第581話:アイテム長者への第一歩
フイィィーンシュパパパッ。
一七個目の魔法陣の転送先、『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』にやって来た。
今までこれほど心をウキウキさせる名前のクエストがあっただろうか?
いやない(反語)。
しかし?
「うーん?」
「普通の部屋、という感じはしませんが……」
「それ以上でもありやせんぜ」
アトムの言う通りだ。
思ったよりワクワクしないぞ?
タイトル詐欺かな?
改めて観察する。
比較的広めの部屋だ。
床には斜めストライプの模様が描かれており、無機質な感じがする。
このパターンは……。
「ダンテ、ここも亜空間の中の実空間なのかな?」
「ノー。ドーラやエンパイアと同じ空間ね」
ふむ?
また異空間関係のクエストかと思ったら、そうではないらしい。
「宝箱が二つありやすね」
「二つじゃザクザクって感じしないんだけど? 看板に偽りあり過ぎない?」
「ベリービッグね。インナーザクザクかもしれないね」
「インナーザクザクっていいなあ」
「立札がありますよ」
宝箱があったらもらっていくに決まってるじゃないか。
お触り厳禁なんて書いてあったら嫌だし、読む義理もないんだが。
えーと、何々?
いらっしゃませ。
宝箱は一つのハズレ以外、残り全てにお宝が入っています。
一日に一回チャレンジ可能です。
ハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日は宝箱が一つ増えます。
ハズレを引くと終了、次の日からチャレンジできなくなります。
どうぞお楽しみください。
ほう、面白そうじゃないか。
なるほど、これはエンターテインメントだ。
「宝箱が二つあると両方開けたくなるけど、それを押し留める威力がある立札だねえ」
「ところがどっこい、二つ開けるんでやすか?」
「アトムの提案は実に魅力があるけど、毎日宝箱はもっと魅力があるから」
「どっちのトレジャーボックスにするね?」
「ちょっと落ち着こうか」
お宝が入っているとは書いてあるが、トラップがないとは限らない。
このクエストの主催者にどんなメリットがあるんだと考えると、どーせ欲の皮の突っ張った冒険者が罠にかかるところを見たいとかゆーことなんだろうから。
「ユー様、立札の裏にも何か書いてありますよ」
注:お宝が入っている宝箱に罠はありません。
「随分と親切でやすね?」
「ハズレの宝箱に何もなくて、お宝入りに罠が仕掛けてあるとかゆー遊びもあり得るかなと思ってたよ」
立札の内容を信じる限り、当たりの宝箱を引き続けるならば、ノーリスクで無限にお宝を手に入れられることになる。
とはゆーものの主催者が誰かもわからんし、信頼性がまるでない。
ちょっとモヤモヤするクエストだな?
「信用するのも愚かだけど、クエストである以上、どっちか開けないと話になんないな。あたしが開けるよ。フォローよろしく」
「「「了解!」」」
どちらにしようかな、ユー様の言う通り、と。
「よし、こっち!」
カギはかかっていない。
重い蓋を持ち上げると、そこには……。
「あっ、パワーカードだ!」
うちの子達が近寄ってくる。
「『セントカーム』のカードですか。塔の村で売っていた、聖耐性付きのカードですね」
「すぐ必要ってもんじゃないけど、持ってりゃ応用利くからねえ」
「ジスイズトレジャーね!」
うむ、紛れもなくお宝。
バカでかい宝箱の中に小さなカード一枚というのは、『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』という煽りからすると何となく納得いかない気はする。
しかし魔法の葉一枚なんてこともあり得るかなと思っていただけに、このクラスのブツが出てくれるのは嬉しい。
二個宝箱を開けられる明日に期待が持てるじゃないか。
「帰りやすか?」
そーなんだけど。
「……宝箱を残して去るってのは後ろ髪引かれるもんだねえ」
「ワッツ?」
「ワッツ言われても。こーゆー欲心をかき立てるトラップか」
「ユー様、明日は宝箱二個開けられますよ」
「……涙を呑んで今日は諦めることにするよ」
開けられない宝箱って、純真な乙女のハートに負担をかけるものだなあ。
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
クララが夕御飯を作っている間、現在所有しているパワーカードの整理をする。
現在の通常装備と予備はこうだ。
あたし……『あやかし鏡』『スナイプ』『アンリミテッド』『暴虐海王』『スコルピオ』『風林火山』『ハードボード』
クララ……『逃げ足サンダル』『誰も寝てはならぬ』『三光輪』『スカロップ』『シンプルガード』『スペルサポーター』『ボトムアッパー』
アトム……『ドラゴンキラー』『ルアー』『誰も寝てはならぬ』『ハードボード』『武神の守護』『シンプルガード』『吸血鬼の牙』
ダンテ……『誰も寝てはならぬ』『癒し穂』『三光輪』『るんるん』『マジシャンシール』『光の幕』『マジックオーソリティ』
予備……『寒桜』×四『誰も寝てはならぬ』『サイドワインダー』×二『三光輪』×二『前向きギャンブラー』『オールレジスト』『ヒット&乱』『刷り込みの白』『ナックル』×二『ニードル』『スラッシュ』『アンデッドバスター』『風月』『鷹の目』『スナイプ』『シールド』『ファイブスター』『ボトムアッパー』『厄除け人形』『火の杖』『エルフのマント』『ファラオの呪い』『プチエンジェル』『遊歩』×四『クールプレート』×四『ウォームプレート』×四『セントカーム』
手持ちがこれだけと、ヨブノブに貸している『スラッシュ』と『シールド』がもう一枚ずつある。
ノブ君は気合の入ってるいい子だから、あげちゃってもいいんだけどな。
「何だかんだでカード増えたねえ」
「宝の山でやすよ」
うん、宝の山だ。
序盤はパワーカードさえあればやっていけると思ってたじゃないか。
初心に返らせてもらったという意味では、今日のお宝は『セントカーム』一枚分以上の価値があったと思える。
「ダンテに会う前のことだけどね。アルアさんの工房に行くまでは、パワーカードをどうやって手に入れようかって、結構悩んだんだよ」
「そうでやしたねえ」
「ミーもパワーカードについて初めて聞いた時、インタレスティングだと思ったね」
「経験まで含めて財産だよ」
極めていい話っぽい。
しかし実際のところは夕御飯直前でお腹減ってるから、何となく口寂しいじゃなかったもの悲しい気分になっただけ。
「御飯できましたよ」
「いただきまーす」




