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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第574話:襲撃だよ

「ただいまー」


 パワーカード工房から帰ってきた。


「姐御、お帰りなせえやし」

「ごめんねアトム。アルアさん相当お疲れみたいでさ。素材の換金と新しく交換可能になってるパワーカードの確認は今度だわ」

「へい、楽しみは取っておきやすぜ」


 そーしてちょうだい。

 楽しみが残ってるのもオツなものだよ。


「ところでどうだったかな?」


 逃封の札の逃走禁止効果と逃走魔法『煙玉』を同時に使用し合った時どうなるかを、うちの子達に検証してもらっていたのだ。


「『煙玉』の効果はベリーストロングね、バット……」

「逃封の札で逃走のタイミングを遅らせることはできます」

「ふーむ、参考になる結果だね」


 結論としては『煙玉』の逃走効果を無効化することはできないが、逃封の札使用で一ターンほど逃走効果の発動が遅延するということらしい。


「これ、逃封の札を二枚三枚使うとどうなるのかな?」

「理屈では、遅れた逃走タイミングにさらに効果が加算するというものではありませんので、何枚使おうと逃走タイミングをさらに遅らせることはできないかと」

「わかった。逆に言えば一ターンは逃げられないということだね」

「そうでやすぜ」

「ワンターンキルね」


 ふむう、バアルを逃がさない対策には弱いか?

 強力なスキルや魔法が使えなければ長期戦を余儀なくされるしな。

 もっともバアルが逃走スキルを必ず持つとも限らないが。


「うん、ありがとうね」

「ユー様、夕御飯はどうしましょう?」

「襲撃だよ」

「「「えっ?」」」


 うちの子達がポカンとする。

 ちょっと言葉が足りなかったか。


「右手にお肉の剣、左手にお肉の盾を持て。チュートリアルルームに突撃だ!」

「「「了解!」」」


 ハハッ、これなら通じる。

 うちの子達は優秀だ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「たのもう!」

「あっ、ユーちゃん?」

「ゆ、ユーラシアさん?」

「あれ、シスターまでいるんだ? 何してるの?」


 そう、お肉を持ってチュートリアルルームを訪れたのだ。

 サプライズで。

 でもシスター・テレサまでいるのは予想外だったぞ?


「新年でイシンバエワが暇しているだろうと思いまして」

「シスターは部下思いだなあ。男性からお誘いがないからこんなとこ来たんだろうけど」

「ぐはっ!」

「ユーちゃんこそどうしたの?」

「寂しい女どもを討ち取りに来たぞー! 浴びるほどお肉を食らえー!」

「「やったあ!」」

「ヴィルカモン!」


 皆機嫌がいいから、ヴィルも嬉しいだろ。


          ◇


「めのまえのお~にくを~かじ~っては~と~けてゆくよ~おな~うまさが~あ~ふれて~た~りな~いや~」

「おいしい! おいしい! おいしい! おいしい!」

「はいはい、お肉はたっぷりあるよーどんどんいこうかあ!」

「「イエス、マム!」」


 今日は食べきれないほどお肉を持ってきた。

 余ったやつはバエちゃんにお土産だ。

 野菜はバエちゃんとシスターテレサが提供してくれた。

 うちの子達もおいしくいただいているし、ヴィルも気分良さげだ。

 たしかなまんぞく。

 しかし?


「そっちの世界は冬じゃないの?」

「冬よ。どうして?」

「明らかに旬を外してる野菜があるんだけど?」

「温度と日照時間があれば作物はできますから……」

「なるほどっ!」


 ナイスなヒントだ。

 あたしの名前のついた自由開拓民集落の地下遺跡の温室みたいなものか。

 あれなら冬でも耕作できる。

 魔力吸い上げと火魔法使えば温度は確保できそうだから……。


「問題は日照時間か。そっちの世界では太陽の動きを制御できる魔道具とかあるの?」

「あるわけないじゃない!」


 じゃあ『光る石』みたいな魔道の光で代用してるんだな?

 自動で魔力を供給してやりゃ何とかなりそう。

 でも寒気を遮断して太陽の光を受けるガラス部屋みたいなの作るって、メッチャコストかかるよな?


「……やっぱそっちの世界でも、旬じゃない野菜は高価だったりするかな?」

「もちろんよ」

「ふーん、おゼゼ儲けのネタはどこにでも転がっているものだなあ」

「ユーラシアさんは、季節外れの作物で大儲けしようと?」

「いや、今はまだムリだね。餓死者出さないことで精一杯かな」

「餓死者?」


 シスターが驚く。


「移民が一杯来るってゆー、確実な情報があるの。入植者用の土地はあるんだけど、面積だけあったってしょうがないじゃん? 今日、その土地までの転移石碑設置できたから、正月開けたら人数かけて整地するんだ」

「冒険者じゃなくて政治家の仕事なのでは……」

「かもしれないけど、放っておけないから。あたしはドーラをいい国にするのだ」


 独立したばかりのドーラに、全土を統治する政治体制なんかとてもとても。

 帝国のドーラ統治システムを流用したってレイノスしか治まらないのだ。

 だから実は大量移民が来たって混乱するだけなんだが、上手に移民を手懐けることができれば将来のいいお客さんになり得る。

 いつやらねばならないか、今でしょ。


「む、難しいですね」

「移民として来る人だって人生賭けてるでしょ? 元の暮らしに満足してたら引っ越しなんかしないって」

「そうよねえ」

「頑張れば何とかなる、ってとこまでは状況を持っていきたい。来る人もそれだと希望があるじゃん?」


 頷くバエちゃんとシスター。


「社会が安定したら、バエちゃんやシスターもこっち来たっていいんだよ? 移民は一般的に男性が多いはずだからモテモテだぞ?」

「モテモテだぬ!」


 ヴィル今のは良かったよ。

 おっと、シスター気持ちがぐらついていますか?


「ところでチュートリアルルームは休みではないの? ギルドは今日明日が新年休みみたいなんだけど」

「一応、休みではないのよ。でも誰も来ないわ」

「用があるのはあたしくらいだもんな。いや、あたしも用があるわけではなかった」

「ただ次の新人に『地図の石板』を送るのは三日後になります」


 次の新人の選定は終わってるって言ってたな。

 年末年始の始動は避けたのか。

 まあ賢明な判断だ。


「お世話係は誰なの?」

「ソール君にお願いする予定だけど」

「あれ、ひょっとしてソル君は忙しいんじゃない? あたしもドーラに帰ってからまだ会ってないからよくわからんけど」

「えっ? でもユーちゃんほど忙しいってことはなくない?」


 あたしは好きでやってるだけだ。

 けどソル君には政治関係の面倒なところを押しつけちゃってるからな?

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