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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第579話:落とし穴大会やろう!

 白の民ルカ族長が頭をかきながら言う。


「いや、我が村への客人にケガをさせてしまったのでな。大変申し訳なく」

「冒険者は頑丈だから大丈夫だよ」


 チラッとピンクマン見たけど、もう悪いところないぞ?

 思った通り『ヒール』を自分でかけたんだろう、すっかり治ってる。


「ユーラシアこそ、何故ここに?」

「昨日の転移石碑設置の時に、サフランもピンクマンも来てなかったじゃん? ラボでトラブルでもあったかと心配になったの」

「意外と細かく気を回すのだな」

「黒の民のショップでピンクマンがバカバカしいケガをしたとは聞いたんだよ。来るのやめようかと思ったけど、インウェンがあんた達に確認しときたいことがあったみたいで」


 サフラン嬉しそうだね。

 新年早々ピンクマンを独占できてるからかな。

 インウェンが言う。


「一応伺わせてください。黒の民の交易商品については滞りなく納めていただけますよね?」

「はい、それは問題なく」


 うむ、交易は一安心。

 もう用終わっちゃったわ。


「ルカさん。ケスは今、かなり忙しいと思うんだけど、落とし穴掘ったりする時間があるのかな?」

「いや、ケスが掘ったのではないんです」

「え?」


 まだ他に悪ガキがいるのか?


「落とし穴で輸送隊に抜擢されたケスは、白の民の村でヒーローみたいな扱いでしてな。今、子供達の間で落とし穴が大流行なのです」

「わちゃー」


 メッチャ予想外の展開になっとるがな。

 落とし穴を推奨してるんじゃなくて、技のクオリティを買ったんだとゆーのに。

 しかもケスを抜擢したあたしの責任が、少なく見積もっても三分の一くらいありそう。

 何てこった。


「白の民は皆、戦々恐々としています。どうにかなりませんかな?」

「えーと、子供達は大人に認められたいから穴を掘るってことだよね? イタズラがしたいわけじゃなく」

「さようです」

「じゃあ落とし穴大会やろう!」

「「「「えっ?」」」」


 驚くんじゃねーわ。

 しょうがないじゃないか、あたしに振るんだから。

 エンターテインメントたっぷりの解決方法にしたくなっちゃう。


「ユーラシアの考えを聞こうじゃないか」

「まず、参加したい子供にエントリーさせまーす」

「ふむふむ」

「大会期間は一五日間。合格条件はケスを落とし穴に落とすこと。ただし、ケス以外の誰かを落とし穴に落としたら即失格。自分の掘った穴は埋め戻すこと」


 ピンクマンが口を挟む。


「……対象を狭めることで他の村人を落とす可能性を減らす。失格者が出るたびに穴はさらに減る、ということか」

「そうそう。もしケスを落とす子が出たとして、自分の掘った他の穴に他人が落ちたら台無しだから埋め戻すでしょ? どんどん穴は減る」

「なるほどっ!」


 ルカ族長が膝を打つ。


「大会期間が終わったら穴は全て元に戻させ、自分の得意なことで勝負するよう子供達を諭してよ。ケスは落とし穴の技術が優れていたから認められたけど、あんた達に落とし穴の才能はないって。もっと他にやることあんだろって」

「もし合格者が出たらどうしましょうかな?」

「合格者? ケスに賄賂でも渡さない限りあり得ないと思うけどなー。もし合格者が出たらあたしに紹介してよ。会ってみたい」


 ケスは元々抜け目ない子だし、今やレベルも上級冒険者並みだぞ?

 危険を察知する感覚も敏感になってるはず。

 自分の掘った穴クラスの出来ならともかく、素人の穴に落ちるとは思えない。


 サフランが言う。


「ユーラシアさんのやり方は面白いですね」

「こういうのはただ禁止したってダメ。徹底的にやらせる方が、不満が燻らないからいいんだ。でないと子供達は納得しないからね。ケスが贔屓されたと思われるんじゃ、あたしだって迷惑だわ」


 やり方にはあたしの好みがたっぷり入ってるけどな

 ルカ族長が立ち上がる。


「わしは失礼させていただきます。早速、落とし穴大会について触れを出しますぞ。カール殿、お大事に」

「……いえ、お構いなく」

「「「さようなら」」」

「バイバイぬ!」


 ピンクマンがすげえきまり悪げだ。


「で?」

「で、とは?」

「足もう治ってるじゃん。でもつまんないケガするのは、精神が疲れてる証拠だぞ?」

「む……」


 図星のようだ。

 何があった?


「サフラン、もう看病いらないから、ピンクマン連れて遊びに行ってきなよ。今、転移石碑で飛んでクー川見物するのが流行りだぞ」

「そうですねっ!」


 おーおー、わかりやすいこと。


「で?」

「で、とは?」

「だから何がピンクマンを疲れさせてんの?」


 躊躇いながらピンクマンが話し出す。


「まだ内々の話なのだが、次の新人冒険者の教育係はソールが受け持つことになっていたのだ」

「うん、チュートリアルルームで聞いたよ」

「ただソールは新政府関係の仕事でてんてこ舞いだろう? だから小生に代わってもらえないかと頼まれたのだ」


 ピンクマンは物事をよく知ってるけど、人に教えるのが得意なタイプとは思えない。

 だってボッチだもんな。

 ……あれ? 新人教育が現役冒険者に振られるのも、ソル君が忙しいのもあたしのせいか?


「わかった、皆までゆーな。あたしも手伝ってやるから」

「本当か! 助かる!」

「サフラン、あんたも手伝いなさい。それとも醸造ラボ忙しい?」

「いえ、今はもうスタッフで回せますので、時々なら大丈夫です」

「ピンクマンのケガって半分くらいあんたのせいでしょ? 責任を取りなさい」

「はい!」


 おーおー、嬉しそうに。

 どうせピンクマンと一緒で浮かれてて、落とし穴に気付かなかったに違いない。


「待て、サフランが手伝いとはどういうことだ?」

「優秀な冒険者であるあんたが新人教育に悩むのはボッチだからだぞ? サフランとパーティーを組め。コミュニケーションを取れ。ピクニックがてら、かるーく魔物退治行ってきなさい。新人に何教えてやればいいかなんてすぐ理解できるよ」

「な、なるほど」


 ハハッ、ピンクマンとピクニック行けるとわかって、サフランがガッツポーズしてるわニヤニヤ。


「先月デミアンが教育係振られて困ってたんだ。ちょうど今のピンクマンと同じ状況だったんだよね」

「理解できなくはないな、彼もソロだから」


 もっともデミアンは、天才だから凡才のことはわからねーみたいなニュアンスだったけどな。

 固有能力に恵まれ過ぎてると、そゆこともある。

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