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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第587話:フライングクソジジイ

「ダンはあたしのこと心配してくれるん?」

「貴重なネタ製造機だからな」

「何だそれ? あたしが可愛いからってハッキリ言いなよ」

「御主人が可愛いからぬよ?」

「あれ? 最近ヴィルが面白いな」


 ぎゅっとしたろ。

 ザクザク宝箱が相当ヤバいクエストであることは、ダンの言う通りだと思う。

 確かに昨日、宝箱からパワーカードが出てきたが、おそらくそれはただの偶然だ。

 精霊関係でもなく、特にあたしに馴染みのある案件ではなさそう。

 ではどうしてあたしのところにこのクエストが割り振られたか?

 高レベルが必要だからだ。


「どっちにしても毎日宝箱を開けられるのは楽しみだなー」

「ああ、あんたはそういうやつだ」

「毎日一個ずつ多く開けられるんだよ? 素晴らしいとしか言いようがないなあ」

「ハズレ引くことは考えてねえのかよ?」

「ハズレ? 何であたしがドジ踏む前提なのだ。ユーラシアさんだぞ。宝箱一個残すのに耐えられなくて、全部開けちゃうことはあるかもしれないけれども」

「我慢しろよ!」


 想像してください、一個宝箱を残して帰還しなきゃいけない切なさを。

 後ろ髪引かれるんだってばよ。


「いやでも、開けてない宝箱って得も言われぬ魅力があるんだよ。残して帰るとすごいストレスかかるし」

「とっとと開けちまった方が早めにケリついていいかもしれねえな」

「ダンも誘惑するしなーもう全部開けちゃおうかなー」

「中にはいいもの入ってたのか?」

「昨日は持ってない種類のパワーカードだったよ」

「ほう? じゃあできるだけ引き延ばせ」

「え?」


 だから宝箱一個残して帰るのは、ビューティフルヒロインの精神に負担がかかるんだってば。


「結構な価値のもんじゃねえか。無限に続くわけないぜ。どうせ耐えきれなくなったところで黒幕が出てくるに決まってる。エンディングまで宝物は全部回収するのがお得じゃねえか?」

「……実にもっともだねっ!」


 根こそぎ宝物をいただいたところで悔しがる黒幕を拝む楽しみができた。

 いや、もちろん全部かっぱぐつもりではいたけれど、他人にお得と言われると心が固まるとゆーか。

 夜にサイナスさんと話すこともだけど、皆の意見を聞くことって大事だと思う。


「ごちそーさま。おいしかった」

「帰ってクエストか?」

「うん、お店ゾーン寄ってくけど。あ、ダンもおいでよ。工房ですげー便利なパワーカードが開発されたんだ。ひょっとしてもう売ってるかもしれないから」

「ほう? 気になるな」


 ハハッ、ダンは面白ネタに弱いから。

 武器・防具屋へ足を運ぶ。


「こんにちはー」

「ユーラシアさん、いらっしゃいませ。パワーカードですか?」

「うん、『遊歩』って、もう販売対象になってるのかなーって確認に来たの」

「はい、お取り寄せできますよ。二〇〇〇ゴールドです」

「おい、どんな効果のカードなんだ?」

「戦闘用じゃないんだ。こんなの」


 ダンとベルさんの前で浮遊してみせる。

 ダンが驚いてら。


「お見事ですね」

「飛行魔法ってことか?」

「そうそう。制限はあるんだけどね」

「どんな制限だ。聞かせろ」

「普通の『フライ』は一〇人以上一度に飛ばすことができるけど、『遊歩』の効果で飛べるのは自分だけ」

「大した制限じゃねえな。あとは?」

「落ち着きなよ。順に話すからさ」


 ハハッ、ダンも相当興味があるようだ。

 絶対買うだろ。

 毎度ありがとうございます。


「『遊歩』には『フライ』の代わりに、消費マジックポイントの低い『ソロフライ』って魔法が組み込んであるんだそーな。マジックポイント自動回復付きだから、実質ノーコストで空を飛べる」

「すげえな!」


 フワリと優雅に着地する。

 ダンの姿勢が前のめりだなあ。

 かなり吹っ掛けても買う気がするけど、残念ながらギルドは阿漕な商売をしない。


「驚きのパワーカードだな。誰でも欲しがるに決まってるだろ。何か問題があるのか?」

「飛行魔法はレベル依存なんだよね。これ使うにはレベル二〇くらいは必要だって。レベルが足りないとどうなるかは知らないな。飛ぶのは割と難しいんで、練習は必要だよ。ペペさんが全力で天井に頭ぶつけて大きなコブこさえたって聞いた」

「ハハハ、らしいっちゃらしいが、どうしてペペさんが?」

「『ソロフライ』はペペさん開発の魔法ですから」


 ベルさんが補足してくれる。

 建物の中で使うと危ないのは『フライ』も一緒だろうけどな。

 ペペさんも『ソロフライ』のスキルスクロールを売ればいいのに、あーいうアートな人は売らないと決めたら売らないだろう。


「レベル二〇くらいあれば使えるってのは間違いねえんだな?」

「確認したことないからわかんない。でもレベル三〇くらいのアレクに使わせてみたら、スイスイ飛んでたってのは間違いないよ」

「ふーん。ちょっと貸してくれねえか?」

「いいよ。ベルさんさよなら。ダンはきっとすぐに買うよ」

「販促ありがとうございます」


 買い取り屋さんでアイテムを換金してからギルドの建物の外へ。


「『遊歩』のパワーカード起動すると『ソロフライ』も自動で発動するんだ。身体がフワフワして頼りない感覚になるから、あとは飛べーって念じれば飛べるよ。念じ過ぎるとすごいスピード出るから注意ね」

「わかったぜ」


 ダンに『遊歩』のカードを渡す。


「おおおおおおお?」


 カードを起動するやいなや、ダンの姿が小さくなっていく。

 だから念じ過ぎるなとゆーのに。

 ダンも結構なレベルだからなー。

 あ、でもコツ掴んだみたいだな。

 ダンが降りてくる。


「どうだった?」

「えらく面白いじゃねえか。便利なのも間違いねえ。買う!」


 うん、まあ当然だね。


「注意点続きね。パワーカードは普通の武器防具と効果が干渉することあるから、これで空中戦とか考えちゃいけないよ?」

「おう、わかった。早速注文してくるぜ」

「あたしもストックとして買っとこうかな。パラキアスさんやイシュトバーンさんが欲しがるだろうし」

「フライングクソジジイか」

「フライングクソジジイだぬ!」


 ヴィルのツボだったみたい。

 『遊歩』の使用条件レベル二〇というのは、厳しいようでそーでもないな。

 メッチャ売れるもんじゃないけど、案外需要あるんじゃないかな?


 武器・防具屋で二枚『遊歩』のカードを注文する。

 明後日受け取りか。

 転移の玉を起動し帰宅した。

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