第593話:ややピンクマンが浮いてるような気がする
フイィィーンシュパパパッ。
「ユーちゃん、いらっしゃい」
「ここ来ると『ただいま』って言いたくなるね。何となくだけど」
「アハハハ、何でえ?」
帰宅してからコブタ肉狩りに行き、クララが捌いている間にアトムとダンテがコブタマンと『氷晶石』を灰の民の村へ運ぶ。
そしてあたしがチュートリアルルームに来ているのだ。
何と効率的なことだろう。
「お肉お土産だよ。食べてね」
「やたっ! ありがとう!」
バエちゃんはお肉大好きお姉さんなので、クネクネして喜んでくれる。
「ユーちゃんは今日、何か用だった?」
「新人さんに『地図の石板』発給するの、今日じゃなかったっけ?」
「あっ、そうだった!」
「教育係ソル君の予定だったみたいだけど、忙しくてムリだからさ。ピンクマンに頼んだんだって」
「ピンクマンってカールさんよね?」
「うん。でもピンクマンも基本ボッチ冒険者なんだ。教育とか言われて困ってたから、あたしも行ってやるよってことになったの」
何だかんだで新人さんと初期から関われるのは楽しい。
ピンクマンにとっては難題かもしれんけど、あたしにとっては愉快なイベントだ。
あたしも忙しいので、メインで面倒見ろって言われると困るが。
「じゃ、ユーちゃんが教育係になったの?」
「いや、あたしはあくまでもピンクマンのサポート。この前のデミアンのケースと似たような感じ。み~て~る~だ~け~」
「でもデミアンさんの時は積極的に口出してたじゃない。面倒見がいいのねえ」
「今回は楽しみも作ってきたから」
「えっ?」
バエちゃんが不思議そうな顔をする。
うん、まあこれだけじゃわかるまい。
「ピンクマンにほの字の女の子がいるんだよ。ピンクマンの方はラブじゃないけど、立場上その子との絡みが多いの。今日もその子連れてチュートリアルルームに来いって言ってあるんだ」
「また悪魔的に説得したのね?」
「美少女精霊使い的に説得したんだよ」
アハハと笑い合う。
どーせサフランは大喜びでついて来るぞニヤニヤ。
ラブ話は乙女の嗜み。
「昨日ツインズがギルドに初めて来たんだよ」
「よかった。あまり心配はしてなかったけれど」
「不安そうにしてたわ。あたしも初めてギルド行った時のこと思い出しちゃった」
「チュートリアルルームに損害賠償請求に来るくらいのユーちゃんは、初めての場所だろうと怖気付くことはないでしょう?」
「またその話かよもー!」
アハハ。
黒歴史は蒸し返されるお約束。
「仲間をどうしようかって話してたから、自前のパーティーに拘らなくても、いろんな人と共闘してクエストこなしていけばいいんじゃないのって話したよ」
冒険者の数が増えれば、共闘はもっと盛んになると思う。
『アトラスの冒険者』以外のサポートメンバーが多くてもいいしな。
やりようはいくらでもあるが、そう考えられるのはあたしがベテラン(『アトラスの冒険者』五ヶ月目)だからかもしれない。
新人さんは要領がわからんだろうから、積極的に教えてやりたいもんだ。
「エオリアさんは戦闘メンバーが多い方が生きるでしょうし」
「マジでそう」
ツインズ妹のエオリアは『アシスタント』の固有能力持ち。
支援系補助系のスキルを習得していくという話だった。
「ツインズは苦労してギルド来たわけじゃないんでしょ?」
時間かかった感はあるが、独立戦争と年末年始のせいだろ。
「レベルが五くらいになった時、勘違いして多数の魔物を相手にしちゃったくらいかな。デミアンさんに説教食らってたわよ」
「その説教あたしも聞きたかったなー」
「傍で聞いていると褒められてるのか叱られてるのかわからないわよ。『悪くない』って言ってたし」
「あははははっ! すごくデミアンらしいな」
ツインズはチュートリアルルームへ報告に来る子達のようだ。
デミアンもしっかり仕事してたんじゃないか。
「ま、あるあるだよねえ。問題ない問題ない」
「ヌヌス兄妹はクエストがうまくいった時もいかなかった時も、きちんと報告してくれてたから。確かに実力的には大したことなかったけど、続くだろうなとは思ったわ」
「……あれ、ツインズの実力って大したことないんだ? あたし達やソル君よりよっぽど強いなって思ったけど」
ツインズは優等生タイプだから、離陸さえできれば飛べる子達だ。
でも……。
「ヨブノブはどうなのかな? あの後どうなったか知ってる?」
実力はあるので、あっという間にギルドに来てもおかしくないのだが。
話は聞かなかったなあ。
「こっちに連絡ないのでわからないわね」
「んー心配だな。やればできるとか勘違いしてサボってそう」
ヨブ君はハッキリ言ってどうでもいいが、ノブ君の才能が惜しい。
おっぱいさんなら進捗わかるかもしれないな。
あるいは今度マルーさん家行った時に様子見てくるか。
シュパパパッ。
あ、新人来たかな?
「……と思ったらピンクマン達か。空気読んでよ」
「何の空気だ。相変わらずユーラシアの言うことはよくわからない時がある」
わからなくたっていいのだ。
後ろ見てみろ。
連れてきてもらったサフランが嬉しそうだぞニヤニヤ。
「いらっしゃいカールさん。と?」
「ピンクマンと同郷のサフランだよ。酢の製造責任者なんだ。こちらはまよねえずの作り方教えてもらったバエちゃん」
「イシンバエワさんだ」
ピンクマンが訂正する。
「まよねえずの作り方ありがとうございました! 酢が大変売れるようになったんです」
「まよねえずって卵の白身が大量に余っちゃうじゃん? 保存も難しいから、まよねえずのレシピ流して酢を売り込むって方式にしたの。で、大ヒット」
「大ヒットなの? よかったわ」
「マジで酢が重要な交易品の一つになったんだ。ありがたやありがたや」
「以前ユーラシアさんが言ってた、けちゃっぷというのも?」
「あっ、そうなの! こちらの調味料なのよ」
「煮潰したトマトに塩を混ぜたような調味料だと」
「以前チラッと話しただけなのに、サフランよく覚えてたな。けちゃっぷは塩分多くすりゃ保存が利くから、いずれ売り出せると思う。今年はムリだけど」
「何故です?」
「移民が一杯来るから。トマト作る余裕があるなら保存の利くイモ作らないと。今年は移民を生かすことが先決だね」
和気あいあい。
ややピンクマンが浮いてるような気がするけどまーいーや。




