第610話:宝箱の謎
フイィィーンシュパパパッ。
コルム兄を塔の村に送り届けてから、ザクザク宝箱のクエストに来た。
ザクザク宝箱とゆー響きの何と素晴らしいこと。
「昨日は何か嫌な目に遭った気がするけど、やっぱり宝箱はいいねえ」
「姐御、魔法の葉ゴッソリは堪えやしたかい?」
「してやられた感が半端ないね。こっちから反撃できないところがなおさらだよ」
アハハと笑い合う。
だけど魔法の葉ゴッソリはマジでビックリしたぞ?
見た目のインパクトが嫌過ぎる。
売却して結構な収入になったけど、もう勘弁願いたい。
今日は三つずつ前後二列になっていて、計六個の宝箱が配置されている。
一個当たりがあるから五個は開けていい勘定だ。
いいね、『ザクザク宝箱』という語感に近付いてきた。
「ボス、トゥデイはどれがヒットね?」
「ちょっと待ってて。心を鎮めてからにする」
吊るした銅鑼の前に立つ。
心頭滅却すれば御飯はよりおいしい。
「よーし、いくぞお!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
いやーいい音だ。
この部屋で鳴らすのでも十分満足できるわ。
「あっ、ユー様大変です!」
立札を読んでいたクララが声を上げる。
「裏の注意事項の字句に変化があります」
「裏? どう変わったの?」
注:お宝が入っている宝箱に罠はありません。
注二:銅鑼を鳴らさないでください。
「何だとお? どういうこった?」
「アハハ、遅かった。もう鳴らしちゃったわ」
アトムはいきり立つけど、銅鑼を鳴らす前にクララが立札の文言の変化に気付いてなかったとは思えない。
つまりクララは鳴らしたって構わないだろと判断したとゆーことだ。
「何か罰則について書いてある? あるいは鳴らさなかった時、こっちに得があるとか」
「ない、ですね」
「じゃあいいよ。ガンガンいっちゃいな」
「いいんですかい?」
「ペナルティがあるかもしれないね?」
アトムダンテが遠慮がちに聞いてきたが。
「そりゃ構わないよ。一方的に銅鑼を鳴らすなじゃ聞けないね。理由が納得できるものだったり、あたし達に譲歩してくれるもんだったりしたら考慮するけど」
「えーと、ユー様。考慮するだけで、結局聞かないんですよね?」
「さすがクララ。よくわかってるね」
「えへへー」
主催者のあたし達に対する懇願に過ぎまい。
あるいは努力目標か。
「このクエストの主催者が報復措置として宝箱を出さなくなったらどうしやす?」
「何らかの目的があって宝箱を並べてるんでしょ? 宝箱がなくなったらあたし達は来ないよ。それで主催者は目的を果たせるのかな?」
「ミー達はクエストクリアできるね?」
「何らかの決着がつけばクエスト完了にはなると思うよ。例えばこの部屋ごと『デトネートストライク』で吹き飛ばすとか」
ん? うちの子達のものじゃない、何かの反応を感じたな。
すぐ気配を隠したようだが。
「じゃ、ミーも鳴らすね」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「あっしもいきやすぜ!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「では、私も!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
あースッキリした。
銅鑼を鳴らすななんて書いてあったけど、結局何も起きないじゃないか。
「さて宝箱を開けよう。向かって前列右は当たりだから注意ね」
「「「了解!」」」
おー楽しそうだね。
三人が蓋を開ける。
「指に嵌める、拳士用の武器でやす!」
「何でしょう? 小箱? あっ、オルゴールです!」
「ショートスタッフね!」
どうやら全てが魔法のアイテムみたいだな。
今日はそーゆー出目の日か?
「よーし、あたしも開けるぞー」
「姐御、残り二つ開けちゃってくだせえ」
「わかった!」
何が入ってるかわからない宝箱を開けるとゆーのは、実に楽しいものだ。
毎日がプレゼントデーだよ。
重い蓋を持ち上げる。
じゃじゃーん。
「何かの石っぽい素材。あっ、『精霊石』だ!」
『ファントマイト』ともいう、周辺から魔力を集めるという性質を持つレア素材だ。
以前ダンのクエストにお供した時手に入れたことがある。
注:やたらと重い。
「ボス、ワンモアね」
「オーケー、開けるよ!」
二個目の宝箱の蓋を開け、中にあったのは……。
「あれ、これ凄草だね?」
「そうでやすね」
意外っちゃ意外なものだった。
まあ昨日は魔法の葉がわんさか入ってたし、凄草が入ってることだってあるか。
葉を一枚ちぎって口にする。
「……甘い」
変だな?
すぐ魔力が抜けてヘタるはずの凄草が、えらく新鮮じゃないか。
「どうして甘いんだろ? あたし達の行動を把握してて、直前に宝箱設置してるとか?」
「ユー様、監視されてるような気配ありましたか?」
「なかったなあ。じゃあどーゆーことだろ?」
あたし見られてる気配ならわかるしな?
そもそも必ず毎日宝箱開けに来るとは限らないし。
いや、あたしの性格的に一日一回のチャンスを逃すわけはないけれども。
「……トレジャーボックスにシークレットが?」
「あり得るね」
この箱に入っていれば凄草の鮮度が保たれるのではないか。
とゆーか入れてると中のものが劣化しにくい箱なのかもしれない。
特に魔道の仕掛けはないみたいだが、ならば材質か作りの問題かな?
いい箱だとは思ってたけど、思ってもみなかった謎性能があるとは。
「家帰ったら調べる必要があるね」
「そうですねえ」
「よし、お宝と空箱集めて撤収」
「「「了解!」」」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「なかなかの株だぜ。明後日の株分け日には十分間に合う」
「やたっ! ありがとうカカシ!」
あたし達は毎朝一株ずつ凄草を食べているし、生産体制も確立している。
が、ポロックさんの娘さんのクエストみたいな、イレギュラーに凄草が必要になるケースも今後ないとは言えない。
ムダになるものじゃなし、予備を確保しておけるのは嬉しい。
「んーでもカカシが面倒みられる限界はあるでしょ? 凄草の栽培は難しいし」
「まあな。今の倍は厳しいかな。魔力も足りなくなりそうだぜ」
「あ、魔力の問題もあるんだったな」
やはり今くらいがいいな。
他の植物も試験栽培したくなるだろうし。
「じゃ、行ってくるね」
「今日ユーちゃん忙しいな?」
「いや、あっちこっち行ってるけど、大したことはしてないの」
「休むことも大事だぜ?」
「ありがとう」
まー、御飯食べに行くだけだけれども。




