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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第606話:君は……味方だね

 フイィィーンシュパパパッ。

 エルマを連れて塔の村に来た。


「わあ、とても大きな塔ですねえ」

「エルマは塔の村初めてだったか。塔のダンジョンは素材やアイテムを採取したり魔物を狩ったりしても減らない、『永久鉱山』なんだ」

「素材や魔物が減らない……変わった場所です?」

「世界には大きな魔力の循環ってものがあってさ。魔境とは違った理屈で魔力濃度が高くなるせいだそーな」


 詳しいことは知らんけど。


「ここの冒険者は、あの塔で採取した素材やアイテムを売買して生計を立てているんだよ」

「なるほどの仕組みですねえ」

「おーい、じっちゃーん!」


 デス爺の輝く頭部を発見したので駆け寄る。


「何じゃ騒々しい」

「元カラーズ灰の民の族長で、この村の村長デス爺だよ。彼女は緑の民エルマ。あたしの後輩の『アトラスの冒険者』で、アルアさんの弟子」

「アルアの? パワーカード職人なのか?」

「はい、初めまして」


 エルマがちょこんと頭を下げる。


「職人がそのレベル? ……お主、何かしたであろう?」

「付き合わせてたらレベル上がっちゃったんだよ。ちょっと頑張れば今日にでも最年少ドラゴンスレイヤーになれるけど、エルマはあんまり興味ないみたい」


 ドラゴンスレイヤーは歴戦の強者の行き着く称号みたいなイメージがある。

 けどエルマの場合は、レベルと才能と豊富なスキルで押し潰せそうだなって感じ。

 もっとも戦闘センスがあるわけじゃないから、ややこしいクエスト振られても困る。

 やっぱパワーカード職人が合ってるわ。

 でも世の中にはペペさんみたいな、ぶっ飛んだドラゴンスレイヤーもいるしな?


「ドーラ行政府の話ね。オルムスさん、皆から税金取るの諦めたよ。レイノスを今まで通り統治して貿易を拡大して収入を増やし、移民に助力する方向に切り替えた。だからじっちゃんも協力してよ」

「聞いた。昨日、パラキアス殿がここへ飛んできての。お主の働きが大きかったと

言っておったわ」

「えへへー」

「もちろんワシは新政府を支持しよう」

「よーし、じっちゃんもとりあえず問題ないな。実力者の支持が集められないと統治基盤が弱くなっちゃうからさあ」

「お主はパラキアス殿と似たようなことを言うの。しかし彼は飛行魔法を使えんはずじゃったが」

「あ、あたしが飛べるパワーカード売ったの。エルマ、ちょっと飛んで見せてくれる?」

「はい」


 エルマがフワッと飛び上がる。


「これは?」

「ペペさんが開発した一人用の飛行魔法を組み込んだパワーカードだよ。マジックポイント自動回復との合わせ技で、実質ノーコストで空飛べるってやつ。レベル二〇はないと使えないけど」

「ほう、便利だの」


 デス爺も興味があるらしい。

 デス爺には転移術があるから、必要性は低そうではある。

 でも手軽で便利だからな?


「『遊歩』って言うんだ。アルアさんに作ってもらったの。コルム兄にも製作法を習得してもらうつもりでいるから、こっちでも手に入るようになるよ」

「ふむ、楽しみじゃな」

「コルム兄借りてくね。エルフの方で独自発展してるパワーカードがあってさ。こんなのなんだけど」


 『クールプレート』と『ウォームプレート』を見せる。


「夏身体を冷やしたり、冬に温めたりするカードということか」

「うん。帝国への輸出品にどうかと思ってるんだ」

「良いかもしれぬな」


 デス爺にも高評価のようだ。

 パワーカードこそドーラの特産だから。

 帝国本土はドーラに比べて冷涼なので、特に『ウォームプレート』の方は売れるんじゃないかな?


「パワーカードの職人が足んなくなりそうだからさ、こっちで冒険者落ちこぼれたけど真面目で手先器用な人いたら、コルム兄の弟子にしてよ」

「コルムが弟子を取るかは問題じゃがな」

「コルム兄の意向はどうでもいいから」


 一人でコツコツやるのが好きな人なので、弟子は欲しがらないかもしれない。

 けど技術を継承させてくれないと皆が迷惑だわ。

 何より職人の数が欲しい。

 今後ドーラの人口が増えると、冒険者の数だって増えるぞ?

 当然パワーカードの需要だって大きくなるわ。

 だってあたしがメッチャ宣伝するもん。


「じゃねー、じっちゃん」

「失礼します!」

「うむ、今後も何かあったら早めに知らせよ」


 路地裏のパワーカード屋へ。


「こんにちはー」


 あ、エルのパーティーもいる。


「ユーラシアじゃないか。……その子は?」

「エルマ。あたしの後輩の『アトラスの冒険者』で、パワーカード職人でもあるんだ。こっちのゴーグルガールがエル。あたしじゃない方の精霊使いね。と、三人の精霊はコケシ、チャグ、ちょんまげだよ」

「ニポポだってばよ!」


 覚えられないってばよ。


「店主がパワーカード職人のコルム兄。あたしの従兄で、ゼンさんの前にアルアさんの助手やってたの」

「よろしくね」

「皆様、よろしくお願いいたします」


 エルマの全身を満遍なく眺めていたエルが一言。


「君は……味方だね」

「はい?」

「???」


 事情のわかってないエルマとコルム兄以外は、またナイチチ病が始まったぞーって顔をしてる。

 サディスティックコケシなんかこっちをチラチラ見てくるけど、今日は面白……もといくだらない掛け合いやってる時間ないぞ?


「エルマ、エルをぎゅーしてあげなさい」

「え? は、はい。ぎゅー」

「ああ、君はいい子! 君は天使!」


 悪魔ぬよ? っていうヴィルのセリフを思い出した。


「……何かいいものを見せてもらったけれども?」

「コルム兄の目の保養はどうでもいいんだ。コルム兄、ちょっと一日付き合ってよ」

「デートのお誘いかい?」

「大体そんなとこ。エルフが独自発達したパワーカードの作り方を教えてもらえることになったんだ。ついて来てよ。コルム兄にも覚えて欲しいの」

「ほう、エルフの里へ行くのか? 今からか?」

「うん」


 研究者っぽい目になったね?

 ゼンさんは職人っぽいけど、コルム兄やエルマは研究者っぽいところがあるんだよな。

 新しい発想でパワーカードを進化させてもらいたいもんだ。


「わかった、今日は休業だな。エル、皆に伝えておいてくれよ」

「いつまでぎゅーしてるんだよもー」


 エルはよっぽどエルマのぺたんこを気に入ったらしい。

 あれ? これはこれでコケシも満足みたいですね?

 コケシの嗜好もわからんな?

 フレンドで転移の玉を起動し、ホームへ飛ぶ。

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