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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第582話:あっちもこっちも先が楽しみ

「サイナスさん、こんばんはー」


 今日もまた、寝る前恒例のヴィル通信だ。

 お腹が一杯になると眠くなってしまうな。


『ああ、こんばんは。面白いことはあったかい?』

「面白いのはやっぱりラブい話が鉄板だけど、それでいい?」

『フェイ族長代理の話だな?』

「うん。年明け早々に族長に就任、これは決定だって」

『いきなりラブくないところから入ったね』

「サイナスさんはせっかちだなあ」


 まったく下世話な話が好きなんだから。

 あたし? 大好物に決まってるだろ。

 ちょっと面白そーな展開になると思うから、最初から聞いてってことだよ。


「インウェンの話によると、黄の民に家柄のいいお嬢さんが二名いて、族長家親族一同がフェイさんの嫁としてどっち推すかで真っ二つに割れてるそーな」

『インウェンってお団子副隊長のことだな?』

「そうそう。あたしもフェイさんの嫁事情がどんなんなってるか知りたいじゃん? だからインウェンに調べてもらってるの」

『ええ? ユーラシアは全く関係ないだろうに』


 無関係な立場から楽しめるラブい話はオツなものですニヤニヤ。

 あたしに噛んでくれって流れになったら、強引にインウェンエンドに持ってくわニヤニヤ。


「で、家柄のいいお嬢さん二人とは別にフェイさんに意中の女性がいて、族長家親族一同に明かしたら大反対されたっていう構図らしいんだ」

『フェイ族長代理の意中の女性というのが、お団子副隊長か?』

「多分ね」


 だって他にそれらしい登場人物がいないもん。


『どうしてお団子副隊長が大反対されるんだろうな?』

「パワーバランス的に、有力者の家系から嫁を取るっていう考えがまずあるんだと思う。他の選択肢は寄ってたかって潰す暗黙の了解なんじゃないかな」

『ははあ、なるほど。お団子副隊長が可哀そうだな』


 本当にインウェンが蚊帳の外に置かれるなら可哀そう。

 でもフェイさんのやることだからな?

 フェイさんが候補のお嬢さん二人のことをどう思ってるかは伝わってこないけど、少なくともインウェンのことを認めているのは確かだ。


「ただ今日フェイさんにも会ったんだけどさ。全然困ってなさそうなんだよね」

『そう見えるだけじゃないか?』


 フェイさんは他人に弱みを見せるような人じゃないが、ビックリするくらい丸投げしてくることもあるしな?

 悪いやつだから心中を読みにくいのだ。


「いや、何か必勝の策があると見た」

『君、相談されそうな雰囲気だったって言ってなかったか?』

「あたし当事者じゃないし、黄の民族長家親族と面識あるわけでも問題のお嬢二人を知ってるわけでもないじゃん? 状況をもっと愉快にするくらいしかできないと思うんだけど」

『ほどほどにしておけよ?』

「あたしのとこに話持ってきたらどうなるか、あのフェイさんが理解してないなんてことはないなー」

『もっともだな。じゃあどういうことだ?』


 さあ、そこがサッパリわからない。

 しかしこれは黄の民が決めるべきことで、あたしは基本的に部外者だ。

 インウェンを推してやりたいって気持ちがあるだけ。


「まーあたしがこの件について積極的に動く理由は、今のところないから」

『外野から楽しむんだな?』

「そうそう。高みの見物のつもり」


 アハハと笑い合う。


「黒の民の村でルカさんに会ったよ」

『ルカ族長? 白の民の? 何故?』

「ピンクマンとサフランが白の民の村を訪ねてさ。落とし穴に落ちそうになったサフランをかばって、ピンクマンがケガしたんだって。で、ルカさんが謝りに来てたの」

『落とし穴ってケスのか?』

「いや、違くて」


 これもちょっと面白い話になってるの。

 予想外だぞ?


「ケスが輸送隊に抜擢されたじゃん? 白の民の子供達の間でケスはヒーローみたいな扱いになってて、落とし穴が大流行なんだそーな。実に愉快でしょ?」

『ほぼ君のせいじゃないか』

「まああたしの責任については置いといて」

『八割方君のせいじゃないか』

「押すなあ」


 サイナスさんはこういうこと言わない人だったのに。

 まったく誰の影響だ?


「で、白の民が戦々恐々としてる、どうにかなんないかってルカさんに相談されたから、落とし穴大会やることにした」

『……君の発想のそういうところがわからない』

「まず参加したい子供に名乗りを上げさせるでしょ? 一五日って期限を区切るんだよ。ケスを落としたら合格、他の誰かを落としたら失格で自分の掘った穴を埋め戻しってルール決めとくの」

『ははあ?』

「一五日経ったら、お前ら落とし穴の才能ないから他のことやれって言えば収まるじゃん? 逆にやらせてみないと収まんないから」

『なるほど、ユーラシアらしい。面白いじゃないか』


 ほら見ろ、サイナスさんだって面白いと思うんじゃないか。

 ユーラシアさんの考えたエンターテインメントだぞ?

 一五日も経たない内に、子供達同士で落とし穴潰し合って自滅する気もする。


『ユーラシアは、ケスが引っかかるはずがないと思ってるんだな?』

「引っかかるわきゃないね。むしろケスを落とすような子がいたら見てみたいけど」


 技術的に、表面から見てわからないような落とし穴を作る子はいるかもしれない。

 でも技術だけじゃ注意深いケスは落とせない。


「ケスの落とし穴は、何もない通りだな、先に広場があって右に井戸があるわっていう、ふっと地面から意識が外れるようなところに掘ってあるんだよ。だから吸い込まれるように人が落ちるんだと思う。ああいうのはセンスだなー」

『糞がクッションになってケガしないようにできてるしな』

「芸術品の域だね。サイナスさんわかってる」

『ところでケガは大丈夫だったのか?』

「ピンクマンは『ヒール』使えるし、何ともなかったよ。サフランに寝ててくださいって言われて、断りきれなかっただけだと思う」

『二人はラブい気配なのかい?』

「サフランはラブなんだけど、ピンクマンはそーでもないんだな。あっちはあっちで面白いの」


 今日はちょっとサフランをけしかけたけれども、どういう結果が出ることやら。

 あっちもこっちも先が楽しみだわニヤニヤ。


『楽しみを作るなあ』

「灰の民は特に何もなかった?」

『ないな。おやすみ』

「おやすみなさい。ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は帰国後初めてのギルドか。

 久しぶりだな。

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