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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第588話:ザクザク宝箱二日目

 フイィィーンシュパパパッ。

 かなり謎な転送先、『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』へ来た。


「これチャレンジに成功すると、次の日には宝箱が増えるってのがイカすねえ」

「一日に一回チャレンジ可能だと、絶対に毎日来たくなりますよね」


 うむ、毎日ザクザク宝箱クエストに来るのは、もはや冒険者としての義務だろう。

 また宝箱ってのがいい。

 冒険心でも乙女心でもいいけど、とにかくビンビン刺激される。


「うんうん、今日は宝箱三つだね。予定通り」

「姐御、くれぐれも言っときやすが、開けてもいいのは二つまでですぜ?」

「アトムわかってる? それは『押すなよ』と同じだからな?」


 お約束には忠実でありたいので、フラグが立つと回収したくなるのだ。

 あたしだって我慢してるんだから、わざわざ三つ目の宝箱まで開けさせようとすんな。

 ダンテがふーっと息を吐き、ヤレヤレというポーズを見せる。

 立札をチェックしていたクララが言う。


「昨日と文言は一字一句変わりませんね」

「よしよし、クララは偉いね」

「えへへー」


 いや、マジで細かいチェックを欠かさないクララは大したもんだよ。

 誰かがやらなきゃいけない役割だ。

 さすがうちのパーティーの知性。



「さて、いってみようかー」

「いっちゃってください」

「ヒューヒュー」

「何が出るか、楽しみでやすねえ」


 開けること自体も楽しみだけどね。

 さて、どれにしよう?


「……真ん中のを開けると、とても愉快な展開になる気がする」

「センターをオープンね?」

「いや、残念ながらこのクエストは、楽しみは取っておかなきゃいけないルールなんだよ。だから両端を開けよう」

「要するにハズレを引くとエンターテインメントなんですか?」

「そうそう。あれ? でも逆に考えると、どの宝箱を開けても楽しめるわけか。実に素敵なクエストだなあ」

「姐御の感覚がわからねえ」


 まあ気にすんな。

 まず右側の宝箱は……。


「蓋が割と重いんだよね。いや、期待の重さが蓋にのしかかるのか」

「もう、そういうのいいですから、早く開けましょう」


 おっと、こういうクララは珍しいな?

 冷静なクララでも宝箱にはコーフンするらしい。

 さあ、開けるぞ。

 ちゃらららっちゃらー!


「じゃーん! 中に入っているのは……籠手でした!」

「ビューティホーね」

「あっしらが使える装備品じゃないでやすが……」

「魔法の防具ですねえ」


 前衛戦士の使う、防御力重視のごっついタイプじゃないな。

 もっと華奢で繊細な細工が施されているマジックアイテムだ。

 あるいは女性用なのかも。

 どっちにしてもかなりのお宝なのは間違いない。


「さて皆さん、お待たせしました。最後の宝箱をオープンする瞬間が刻一刻と近付いております」

「もう、そういうのいいですから!」

「ハハッ、焦れるクララも可愛いぞ?」

「左の宝箱でやすね?」

「うん、そう」


 今度はアトムが開ける。

 中には素材か?

 このフワフワ感は確か……。


「あっ、これは覚えてる! 『アーリオオーリオ』だっけ?」

「レア素材の『ケサランパサラン』ですよ」

「惜しかった。ちょっとかすったけどなー」

「「「……」」」


 あまり尊敬の目で見るな。

 『ケサランパサラン』くらい知ってるわ。

 謎のフワフワでしょ?


「さて、本日のノルマ回収は終わった。帰ろうか」

「真ん中のは開けないんでやすね?」


 わざわざそう言ってくるアトム。

 やはりウズウズするものがあるらしい。


「お宝を全部かっぱぐ方が面白そうだから、もうそんな誘惑には負けないことにした」

「ユー様、御立派です」

「でもちょっと押されると負けそーだから押さないでね?」

「「「……」」」


 だから尊敬の目で見るな。

 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 夕食時にうちの子達と話をする。


「あの籠手と『ケサランパサラン』はキープしておくでいいですか?」

「うん。よくわかんないマジックアイテムは、あとでまとめて誰かに見てもらおう。レア素材も以前手に入れたことのあるやつは家に置いとく」


 皆が頷く。

 イシュトバーンさんに見てもらうのがいいか。

 面白がってくれそうだし。

 ただまだ籠手一個しかないから、クエストが進んでお宝を溜め込んでからでいいだろう。

 ハハッ、お宝ザクザクが前提だ!

 

「ドーラの行く末はどうでやすか?」

「アトムからドーラの行く末なんて質問をされるとは。成長したねえ」


 照れんなよ。

 しかしうちの子達がいいドーラにする意識でいてくれることは嬉しい。


「ソル君の話を聞いて、思ったより首脳部にまとまりがないと思ったね」


 パラキアスさんはガチガチの独立派だとは聞いたが、自らが企図したわけではない突然の独立実現に、やらなきゃいけないことが多過ぎて追いつかないんだろうな。

 おそらく誰も何も準備できてない。


「ボスはどうするつもりね?」

「どうもこうも。あたし達は移民の食べ物を何とかしよーとしてきたし、それが間違ってるわけでもないじゃん? 開発に目を向けさせることを頑張ろうよ。まず明日のカラーズの会議でがーっと気合い入れるからさ」


 世の中お腹一杯だったら大して揉めないと思うよ?

 食わせることが一番重要だ。

 クララが真剣に話し出す。


「ダンさんの話ですが」

「『精霊使いユーラシアのサーガ』執筆の話だね?」

「いえ、そちらではなくて」

「何かえらく真剣な面持ちだったから、不朽の名作の話以外ないかと思ったんだけど」

「相当ヤバいクエストだぞ、と言ってましたが」


 ザクザク宝箱についてか。

 ふざけた名前ではあるが、色々おかしいクエストだ。

 やはりクララも気になっている。


「おそらく全員カンストレベルであるあたしら以外には請けられないんだろうねえ。ヤバさは感じるけど」

「正体がわからねえからなあ」

「ベリーヤバいね?」

「まあね。でもこっちもやること決まってるから、バタバタしなくていいよ。お宝を全部没収するぞーっ!」

「「「おーっ!」」」


 うん、ジスイズマイポリシー。

 どうせあたしのレベルカンスト『閃き』が冴えまくるわ。

 お宝はあたしの名誉にかけて全部回収してくれる。

 勘弁してやらん。


「考えてもわかんないからさ。隠れてるやつが痺れ切らして表に現れてくるまでは、今のままお宝もらい続けるからね。ハッキリ言ってスーパーラッキーイベントだよ」


 皆が苦笑する。


「ごちそうさまっ! 寝るぞー!」

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