかかる。
「旦那様、食事の用意ができました」
「おいしい内にいただかないと!」
「あんたは常に飯が優先なのな」
「ゴチになりまーす!」
◇
「……で、最後リモネスさんっていう聖火教徒が一人で来てさ。他人の考えてることがちょっとわかるっていう固有能力持ち」
「聞いたことあるな。賢者リモネスか。皇帝の相談役とも知恵袋とも言われてる?」
「うん、陛下と茶飲み話をする立場にあるって言ってたよ」
お腹一杯になった後、帝国での話を披露していた。
「で、ドーラが円満に独立したってリモネスのおっちゃんに聞いてさ、帰ってきたの」
「ハハハ、あんたから預かった魔宝玉な。『聖地母神珠』って名前つけて帝国に献上したぜ。円満かつ即座にドーラが独立できたことに関して、あれがかなり貢献したことに疑いはねえ」
「あの石も働けたと思うと気分がいいね。でも名前は『美少女地母神珠』の方がよくない?」
「あんたもそう思うか? パラキアスも同じこと言ってたんだが、語呂がなあ」
「パラキアスさんのセンス侮れないねえ。でも語呂も重要だからなー」
お付きの女性達笑ってるけど。
「で、数々のマジックアイテムを手に入れた経緯は?」
「今取りかかってる石板クエストが『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』ってやつなんだ」
「ザクザク宝箱? 何だそりゃ?」
かくかくしかじか。
「ほう? ハズレ引かねえ限り、お宝もらい放題ってことか?」
「当たり引かない限りお宝もらい放題だね」
えっちな目はやめろ。
「……あんたの当たりハズレの感覚はともかく、異常なクエストだな」
「異常かそうでないかはどうでもいいなー。すごく楽しくて、あたしにとって万々歳ってことが重要だよ」
魔宝玉クエストが終わってから寂しい思いもした。
まさか今になってこんなに楽しめるクエストに出会うことになるとは。
「お宝が楽しみなのか、このクエストが破綻した時が楽しみなのか、どっちだ?」
無限に宝箱が増え続けることはあり得ない。
どこかでパンクするはずだが、その時に何が起きるのか?
「両方楽しみなんだけどさ。宝箱の部屋に海の王国からもらった銅鑼をぶら下げてあるんだよ。ガンガン鳴らすのも楽しいんだ。すげえいい音するの」
「あんたは楽しみを見つける天才だな!」
アハハと笑い合う。
「……相当危険な臭いがするクエストではあるが、精霊使いには聖者に説法だな。どうせ限界までかっぱぐつもりなんだろ?」
「もちろんだよ。他に選択肢がないじゃん」
「ハハッ、まあいい。どれ、アイテム見てやろう」
「お願いしまーす」
イシュトバーンさんがえっちじゃない目でアイテムを見定めてゆく。
「この籠手は攻撃力・防御力・魔法防御・命中率が上がるな。射手にいいんじゃねえか? こいつは炎の魔法剣。かなりの攻撃力だな。横笛は面白いぜ? 吹き方で全体回復や混乱付与攻撃など多彩な使用法ができる。かなり使いづらいが、『バード』の能力持ちなら使いこなせるはずだ」
へー、皆すごい効果があるじゃん。
「指輪は魔法力を跳ね上げ、激昂無効の効果がある。おい、あんた聞いてるフリしてるけど覚えてるか?」
「覚えられないけど、クララが聞いてるから大丈夫」
「あんたも大変な主人を持って大変だな」
「大変を重ねるなよー」
クララがアワアワしとるわ。
イシュトバーンさんが続ける。
「メリケンサックは攻撃力と会心率を上げる他、低確率で即死を付与する。短杖は魔法力と雷属性魔法の効果をかなり上げる。オルゴールは面白いな。『精霊石』の効果で魔力を集め続ける。スイッチ入れたら結構デカい音がずっと鳴り続けるぜ」
「ありがとう、イシュトバーンさん」
「おう。でもこれ、あんたらのパーティーには必要のないものばかりだろう? どうするんだ?」
「こういうものは使ってもらった方がいいねえ。いずれ誰かにプレゼントかな」
「ハハッ、気前がいいな」
炎の魔法剣はソル君がいいし、横笛はシバさんかな。
ただしマジックアイテムは位置を探知されそうな気もする。
主催者が何考えてるか、今の段階ではわからん。
宝箱クエストが終わってからじゃないとあげるのは気味悪いが。




