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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第598話:余裕のないオルムスさん

 話をしながらレイノスの街を行く。


「あんたが開墾で金を落とすと、カラーズの景気が良くなるんじゃねえか?」

「なるといいねえ。カラーズ~レイノス間の交易が盛んになってくれるといいな」


 カラーズの諸村は古くから魔物の排除に成功し、安定して発展してきた歴史があるだけに、各村がいろんな技術を持っているのだ。

 得意な技術を生かして儲けて欲しい。


「あんたまだ面白えこと隠してるだろ?」

「ネタはなくもないけど、ちょっとは遠慮しなよ。今日はまず新政府の面々を納得させなきゃいけないんだから」


 ザクザク宝箱のクエストは相当面白いと思う。

 あ、イシュトバーンさんにはアレについて了解取っとくか。


「イシュトバーンさん好みの売れそうな企画があるんだよ」

「どんなやつだ?」

「イシュトバーンさんにいい女の絵を何枚か描いてもらうでしょ? まとめて画集にして、五〇ゴールドくらいで売る」

「ほう? 五〇ゴールド」


 だからそのえっちな目で見るな。

 まあ何言いだすかわかってるけど。


「あんたのことだから、オレが何を言いたいかわかるだろう?」

「もちろんだよ。イシュトバーンさんの取り分は売り上げの一割でどう?」

「取り分の話じゃねえよ! いい女はあんたが紹介してくれるんだろうな?」


 まあそう言うだろうとは思ってたけど、一旦スカすのはお約束だから。

 またいい女かって、お付きの女性達がジト目で見てるぞ?


「モデル候補何人かに当たってみたんだけどさあ。誰も断らないんだよね。皆結構乗り気なの」

「例えばどんなのが候補なんだ? ババアはいらねえぞ?」

「わかっているとゆーのに。あたしが買い手の需要を外すわけないでしょうが。イシュトバーンさんと面識があるのは……輸送隊副隊長のお団子ちゃんとか」

「おお、あのクラスからオーケー出てるのか! やるじゃねえか精霊使い!」


 わかってたけどノリノリだなー。

 もうオーケー出たようなもんじゃん。

 ありがとうございます。


「あれはどうだ、冒険者ギルドのおっぱいさんとかいう」

「まだ聞いてない。でもおっぱいさんに断られたら、最高の画集じゃなくなっちゃうなー。ごめんね、企画自体がボツだわ」

「それほどのいい女かよ! 楽しみで仕方ねえな! 絶対に何とかしろよ!」


 思った以上にイシュトバーンさんが前のめりでござる。

 じゃあおっぱいさんを説得できれば、成功が約束されたよーなもんじゃん。

 万が一にも辞退されないよう、慎重に取りかからねば。


「帝国でモテモテのリリー皇女がドーラに来てるのは知ってるっけ? リリーにも声かけてさ、帝国に輸出したいんだよねえ」

「あんたの計画は規模が大きいな!」


 大きいんだよ。

 とゆーか輸出品を多くしないとどーもならんという、ドーラの事情もあるしな。


「イシュトバーンさんにも異存ないみたいだから、話進めてみるよ。最後は結局緑の民の紙と印刷次第なんだよねえ。品質と価格が折り合わなきゃダメだしなー」

「待ってるぜ」

「五〇ゴールドの値段については何もコメントがなかったね。どうして?」

「驚きの安値だが、具体的な価格を口にするってことは可能だと思ってるんだろ?」

「初めから五〇ゴールドで出せればいいなーっていう企画だったんだ。今のところお値段の根拠はないの」


 レイノスの商人ヘリオスさんは、高級紙は高いみたいなこと言ってたから、そっちのルートは当てにできない。

 この前の紙飛行機イベントで、緑の民の村の紙の質と値段はイケそうだと思った。

 画集なら紙の枚数は絞れる。

 エルマによると緑の民の版画技術は高いらしいから何とかイケるか?


「着いたな」

「大丈夫? 疲れてない?」

「おっ? オレが心配か?」

「ポックリ逝かれると、画集の計画がおじゃんになっちゃうからね」

「ひでえこと言いやがる」


 お付きの女性二人が笑う中、行政府受付に。


「こんにちはー。精霊使いユーラシアでーす。パラキアスさんとオルムスさんに呼ばれて来ましたよ。あと、大商人のイシュトバーンさんがおまけについて来ていると伝えてね」

「はい、話は伺っております。こちらへどうぞ」


 あれ、どうなってんの?

 えらくスムーズに通されたぞ?

 まだ行政府は仕事時間じゃないでしょ?


「……こんな早い時間なのに、すぐ入れてくれたね?」

「だから精霊使いを待ちわびてたんだぜ」


 イシュトバーンさんが来ることも予想の範囲内だったろうか。

 お付きの女性と護衛の三人を控え室に残し、いつもの二階の奥の広い部屋へ。


「こんにちはー」

「遅いじゃないか!」


 強い怒りにも似た口調で言葉をぶつけてくるオルムスさん。

 どーした、えらく余裕がないね?

 パラキアスさんも憮然としたつまんなそうな顔してるし。


「まあまあ、オルムスさん。いい男が台無しだよ。皆でこれ飲もうよ」

「……何だい? これは」

「超すごいお茶だよ。コップあるかな?」


 オルムスさんがコップを用意してくれたので、それに注ぐ。


「「「!」」」


 三人の驚愕の表情。

 気分がいいなあ。


「こ、これは?」

「……素晴らしい味と香りだ」

「お、おい精霊使い。こりゃどういうわけだ?」

「これは多分世界最高のお茶だよ。帝国に輸出してぼったくろうと思ってるの」


 三人のそれぞれの反応が面白い。


「輸出? これドーラ産の茶なのかい?」

「うむ、確かに世界最高かもしれんな」

「ぼったくるってのが精霊使いらしいじゃねえか」

「ドーラにはおゼゼがないからさあ。ないならあるところから持ってこないと」

「だから貿易という発想か」

「ドーラは円満独立なんでしょ? 貿易が活発化するから、ドーラ産の売るものを見つけてこないと。帝国から輸入するばかりだとドーラがどんどんビンボーになっちゃう」

「精霊使いの言う通りだぜ。帝国にはガンガンものを売りつけなきゃならねえ」

「パラキアスさんとオルムスさんは何売ろうと思ってた?」


 顔を見合わせる二人。


「まあ魔宝玉とコショウか。正直貿易にまで頭が回ってなかったが」

「僕も同じだな。どう統治するかに手一杯だった。バルバロスのやつが……」

「どう統治するかなんて考えなくてもいいってば。優秀な人達の実務能力がそっちに取られると迷惑だわ」


 オルムスさんが驚くが、パラキアスさんとイシュトバーンさんが意味ありげな視線を向けてくる。

 了解、オルムスさんを丸め込めばいいんだね?

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