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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第609話:怠けもんは捨てたい

「今日レイノス観光がダメというのは、こういうことだったんですねえ」


 クララの飛行魔法でカトマスのマルーさん家まで戻ってきた。

 ニルエがため息吐いてるけど。


「ごめんよ。新聞使って行政府の求心力が増してるぞーって、市民にアナウンスすることも重要なんだよね」

「いえいえ、理由はよくわかりました。大勢の人に取り巻かれて何事かと思いました」

「いずれレイノスを案内するからね」

「新聞記者達を放り出してきちゃったけど、いいのかい?」


 案外マルーさん、気にしいだな。


「いいんだよ。あたしら政権運営のことなんかわかんないじゃん。余計なこと記事にされて焦点がブレるより、あの二人が語った方が新政府のためになる」

「そうかね? まあアンタが言うなら」


 明日発行の新聞のメイン記事は、新政府に有力者の支持が集まっているというものであるべきなのだ。

 マルーさんの強欲具合がどうとかあたしが精霊連れてレイノス飛び回ったとか、くだらんこと掘り下げられたって何の益もないわ。

 新政府にとってもマルーさんやあたしにとっても迷惑極まりない。

 あたしは時間使ってメリットにならないことするなんて大嫌い。


 ニルエが聞いてくる。


「ユーラシアさん達はこれからどうするんですか?」

「やることがあるから帰るよ」

「おや、クエストかい?」

「クエストもあるね。今請けてる石板クエストが、宝箱取り放題っていうイカしたやつなんだ」

「イカれたクエストだねい」


 イカしてるかイカれてるかは見解の相違だけれども。

 マルーさんはこの手のクエストは好きかと思ったんだけどな?


「宝箱取り放題なんてことがあるんですか? 楽しそうですね」

「ニルエはピュアだなー」

「えっ?」

「リターン分のリスクを負っているクエストということさね。多分、この子でなければ請けられないんだよ」

「そのままのニルエでいて欲しいわ」


 あっ、赤くなった。

 ニルエ可愛いよニルエ。


「新入りの二人は放っておくのかい?」

「ヨブノブか。気にはなるけど、急ぎじゃないからいいや。実はもっと新しい新人にチュートリアルルーム行きの魔法陣が出ててさ。先輩がお手伝いする制度が始まってるから、様子見に行かないといけないんだよね」

「アンタは世話好きだねい」


 気になることを放っておくとずーっと気になって損だからね。

 早めに納得したいだけなんだよ。


「ところでニルエはヨブノブのこと何か聞いてない?」


 ちょっと眉を顰めるニルエ。


「弟のノブさんはよく見かけます。村に立ち寄る冒険者や商人の話を盛んに聞いているようです。ヨブさんは……自宅の警備に尽力しているそうで」

「何だよもー! またニートかよ!」


 ヨブ君に『アトラスの冒険者』の魅力とメリットを放り出すほどの思い切りがあるとは思えない。

 だから放っといてもいずれ戻ってくるだろうけど、怠け癖はなー。

 大体このままズルズルヨブ君が『アトラスの冒険者』を続けていって、運営側にいいことあるか?

 働かないやつはほんと困る。

 ノブ君とチェンジしたい。


「どうするんだい?」

「怠けもんは捨てたいけど、一度手かけたのに脱落されるのも癪だなー。才能があるのも確かだし……」


 でも直球でメリット説いてもダメってことだから、搦め手からか。

 直球のメリット以上に効果的な手段ってある?


「……作戦考えなきゃいけないな」

「そうかいそうかい、またおいでよ」

「うん、またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー」

「おや、またアンタかい?」


 チュートリアルルームを覗いてから、再びアルアさん家に来た。

 まだ新人さんは来てないそうだ。

 躊躇したくなる気持ちはわからんでもないから、十分悩むといいよ。


「お肉お土産に持ってきたよ」

「おや、すまないね」

「エルマにもあげるから、お家で食べてね」

「ありがとうございます!」

「さーて、コルム兄連れて帰るかな」

「昼寝しているよ」

「え?」


 何ぞ?

 エルマが気遣ってくれる。


「相当疲れが溜まっているんじゃないでしょうか? 一人でのお仕事は大変なんだと思います」

「うーん、向こうも助手が欲しいね。あたしも声はかけてるんだけど」

「コルムは一人でコツコツやるのが好きだからね。弟子を取るタイプじゃないだろう」


 わかっちゃいるけど、負担が大きいよなあ。


「塔の村のパワーカード屋の経営はどうなんだい?」

「どーだろ? 一時期は忙しかったけど、最近はそうでもないよ。でも経営が苦しいみたいなことは、コルム兄の口から一度も聞いたことない」


 一人で食べていく分には全然困らないんじゃないかな。

 そして『クールプレート』と『ウォームプレート』の輸出が始まれば、工房は大儲けのはず。


「エルマ、『クールプレート』と『ウォームプレート』の製法はどうだった? 覚えられた?」

「はい、わたしには少し難しいですけれども、コルムさんは問題なく。ここへ帰ってきてもう一度教わりました」

「盲点というか、変わった視点のカードだね」

「慣れちゃえば量産利くかなあ? 帝国への輸出品にしたいんだよ」


 アルアさんが笑う。


「かかかっ。理屈はともかく、技術的に難しいことはないね。作るだけなら経験の浅い者でも平気だよ。少々見慣れない手法があるから、エルマも戸惑ってるだけさ」

「コルム兄も『遊歩』の習得は問題なく?」

「ああ、コルムが知らなかったのは『ソロフライ』についてだけだからね。特に難しいことはないんだよ」

「『遊歩』はメッチャ反響が大きいんだよ。皆が欲しがるの。昨日パラキアスさんに一枚譲ったら、ドーラ中飛び回ってる」

「役に立っているのは嬉しいね」


 塔の村や聖火教の本部礼拝堂にも行ったみたいだしな。

 レベル二〇はないと使えないっていう制限なかったら、マジで皆が買うと思う。


「……ん」

「あ、起きた?」

「……寝てしまっていたか。すまないな」

「永遠に眠っててもいいんだよ」

「また死亡認定ネタか? 本当にやめてくれ。コケシの悪夢がよみがえる!」


 アルアさんとエルマが意味わかんな過ぎて首傾いてるだろうが。

 あれ、首の角度が同じだな。

 師弟の絆が垣間見えるよ。


「御親切なことにあたしが直々に送ってくぞー」

「ああ。師匠、失礼します。エルマ、さよなら。ゼンさんにもよろしく」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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