第580話:ザクザク宝箱!
新人お世話係のピンクマンには言っとこ。
「次の新人『アトラスの冒険者』に『地図の石板』配るのは、今月四日って言ってたな。明後日か」
「チュートリアルルームで聞いたのか?」
「うん」
「カラーズで会議の日じゃないか」
黄の民フェイさん家に集まって、掃討戦跡地を開拓するぞーって発破かけなきゃいけない、移民とカラーズにとって極めて重要な日。
しかし新人さんなんかに関わっていられないと考えるのは、シロートの浅ましさ。
「まーいいんじゃないの? 必ずしも最初っから顔合わせないといけないってわけでもないんだし」
「緩いスタンスだな。いいのか?」
「いいよ。地力で何の苦労もなくギルドまで来れちゃう人だっているんだから」
何かトラブルあったら助けてやりゃいいってことだ。
どーんと構えてりゃよろしい。
「時々チュートリアルルームに様子見に行きゃいいよ。あたしもなるべく顔出すようにするから。緊急で何かあったら、ギルドで教えて」
「ようやくギルドに行くのか? ユーラシアがドーラに戻ってきているという情報はチラホラ入っていた。ただギルドに姿を見せないから、半信半疑の者もいるんだ」
「すげえ厄介な仕事担当させられそうだから避けてたんだよ」
「ハハッ、さすがにカンがいいな。パラキアス氏とオルムス知事から呼び出しがかかっていたぞ」
「魔境でオニオンさんに聞いた。やっぱピンクマンから見ても厄介なのかー」
あたしは新政府の役に就いてるわけじゃないから、実務で高レベル冒険者が必要な案件はシバさんかソル君に回されるはず。
となるとパラキアスさんとオルムスさんの二人があたしに何言ってくるか、ある程度見当はつくんだが。
……つまり新政府内部で何か問題があるから、役員ではないあたしのチャーミングなフェイスでどーにかしろ、ってことなんじゃないかな?
「ところで次の新人冒険者がどんな子だか、ピンクマンは話聞いてる?」
「いや、小生はソールに頼まれただけだから」
「あ、そーか」
「ユーラシアも聞いてないんだな?」
「あたしもこの仕事が我が身に降りかかるとは思わなかったもん」
バエちゃんは何も言ってなかったから、ソル君も知らない可能性が高いか。
バエちゃんも名前と年齢と固有能力くらいしか把握してないはずだわ。
あんまり役に立たんな。
一度その新人に会ってみるべきだわ。
「……開墾するぞーの会議終わったら、チュートリアルルーム行ってみよう。インウェン、会議って何時に始まるのか決まってる?」
「いえ、午前中とだけ。ユーラシアさんの都合のいい時間はどれくらいですか?」
あ、フェイさんはあたしに合わせてくれるらしい。
好都合だな。
「朝ちょっと準備がいるんだ。あんまり早いと困るかな。九時半だとどーだろ?」
「わかりました。その旨伝えておきます」
こっちはこれでよし、と。
あたしの大仕掛けに驚け。
「じゃ、明後日の午後、チュートリアルルーム行こうか。その時サフランもおいでよ」
「はい!」
「……何故サフランを?」
ピンクマンが諦めかけてきたぞ?
ピンクマンとサフランをくっつけておきたい以外にも理由はあるんだってばニヤニヤ。
「サフランの固有能力を知りたいんだよね。多分相当レアな不思議系だと思う。興味があるんだ」
「あるんだぬ!」
「ほう?」
ヴィルよしよし。
ハハッ、ピンクマンも興味あるらしい。
ピンクマンも研究者っぽいところあるからなあ。
「冒険者活動するなら、場合によってはサフランに何かスキル持たせた方がいいじゃん? ピンクマンがソロで十分戦えることは知ってるけどさ」
「うむ、そうだな」
サフランは『マナの帳』、『リフレッシュ』、『プチウインド』の三種の魔法を使えたはずだ。
支援・回復・攻撃とバランスはいいが、冒険者としてなら一つ強力な攻撃魔法が欲しいところ。
サフランに強力な攻撃魔法が必要なほどのエリアで探索するのは、間違ってるとは思うけど。
「欲を言えば前衛が欲しいな」
「いや、真剣に冒険者やれってことじゃないから。サフランを危ないとこ連れてくとクロード族長に怒られるぞ?」
二人でラブい雰囲気になればいいのだニヤニヤ。
「じゃ、あたしは帰るね」
「うむ、またな」
「さようなら」
「インウェンも何かあれば教えて」
「はい、ではまた」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「ただいまー」
「お帰りなさい」
「こっちはどうだった?」
アトムとダンテが顔を見合わせる。
「ウインドスライダーは思ったよりアンエキサイティングね」
「『遊歩』で飛び回った方がよほど楽しいでやす」
「うん、やる前からわかってた」
そりゃ滑空するだけより、自由に飛び回れた方がエキサイティングだろ。
ウインドスライダーは誰かにあげちゃおう。
研究用にしてもらった方がいい。
総督府に御機嫌伺いに行く時に、お土産として持ってこ。
「森にももう、食べられる実はなかったですね。鳥が食べ尽くしています」
「鳥も生きていかなきゃいけないからねえ」
「海行ってきやしたぜ」
「フィッシュをゲットしたね」
「夕御飯のおかずです」
「おお、いいね!」
たまには魚も食べたくなる。
ドーラで一般的な食べ方じゃないけど、あたしは塩焼きも好きだ。
「今日はそれくらい?」
三人が顔を見合わせる。
あれ、まだ何かあるのか?
「ユー様、最新の転送魔法陣ですけど」
「見てもらった方が早えぜ」
「ファンキーね」
「何事?」
ファンキーな要素なんかあったかな?
一七個の転送魔法陣が並ぶ東の区画へ。
九番目の『カル帝国・山の集落』行きの魔法陣以外は、淡い光を放っている。
「一七個目、これか」
魔法陣の上に立つ。
立ち上る光が増し、フイィィーンというやや高い音が鳴る。
そして頭の中に事務的な声が響く。
『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ! に転送いたします。よろしいですか?』
「えっ?」
覚えてないけど、確か~の部屋みたいなつまんない名前の転送先だったような気がする。
ザクザク宝箱だったら行くに決まってるじゃん。
「名前変わったのかな?」
『はい。来てくれないので名前を変更するとのことでした』
「おおう、エンタメ精神をわかってるね。イベントを主催する人がいるみたい?」
「かもしれやせんね。行くんでやしょう?」
「ファンキーだもんねえ。転送よろしく」




