第584話:ドーラの行く末
ドーラをいい国にしたいとゆーのに、道のりは遠いわ。
「……ま、いっか。活動資金がないから、どうせ大したことできないだろうし」
レイノスのドーラ政府は、旧上級市民を優遇して当面の税収を確保するくらいしかやりようがないだろ。
制度上で身分の上下を認めることになりそうだから、あたしは嫌なんだが。
後の課題だな。
一足飛びに理想通りとはいかないもんだ。
ソル君が聞いてくる。
「オレはどうしたらいいですかね?」
「とりあえずドーラを一つにまとめようと思うと、レイノスを押さえてる新政府中心にするのが一番手っ取り早いんだ。だから新政府に忠実であってくれる?」
「わかりました!」
おーソル君元気出たね。
「ソールの役割は新政府と『アトラスの冒険者』のパイプだろ? 俺ら冒険者は新政府に協力していいことあんのか?」
おっと、ダンわかってるじゃないか。
そしてなかなかいいフリだね。
「帝国から円満独立したこと。新政府がレイノス港を握ってることってのが大きな注目点なんだよね」
「はん? ちょっとわからねえんだが」
「今まで細ってた帝国との貿易は、今後当然活発になるってことじゃん?」
「まあな」
「どう考えたって帝国にものを売りつけるのが発展の近道でしょ。ドーラはレイノスにしか港がないんだぞ? 新政府がうまく回れば貿易も活発になるし、移民で人口も増える。ということは素材やアイテムの需要は増えるよ。クエストで手に入れたら、高く引き取ってもらえるようになるかもしれないじゃん」
周りで聞いてる冒険者達もふんふんと頷く。
「新政府に協力しろっていう、ユーラシアの根拠はわかったぜ」
「ここからが肝心だからよく聞いてね。今のドーラの首脳一〇人体制の内、シバさんソル君ペペさんと、『アトラスの冒険者』関係が三人もいるでしょ? マルーさんだってギルドの出資者だし。意見を固めれば、あたしらに都合のいい世の中にできるチャンスだぞ?」
「おお、なるほど!」
「精霊使いの言う通りだ!」
ハハッ、皆ちょっとノッてきたな?
煽りどころだ。
「ドーラが乱れて得する人いないよ。ここまではいいね?」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
「今の新政府の中核三人は有能だし、港町レイノスを押さえてる強みもある。ここに味方してあたしらの意見を押しつけるぞ!」
「賛成だ!」
「俺達のできることは何だ!」
「雑多な意見でいいから、こうしたいってことがあったらソル君とこに集めよう。シバさんペペさんと要望まとめて、新政府に持っていけばいい。それからソル君、『アトラスの冒険者』に悪者はしばいていいっていう権限をもらえないかな?」
「わかりました! 早速提案して、権限をいただいてきます」
まあ要はおゼゼのかからない警察ないし憲兵ということだ。
治安維持に回すおゼゼのない新政府にサービスだね。
さすがにソル君は、意図を酌み取ってくれたようだ。
「この要求が通れば、『アトラスの冒険者』は法的に正義の組織だぞ!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
「あたしも新政府に呼ばれてるから、今度行って新政府首脳部の本音の部分を探ってくるよ。今のソル君の話聞く限り、新政府にはウィークポイントしかない。弱み握って言うこと聞かせる方向に持ってくぞ! いいなっ!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
「よーし、今日はここまで」
やじ馬冒険者達が去り、ソル君パーティーとダンが残る。
「ユーラシアさんがいると、方針がすぐ決まるな」
「あたしがこうしたいってのを話してるだけなんだけど」
「ついさっきまで、ここもどよーんとした雰囲気だったんですよ」
アンセリが言うけど、そーなのかなあ?
いい社会や暮らしやすい社会は、皆が望んでると思うよ。
「あたしのやりたいことやってるだけなんだけどなー。皆が乗ってくれるんだよ。ありがたいことに」
「で、今あんたのやりたいことってのは、新政府に介入することなのか?」
「いや、移民を生かす方が先だな。貧しい人、若い人、聖火教徒を中心に年間一万人くらい来るって聞いた。ソル君、移民について詳しい話出てる?」
「はい。月一〇〇〇人を上限に受け入れ決定とは聞きました」
「これから毎年毎月だぞ? そんだけの人数を受け入れられるのって掃討戦獲得地しかないからさ。一昨日カラーズの真ん中からクー川ちょっと西まで飛べる転移石碑を設置したんだよ。明日カラーズで会議やって、移民の受け入れのためだ、耕すぞーって方向に持ってく」
頷く一同。
「ダンのとこの農場も食糧多めに生産してよ」
「わかったぜ」
「ユーラシアさんは色々やってるんですねえ」
超過勤務手当ては出ないけどね。
何故あたしがタダ働きを甘受せねばならんのか、わけがわからん。
「思いつくと色々やりたくなっちゃうんだよ。今は識字率上げようと思ってるんだ」
「識字率? 読み書きさせようってことか?」
「そうそう。せっかく『精霊使いユーラシアのサーガ』が出版されても、読めないんじゃ売れないでしょ?」
「俺んとこに『精霊使いユーラシアのサーガ』の執筆依頼が来たぜ」
「「「「え?」」」」
マジか。
『精霊使いユーラシアのサーガ』は、あたしの定番のギャグなのに。
先手取られたみたいで面白くないな。
「何でダンのところに執筆依頼が?」
「俺が一番ユーラシアの面白エピソードを収集してるからだな」
「まあいいか。じゃあダンに……」
「おっと、俺は依頼を請けたから書くんだ。モデル料は依頼主の方に請求しろよ?」
「こんなん先回りで言われるとは」
ますます面白くない。
しかし皆が笑う。
「いや、依頼主もユーラシアが死んだと思ってたから、俺に書けって言ってきたんだと思うぜ」
「そーかも」
「俺も困ってるんだ。あんたが生きてるならタイトル変えたほうがいいかと思ってな」
「タイトルの前に『生ける伝説』をくっつけるだけでよくない?」
「おう。本人がそれ言い出したってとこまでエピソードで書いてやる」
「えーずるーい!」
「安心しろ。識字率の件から丸々書く」
「あたしに原稿料の何分の一かくれてもいい案件じゃない?」
「どんどんネタを増やすなよ。忘れちまうぜ」
ヴィルがニコニコしている。
素晴らしい感情に満ちているんだろう。
ぎゅっとしたろ。
今日はいい日だ。




