第60話:あたし達に相応しいスキルを購入した
「ポロックさん、こんにちはー」
アルアさんのパワーカード工房からギルドに転移してきた。
角帽がトレードマークのギルド総合受付に挨拶する。
「やあ、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
ポロックさんは正直者で本当のことしか言わない。
あたしのことをいつもチャーミングと言ってくれる。
気分がいいなあ。
と、そのポロックさんが思いついたように続ける。
「ペペさんがユーラシアさんのことを探してたよ」
「ペペさん? オリジナルスキル屋の?」
「そうそう」
「んー? 何の用だろうな?」
「ペペさんから魔法を買ったんだろう? そのことについてじゃないかな」
先日ペペさんから購入したのは、世界最大の魔法という触れ込みの『デトネートストライク』。
まー欠点の多いひどい魔法だが、買ったことに関して後悔はしていない。
とんでもない威力であることに間違いなかったし、ペペさんという強烈な個性の人と知り合いになれたから。
「ありがとう、ペペさんとこ行ってみるね」
ギルド内部へ。
オリジナルスキル屋のペペさんに思いを馳せる。
情報屋早耳のダンによると、魔法の試し撃ちだけでドラゴンを吹っ飛ばしまくってレベルカンストしたという伝説持ちだ。
この前買ったすごいネタ魔法は、今後活躍する機会はないかもしれないけど。
でもペペさんがあたしに何の用だろうな?
普通魔法を売ったからって、あとのことなんか気にする?
アフターサービスでもしてくれるんだろうか?
スキル屋のカウンターまで足を運ぶ。
「たのもう!」
「ふあっ?」
飛び起きる見た目幼女の魔道士。
この前と同じだな、このやり取り。
だってまた寝てるから。
とゆーかペペさんって寝てるのがデフォルトの人なのかな?
じゃあスキルなんか売れるわけないわ。
「あっ、ユーラシアちゃん! いらっしゃい、待ってたの」
「美少女精霊使いを探していると聞いたよ。何かあったの?」
「用の前に、『デトネートストライク』はどうだったかしら?」
「死にかけた」
海で試し撃ちして津波に追いかけられたことを話した。
困ったような顔をしてたが、魚が大量に採れた行までくるとポンと手を打った。
間違っても、その手があったかなんて思うなよ?
「海の一族とケンカになるかもしれないから、次から海で撃っちゃダメだって言われた」
「ああ、そうか。そうよね……」
心底残念そうだな、おい。
マジでやっちゃダメだぞ?
「で、あたしに何か用があったかな?」
「ええ、新しいスキルできたから買ってくれる?」
「もうできたの?」
この前『デトネートストライク』買ってから一週間も経ってないじゃん。
やっぱこの人天才なんだろうなー。
この前のネタ魔法だって、効果の説明に大げさなところ全然なかったもんな。
だからこそ持て余すわけだが。
「どんなの?」
「『実りある経験』っていうバトルスキルなの。戦闘中に使うと、その戦闘でのパーティ全員の獲得経験値が倍になります!」
「倍? メッチャすごいね」
戦闘を有利に運べるわけじゃないが、こまめに使用すればレベルアップがかなり早くなりそうな。
使いようによっては……いや、待てよ?
今明確な役のないダンテに習得させるとする。
ダンテが『実りある経験』で獲得経験値倍増。
アトムが盾役で相手攻撃を引きつける。
クララが『癒し穂』付属の『些細な癒し』でノーコスト全体回復。
最後にあたしの『雑魚は往ね』で魔物を一掃する。
完璧じゃね?
ペペさんが得意げだ。
「お値段は三〇〇〇ゴールドでーす。どう? どう?」
「まあ、お金はあるけど……」
あたしは素直に疑問を口にする。
「この前も思ったけど、オリジナルスキルにしては安過ぎるんじゃないの? この前のやつでも、誰にでも売れる魔法じゃなかったし」
ペペさんは手をパタパタさせて言う。
「いいのよ、スキル屋は趣味だから」
「どゆこと?」
何とスキルを売って生計を立ててるわけじゃなく、素材や薬草を採って売るのがメインなんだそうな。
あれ、極めて普通だな?
ペペさんは研究者であって、冒険者じゃないって聞いてたけど。
「生活が楽なわけじゃないけど、たまに『逆鱗』とか拾ったりするといいお金になるし」
ドラゴンの顎の下に生えてる鱗でレア素材です、売ったら二〇〇〇ゴールドにはなりますとクララがこそっと言う。
へー、ドラゴンぶっ倒すのはマジなんだな。
……『逆鱗』を消滅させずにドラゴンを倒すことが難しいから、たまにしか拾えないんだろう。
やっぱヤベー人だ。
「だからスキルは私の気に入った人にしか売らないのでーす!」
鼻をピクピクさせてるのがちょっと気に障るなあ。
いつの間にか後ろでダンが見てるし。
見物料を払え。
「既に私のスキルを買う権利を獲得しているユーラシアちゃんの、決断力をテストしまーす! アートでロマンでドリームなスキル『実りある経験』一名様分三〇〇〇ゴールド、これは誰でも覚えられます。買うチャンスは今だけ! 買うのであれば、五秒以内に誰が覚えるのか決めてください! カウント行きま……」
「四〇〇〇ゴールドで買う。覚えるのはオレンジ髪の子ダンテ」
「……え? 四〇〇〇ゴールド?」
ペペさんが間の抜けたような声を出す。
「ただし、『逆鱗』を一個おまけにつけて」
「……へ?」
「それでは今から美少女精霊使いユーラシアが、売り手ペペさんの決断力をテストしまーす! 売るチャンスは今だけ! 売るのであれば、五秒以内に決めてください! カウント行きまーす、五・四・三……」
「わーっ、わかった! 売る売る!」
もったいつけずに売ればいいのに。
四〇〇〇ゴールドを支払う。
「ごめんね、今、『逆鱗』の手持ちがないから今度でいい?」
「もちろん。レア素材がすぐにホイホイ出てくるとは思ってないから」
ペペさんがホッとしている。
「ええと、じゃあこの前と同じ子ね。これどうぞ」
スキルスクロールをダンテが受け取って開く。
魔力が高まってダンテに宿り、『実りある経験』を覚えた。
「ユーラシアちゃんとの商売は、とってもドキドキするわあ。生きてるって感じがするの。また今度も買ってね?」
「あたし達に相応しいスキルならね」
「うん、頑張る」
とっても使いでのあるスキルを手に入れた。
レア素材『逆鱗』も楽しみだな。
どんなパワーカードが交換対象になるのかなあ?
『実りある経験』は地味に働きます。




