第597話:ドーラ行政府へゴー
――――――――――一二七日目。
「雨かー」
夜が明けると雨だった。
約束してるから行政府に顔を出すのは必須。
ザクザク宝箱クエストはノルマ。
雨が降ると海の王国も行きたいし、どーすべ?
雨なのに幼児が多いって珍しいな。
多いのは幼児じゃなくて用事だわ。
幼児が多かったらピンクマン大喜びだわ。
「レインはアルハーンよりノースとイーストだけね」
「そーなんだ?」
ダンテの天気を知る力は、地域まで把握できるから実に優秀だな。
じゃ、ここより南西のレイノスは大丈夫として、北の魔境は雨だな。
「ヴィル、聞こえる?」
赤プレートに話しかける。
『よく聞こえるぬ!』
「イシュトバーンさんに連絡取ってくれる?」
『わかったぬ! ちょっと待つぬ』
イシュトバーンさんにも帰ってから連絡取ってなかったな。
まあ特にイシュトバーンさんには用がなかったか。
あたしが移民関係で忙しかったとゆーこともある。
『おう、精霊使いか?』
「そうそう。麗しく可憐なあたし」
『久しぶりだな。無事だったってことは聞いてたが、どうして連絡寄越さねえんだよ』
あれ、大分寂しかったみたいだな。
ちょっと苛立ってるような声だ。
「無事に決まってるじゃん。それよりレイノスの行政府って何時に開くのかな? イシュトバーンさん知らない?」
あえてスルーしてみた。
愚痴聞かされるとウザいから。
あくまで自分の都合が優先なんだなって?
当たり前だろ、あたしは暇じゃないんだわ。
『愛しのオレに対していきなり仕事の話なのかよ。つれねえな』
「敬老精神はあるってば。ほんの少しは」
『行政府開くのは九時のはずだぜ。呼ばれてるのか?』
「うん。ギルドに連絡入ってたんだよ」
『ん? あんたドーラに帰ってきたの半月くらい前だろう?』
「どーして知ってるの。まったくえっちだな」
調べさせてたのか。
イシュトバーンさん相当暇してたのかな?
早めに連絡しとけばよかったか。
『あんたがカラーズで積極的に動いてることは知ってる。掃討戦跡地のクー川近くまで転移で簡単に飛べるようにしたらしいな』
「まあね。黄の民に協力してもらって、クー川の近くで米を作る予定だったからさ」
『あのできるモヒカンか。それでカラーズ緩衝地帯から転移石碑って話が急に実現したのか』
「転移石碑は元々作ってもらってたんだよ。ところが急に移民がたくさん来ちゃうって話が持ち上がったじゃん?」
『聞いた。月一〇〇〇人も来るらしいじゃねえか。しかも今月から』
パラキアスさん辺りから聞いてるようだ。
「当然掃討戦跡地がメインの移住地になるじゃん?」
『だろうな』
「移民も急に見知らぬ土地に放り込まれると可哀そうだから、開拓しとこうってことになったんだ。転移石碑があればカラーズから人員を送り込めるから」
『はん? カラーズで負担にならねえ限り移民に手を貸すってことじゃねえのか?』
「全面協力だよ。クー川から水路を通すの」
あれ、黙っちゃったな。
『……想像以上に大規模だな。あれか、マルーから巻き上げた金を使って?』
「そゆこと。昨日カラーズで会議があってさ。開墾するぞーって方針に決まった」
『あんたにメリットがないじゃねえか』
「なくはないよ。ドーラはあたしの国だから」
あたしに都合のいい国にするのだ。
豊かで何でも手に入る国に。
『ははあ、このタイミングなら、何でも金で言うこと聞かせられるってことか』
「え? まあそーゆー側面もあるけど」
言い方がゲスいわ。
『思い切りがいいぜ。ということは新政府にも金を投下するんだな?』
「よくわかるね。こっち帰ってきてギルド初めて行ったの一昨日なんだ」
『忙しかったのか、余計な仕事押しつけられるのが嫌だったのかどっちだ?』
「両方。やっぱ行政府行ったら余計な仕事押しつけられそーだって、イシュトバーンさんも思う?」
『思う。話聞いてるか? オルムスとバルバロスが今後の方針で対立して、誰もどっちの意見にも賛成しなかったっていう』
「聞いた聞いた。掴み合いになったって話じゃん。ぜひ見たかった」
『奇遇だな。オレもだぜ』
アハハと笑い合う。
「バカみたいだよねえ。何でパラキアスさんが妥協案出して話まとめようとしなかったのかな?」
『オルムスにへそを曲げられると、レイノスすら機能しなくなるからだろう。精霊使いの爆発力に期待して、一気呵成に物事動かす腹積もりに違いないぜ』
あっちでもこっちでも期待されてるみたいなんだけど?
こういうのを『精霊使いユーラシアのサーガ』に書いてくれればいいのに。
「じゃ、九時前くらいにそっち行くよ」
『今から来ればいいじゃねえか。行政府はあんたを待ってるんだからよ』
「ふーん? 早い方がいいのかな?」
『オレも連れてけ。エンターテインメントは間近で楽しみてえ』
イシュトバーンさんもエンターテインメント言ってるぞ?
「いいけど、今日大荷物だから抱っこできないぞ? 歩ける?」
『おう、大丈夫だ。が、大荷物?』
「遅刻した時は納得させるだけのお土産持っていかないといけないの」
『ほう? 移民受け入れ態勢を整えてるってことだけじゃなくてか』
またあのえっちな顔してるだろ。
わかるんだぞ?
「じゃ、今から行くよ」
『おう、待ってるぜ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻っててね」
『わかったぬ!』
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー。うん、待ち構えてると思ったけど」
うちの子達は家に置いて、イシュトバーンさん家に来た。
イシュトバーンさんはもとより、お付きの女性二人、護衛の警備員一人もスタンバイしていた。
「おお、本当に大荷物だな。これ何だ?」
「空飛ぶ軍艦から脱出する時の滑空装置。この布がすごい伸びて空気をはらむんだよ」
「盗んできたのか?」
「違うよ。ちゃんと艦長さんに許可もらってちょうだいしてきた」
まったく人聞きの悪い。
「こっちは?」
「聖火教徒の集落かレイノスかどっちかに投下されるはずだった爆弾。ちょっとビックリするくらいの威力なんだ。これは盗んできた」
笑うのか慌てるのかどっちかにしなよ。
「その両手に持ってるやつがお楽しみと見たぜ?」
「おっ、イシュトバーンさん、いい読みしてるね」
超すごい茶も持ってきているのだ。
「パンパンのナップザックの中もお楽しみだな? まあいい、行こうか」
行政府へゴー。




