第586話:相当ヤバいクエスト
ダンがヌヌスツインズに聞く。
「あんたらは二人で冒険者をやっていくのか?」
ふむ、あたしもそこは気になるな。
二人では火力不足なのは事実だから。
ダンもゼファーが前衛、エオリアが後衛くらいのことはわかってると思うけど、どう考えてるんだろ?
顔を見合わせるツインズ。
「気心が知れているので二人がいいですが」
「この先厳しいのでは、とも思っています」
単純に攻撃力を求めるならパーティーメンバーが欲しくなる。
一方で新しいパーティーメンバーって、人間関係がややこしくなるからな。
あたしやダンはリーダーとして好き勝手やれる立場だが、皆その辺で悩むんだろうと思う。
『威厳』持ちのラルフ君はあんまり抵抗なかったろうけど。
「でも自分達のパーティーだけで何とかしようと考えなくていいんだぞ?」
「「え?」」
「ギルドカードもらったろ? 共闘については教わったか?」
「「いいえ」」
「あたしもフレンドはマウさんに教わったな。これ誰かが必ず教えるべきなんじゃないの? 必須事項だと思うけど」
「同感だ。いいか、ギルカを起動してみろ」
ダンがフレンドと共闘について教えている。
ギルドまで来た新人でも知らないことは多い。
でも教育係は共闘まで教えてお役御免でいい気はするな。
ダンの説明にふんふんと頷いているツインズ。
「……ということは、自分達だけでクエストを完了させられる見込みがない時は、誰かの力を借りるのもありだと?」
「もちろんだよ。どんどんクエストこなして、新しい転送魔法陣設置された方が面白いじゃん」
「「確かに!」」
「共闘は条件次第だぜ。例えばクエスト中に手に入れた素材や薬草の類を全て共闘相手に渡すって条件だったとしても、クエストクリアにおけるボーナス経験値分は丸々得だ。損するこたあねえな」
「うん。秘匿性のあるクエストじゃない限り、積極的に共闘を活用すべきだと思う」
共闘は戦闘回数が二分の一換算になるっていうけど、デメリットになる場面は少ない。
魔境トレーニングやその他のクエストで、戦闘回数がクリア条件になってる場合くらいだろう。
石板クエストでの共闘はもっと頻繁に行われてもいい。
「どうしてもレベルが足りなくて困った時は、精霊使いに頼れ。必殺技がある」
「「必殺技?」」
「魔境で共闘してパワーレベリングってやつだ」
「邪道はあんまりお勧めしないけど」
ダンが似合わないウインクをしてくる。
もう今は戦争が終わって、冒険者をパワーレベリングする意味も薄れた。
自分で経験積んで強くなる方が身になるってばよ。
「ギルド来たばかりの時は、依頼受付所のクエストで稼ぐのが一番だと思うよ」
「あんたがそれ言うか? 変なクエストばかり請けてたろうが」
「だって変なのばかり回されるんだもん」
案山子とか魔宝玉とかドスケベスライムとか。
大変面白かったです。
ありがとうございました。
「まあ、素材納めろアイテム持ってこいみたいなのが多いからな。小遣いとボーナス経験値稼ぎにはいいぜ」
「「はい!」」
「階段下の『初心者の館』もためになるよ。いろんな研究者がいる。一回は行って話聞いたほうがいい」
「俺、行ったことねえな」
「行かないとこんなんになるよ」
アハハと笑い合う。
「ありがとうございました。依頼受付所から行ってみようと思います」
「うん、定番だよ。じゃねー」
「「失礼します」」
ツインズが去っていく。
「ペペさんについて教えなくてよかったのか?」
「ペペさんか。教えなきゃまずい?」
「寝てるペペさんを『たのもう!』って起こした新人はあんただけだぜ」
「御主人だけぬよ?」
「じゃあ皆どうやって起こしてるんだろ?」
ペペさんがギルドにいる時は大体寝てるからな。
結構なベテランでも、起きてるとこ見たことない人はいるかもしれない。
ギルドの珍キャラペペさん。
「ペペさんに用があることはないんじゃないの? 聞かれたら教えてあげてよ」
「了解だ」
「で、ダンはツインズのことどう思った?」
「いい子ちゃん達だな」
「あっ、バカにしたような言い方だね」
「あんたみたいな面白みがねえ」
これは褒められてるのかそうでないのか、微妙だな?
あたしはポジティブだから褒められたと思っておくけれども。
「冒険者個人にエンターテインメントを求めるとは、なかなかやるね。あれ? あたしはダンにタダで面白みを提供してるのか。面白くないな?」
「飯奢ってるじゃねーか」
「奢ってるぬよ?」
「奢られてたわー」
柿の葉茶おいしい。
「今日はこれからどうするんだ?」
「クエスト行くんだよ」
「石板クエストか? ユーラシアにどんなのが分配されてるのかは興味あるな」
ふふっ、聞いちゃう?
「今ね、『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』っていうのやってるんだ」
「はあ? そんな怪しい転送先名聞いたことねえぞ」
「まだ昨日始めたばかりなんだけどね。部屋の中に宝箱が複数置いてあって、内一つがハズレなんだって」
「はん?」
いやまあこの説明だけじゃどんなクエストかわかんないだろうけど。
「ハズレを引くと終了、でもハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日は宝箱が一個増えるんだって」
「要するに宝箱クジが毎日引けるということか」
「ピンポーン! 昨日は宝箱二個置いてあって、一個開けて成功だったんだ。今日は三個の宝箱があるはずだから、二個開けられるよ。毎日続けりゃ大儲けだな」
ダンが片頬を上げ、何かを考えるように目を細める。
「……おい、ちょっと待てよ。クエストの達成条件は、ハズレ宝箱を引くことなんじゃねえか?」
「だろうね。あたしもそう思う」
「おかしいじゃねえか。クエストを達成しない限り、いくらでも宝箱を開けられるってことだろう?」
「まあねえ。魔宝玉クエストに続く、ぼろ儲けラッキーチャンスです。誰がこんなクエストを主催してるのか知らんけど、大人しく破産してもらう」
ダンの顔が険しくなる。
「おい、あんたもわかってるんだろ? 相当ヤバいクエストだぞ?」
「きっとあたしがいい子ちゃんだから、神様がプレゼントしてくれたんだと思うんだ」
「んなわけあるか!」
その『んなわけあるか!』は、あたしのいい子ちゃんを否定してるんだろうか?
神様のプレゼントを否定してるんだろうか?
まーヤバいクエストなんてことはわかってるよ。




