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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第589話:思ったより深刻

「サイナスさん、こんばんはー」


 寝る前恒例のヴィル通信だ。

 この寝る前にサイナスさんと話すのも、すっかりおなじみになった気がする。

 サイナスさんは優しい声をしているので、毎晩よく寝られるんだよなー。

 ただし寝る前通信がなくても、あたしがよく寝られることに変わりはない。


『ああ、こんばんは』

「今日は久しぶりにドリフターズギルドへ行ってきたんだ」

『ん? どれくらいぶりだったんだ?』

「どうだろ、一ヶ月弱くらいだったかな」


 サイナスさんはちょっと驚いたようだ。


『ドーラに戻ってきてから初めてだったのか。どうだった?』

「もーモテモテだったよ」

『ハハハ、それはよかったな』

「あたしがドーラに戻ってきてるってことは、もう伝わってると思ってたんだよ。ところが実際に見るまでは信じられないみたいな雰囲気でさ。『精霊使いユーラシアのサーガ』の執筆依頼を請けてるやつまでいた」

『冗談みたいな話だな』

「まったくだよ。あたしが生きてるんだったらタイトルどうしようって悩んでたからさ。頭に『生ける伝説』をつけろって言ったった」


 アハハ。

 笑いごとだけれども。


『ギルドだとドーラ全体の状況がわかるんじゃないか? 今どうなってるんだ?』

「さすがサイナスさんだね。ちょっと困ったことになってるよ」

『オレがデスさんに聞いたニュアンスだと、地方の自治性が強くなるんじゃないかって話だったんだが』

「じっちゃんは言い方が優しいな。実際のところはレイノスの新政府にドーラ全体をまとめる力がないから、放っとくとバラバラになっちゃうって感じ」

『確かな情報なのかい?』

「あたしの後輩のドラゴンスレイヤーで、十人会議に出席してるソル君って子に聞いたんだ。新政府首脳でまともに働いてるのは、パラキアスさん、オルムスさん、オリオンさんの三人だけって言ってた」

『……思ったより深刻だな』

「あたしもドーラに帰ってきてからミスティさん、マルーさん、デス爺には会ってるんだけどさ。三人とも全然新政府の仕事してないじゃん。変だなとは思ってたんだよ」


 移民に聖火教徒が多いだろうことを考えると、ミスティさんのやってることは新政府の意向に沿っていると言えないこともない。

 また西の果て塔の村を統治してるデス爺も同じような立場だ。

 でもミスティさんとデス爺は、どう見ても新政府に積極的に関わってはいない。

 むしろレイノスが混乱しても、火の粉を払って自分の集落を守ろうとしてるんじゃないかと思う。

 集落の自立を目指す考え方はむしろ、『西域の王』バルバロスさんに近いのか?


『で、ユーラシアはどうしたいんだ?』

「そりゃ新政府を盛り立てる方で動くよ。地方独立性が高くなったら、商売がやりにくくてかなわない」


 とゆーかレイノスを中心とする新政府の統治が行き届かなくて閉鎖的になったら、貿易で地方を盛り上げることができなくなる。

 どう考えてもドーラの発展が望めず、田舎国家が確定じゃないか。

 つまらん未来は御免こうむる。

 ドーラのヒロインたるあたしが面白くない。


『うん、つまりドーラを一つのものと考えていきたいということだな。勝算はあるのか?』

「さっき言ったように、今新政府を動かしてるのがオルムスさんパラキアスさんとオリオンさんの三人じゃん?」

『ああ、だから?』

「十人会議に参加したドーラの実力者は、『アトラスの冒険者』関係でシバさん、ペペさん、ソル君と三人いるんだよ。ここ意見一致させて行政府に飲ませれば、合計六人でとりあえず過半数でしょ?」

『えらく大雑把な算数だな』


 いーんだよ大雑把で。

 要するに行政府は、実力者の支持が少なくておゼゼがないから動けないのだ。


「ミスティさんはあたしの言うことなら聞いてくれるし、聖火教徒まとめてくれれば十分だな。デス爺とマルーさんはちょろいから大丈夫」

『君の話聞いてると簡単に思えるな』

「簡単だと思うよ。方針決まんないから皆カリカリしてるだけなんじゃないかな」


 本気で地方自治性を高めようとしてるのはバルバロスさんだけだろう。

 ドーラを全体を一つの国ないし交易圏としたいが、おゼゼがない現実から広く税金集めて財源を確保しようとしているオルムスさんの考えに賛同できず、空中分解しつつあるんだと見た。


『『西域の王』はどうなんだ?』

「バルバロスさんか。会ったことないからわからんなー」

『厳しい人だとは聞くが』

「らしいね。会ってみたい」


 西域でかなりの支持があるということは、西域の人達の考え方に合っているとゆーことだ。

 十人会議でバルバロスさんの意見が少数派であっても、無視はできない。


「明後日レイノスの行政府行ってくるよ。もうちょっと詳しい事情がわかると思うから」

『うん。カラーズには影響ないんだな?』

「カラーズに関係あるのは、大量移民をどうするかってことだけじゃないかな。税金取るみたいな話は出ると思うんだけど、ムリだって言っとくよ」


 ムリなもんはムリだわ。

 誰も払いやしないし、払わなかった時どうにかする組織もないわ。

 さて、あとは明日の会議のことだが。


「明日の会議は九時半からって聞いたけど、合ってる?」

『ああ、九時半から黄の民族長宅だ。フェイ族長代理が正式に族長となるという報告があり、明日の会議はお披露目を兼ねることになる』

「お披露目って言われても、新鮮味がないなあ」

『それ明日言うんじゃないぞ?』

「はーい」


 あたしにとってフェイさんのお披露目はどうでもいいことだ。

 問題は来たるべき移民のために、掃討戦跡地の整備を認めさせること。

 明日は気合いを入れないとな。

 開墾を進めとかないと、マジで餓死者が出ちゃう。


『今日の報告はここまでか?』

「うん。明日会議後に、フェイさんから札取りゲームの木の部分の試作品できてくるんだ。間伐材使った小さくて安いやつっていうのも頼んであるから、どっちがいいかアレク達に見せて確認しないと」

『ほう? 本格的に動き出すな』

「印刷の方も調べてこないとね。緑の民は版画が得意みたいだよ」

『話が進むと楽しみだな』

「じゃ、サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はギルド行ってから会議だな。

 午後は新人さんか。

 どんな子だろ?

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