第61話:フレンド登録
「劇場型売買かよ!」
ツンツンした銀髪とふてぶてしい表情が特徴の男、情報屋のダンだ。
先ほどあたしがペペさんから『実りある経験』のスキルスクロールを買ったやり取りを見ていて御満悦だ。
あんな面白れえもんを独占特等席で見物できるとは。
話のネタを提供してくれた礼だと、ミントティーを奢ってくれた。
ダンはこういうとこマメだな。
ごちそーさまです。
「あんたの買い物はいつもあんな感じなのか?」
「違うわ。ペペさんが決断力を試すの何の、煽ってきたからだわ」
アハハと笑い合う。
まあでも楽しかった。
経験値倍増スキル『実りある経験』はすげえ使えるので、次もまたペペさんのオリジナルスキルは楽しみにしていよう。
「ダンは今、何やってんの? 暇なの?」
「おっと、デートに誘ってくれるのかい? 申し訳ないが、そろそろ美少女二人と待ち合わせの時間なんだ」
ああ、今日もマウ爺アンセリと訓練か。
ダンは前衛みたいだけど、実力はどの程度なのかな?
「どうだった? マウさんの指導は」
「お見通しかよ。やはりマウ爺は長いこと冒険者やってるだけのことはあるな。一々細かいんだが理にかなってるし、何より堅実だぜ」
へー、興味あるな。
あたしも冒険者の基本を知っときたいわ。
あ、マウ爺とアンセリがやって来た。
「ダンよ。早いな、待たせたか」
「いや、精霊使いがいたんでね、退屈しのぎにはなった」
「マウさん、アン、セリカ、こんにちはー」
マウ爺が頷く。
「こんにちは。ユーラシアさんは、今日は何しに?」
「いや、アイテム売りに来たんだけどね。どーゆーわけかスキル買わされちゃった。謎も極まる」
セリカが目を『?』にしながら聞いてくる。
「どういうことです? ちょっと意味がわかりませんが」
「いや、傑作だったんだぜ……」
あたしのスキル屋でのやり取りを、ダンが皆に面白おかしく語って聞かせた。
さすがに情報屋だなあ。
話がうまい。
「ダンが話すと二割方面白さがアップする気がする」
「だろ?」
「癪だなあ」
「何でだよ」
手柄を持っていかれた気がするんだよ。
「ほう、あのペペを相手に駆け引きか。心臓じゃのう」
マウ爺が顎を撫でながら感心している。
アンセリの二人なんか目を白黒させているが、大したことじゃないってばよ。
「そーだ。ソル君ね、あと四、五日で今のクエスト終わるってよ」
アンセリが食いついてくる。
「「会ったの?」」
「いや、チュートリアルルームの係員に聞いたの」
チュートリアルルーム? って顔してる。
アンセリは『アトラスの冒険者』じゃないから知らなかったか。
あっ、ダンも?
マウ爺が皆に説明する。
「チュートリアルルームというのはな、『アトラスの冒険者』に選ばれた者が最初に行き、説明を受ける場所じゃ。しかし嬢は何しにチュートリアルルームへ行ったのじゃ? もう用はないじゃろう?」
「係員と仲が良くて、報告したり一緒に御飯食べたりしてるの。スキルハッカーの子も、チュートリアルルームでクエストの進捗状況を話したりしてるんだよ」
マウ爺が笑う。
「ふぉっふぉっ、嬢は面白いの」
ダンが立ち上がる。
「さあ、そろそろ訓練行こうぜ爺さん!」
「うむ、行くか」
「あたしもマウさんに勉強させてもらいたいな。どうにかなんない?」
「む? そうか、他のパーティーと連携することもあるしの。多人数でチームを組むことも経験の内じゃ。今から嬢も一緒に行くか」
「転移の玉は四人まででしょ? どうすればいいかな?」
「受付で説明を聞かなんだか? ギルカを出すがいい」
ギルドカード?
いや、ポロックさんが他の冒険者との連携にも使えるって言ってたな。
でもやり方を知らない。
「ギルカを起動して、メニューからフレンド申請の欄にするじゃろ? で、画面の真ん中にフレンド希望者を触らせる。ほれ、触るがいい。同様に嬢の画面にもワシがタッチすると、これでフレンド登録成立じゃ。近くにいる連携状態のフレンドとは、転移の玉で同時に飛べるぞ。今度はメニューから現有フレンドの欄にするとワシの名前があるじゃろ? そこをタッチせい。ワシのカードも同様にすると、互いの名前が点滅する。これが連携状態になった印じゃ。さあ、飛ぶぞ」
へー、ギルカが転移の玉と連動しているのか。
えらく便利じゃないか。
マウ爺が転移の玉を起動すると、あたしの転移の玉も同時に起動した。
不要なアイテム売り損なっちゃったけど、今度でいいや。
◇
「ここがワシのホームじゃ」
こざっぱりとした小さな小屋がある。
これがマウ爺の家か。
「なるほど、ギルカにはこういう使い方があったのか。知らなかったよ」
「メニューからマニュアルに合わせると説明を見られるぞ。もっとも連携は、知っていてもやったことのない冒険者が多いかもしれぬ」
「マウさんの名前ってマウルスって言うんだねえ。これも知らなかった。勝手に略しててごめんなさーい」
ギルカの現有フレンド一覧に『マウルス』ってあって冷や汗かいたわ。
こらダン、たった四文字の名前を略すなよ。
ソールをソルって略してるあたしは棚に上げるけど、人生と冒険者の大先輩に対して失礼だろ。
「細かいことは気にするな。マウ、で通ってるでな」
「そうだぜ」
……あれ、考えてみればダンもあたしより年上か?
何を略してダンなのかすら知らないわ。
転送魔法陣がたくさん並んでる裏庭に案内される。
四〇くらいあるな。
これ見ただけでベテラン冒険者の戦歴がわかろうというもの。
でもこんなにいろんなところに行けたらワクワクするなあ。
あたしも将来が楽しみだ。
「さて、今日はメンバーが多いから、少し推奨レベル高めのところへ行くか。レベル一〇相当のエリアでどうじゃ? 嬢、問題はないか?」
「大丈夫だよ」
「爺さん、獲得したアイテムの配分はどうすんだ?」
「む? 等分でよいじゃろ」
「あ、珍しい素材があったら譲って欲しいんだけど。お金は払うから」
マウ爺はすぐ理解したようだ。
「なるほど、パワーカード製作は素材食いじゃからな。ならば素材は嬢ら、その他アイテムはワシらという分け方でどうじゃ? お主らもそれでよいか?」
後ろのダン、アン、セリカが頷く。
あたしらももちろん異存はない。
「まあ、分けるのが簡単だわな」
「恨みっこなしじゃぞ? では行こう」
全員で転送魔法陣に立つ。




