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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第573話:もう一度ぎゅっとしたろ

 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの名物、具だくさんスープをアルアさんとエルマに振る舞ってから、アルアさん家に来た。


「アルアさん、今日はわざわざありがとう」

「いいんだよ。実際に使えるところまで確認しないと、アタシも不安だからね」


 職人の感想だなあ。

 魔力の活用ってのは、今後のドーラの重要なテーマの一つだと思う。

 今んとこ硬い黒妖石以上に魔力を溜め込むのに適した媒体がないから、どーしてもアルアさんの加工技術に頼らざるを得ない。


 でも問題があるなあ。

 優れた石工技術を持った他のドワーフに渡りをつけるか、ノーマル人側でドワーフの石工技術を再現するか。

 さもなくばもっと加工しやすい代用品を見つけるか。


「美味いスープだったよ」

「骨を煮込むといいダシが出るんだよ。スープをストックしてあるの」

「そうかいそうかい」


 アルアさん眠そうだな。

 今日は朝からアウトドアで働かせちゃったから。

 

「アタシゃ疲れたから奥に引っ込むよ。アンタ達はどうする?」

「少しエルマと話したら帰るね」

「わたしもお姉さまとお話を」

「ごゆっくり」


 アルアさんが姿を消す。

 インドアの人だし、年齢が年齢だからなー。

 アルアさんこそゆっくり休んで欲しい。


「お姉さまは、いつドーラに戻られたのですか?」

「一〇日前だよ。あたし達が帝国本土にいたこと、聞いてるんだ?」

「はい。空飛ぶ軍艦に乗り込んで墜落させたところまでは、ソールさん達のパーティーが話してくれました。でもそこから脱出できたかどうかがわからない、と」


 エルマが泣きそうな顔になる。

 あたしは大丈夫だとゆーのに。

 ぎゅっとハグしてやる。


「お姉さまは空飛ぶ軍艦の破壊以降、どうしていらしたのですか?」

「ドーラの動向がわかんなかったんだ。だから山にこもって、帝国軍が来るたび撃退してた。反乱軍がいるぞードーラに構ってる場合じゃないぞーって作戦ね」

「あっ、なるほど」

「一〇日足止めしておいてくれって、パラキアスさんに頼まれてたんだよ。だから半月くらい帝国の山の中にいることは規定路線だったの」

「大変でしたね」

「いや、大変ではなかったんだよ。向こうの将校さんや兵士さん達からいろんな話聞けて面白かった」


 エンターテインメントを追求してしまった。

 追求し過ぎて一人の役人さんが犠牲になってしまった。

 大して悪いことしたとも思ってないけど、一応ごめんなさい。

 エルマが少し震えた声で言う。


「……お姉さまが無事だという話はオイゲン族長様から聞きました。三日前にお姉さまの最新の石板クエストがクリアされたということも、ギルドで話題になっておりました。でも皆が心配してたんですよ。すぐギルドにいらしてくれればよかったのに」


 ギルドも心配させてたか。

 悪いことしちゃったな。

 妹分を不安にさせてしまったことに関しては素直に反省だ。


「ごめんね。じゃあ今からギルド行こうかな」


 エルマが残念そうに言う。


「今日明日はギルドも新年休みなんです」

「お休みだったか」


 まあ元々明後日行くつもりだったからいいんだが、じゃあ明日どうしようかな?

 新しいクエスト来てたから行くか。

 名前からしてそそられない、つまんなそーなクエストだったんだよなー。


 エルフの里に依頼された魔宝玉を届けたいけど、年明けすぐは迷惑なのかな?

 エルフの新年事情がわからん。

 魔境でもいいか。

 いや、オニオンさんが新年休みだとベースキャンプ開かないかも?


「明後日ギルド行くからね」

「はい」


 ようやく笑顔になるエルマ。

 泣き笑いの顔が可愛いから、もう一度ぎゅっとしたろ。


「先ほど族長様から、『プチウォーター』のスキルスクロールを買ってきてくれと言われたのですが。お茶を淹れるのに必要だとか?」

「ああ、事情があってね……」


 ザバンで手に入れた超すごいお茶の説明をする。

 エルマにも飲ませてあげたいもんだ。


「お姉さまはお茶産業の発展も手がけていらっしゃるのですね」

「エルマはお茶飲んだことある?」

「いえ、ありません」

「でしょ? 緑の民長老さん達みたいに好きな人もいないわけじゃないんだけど、ドーラじゃまだまだ一般的な飲み物じゃないんだよね。だから帝国に売り込もうと思ってるんだ」

「帝国に?」


 エルマが目を丸くする。


「せっかく独立したんだから、ドーラをいい国にしたいじゃん? ものとおゼゼの動きを活発にしたいんだ。緑の民も例外じゃないよ。大分商売に前向きになってくれたからね。でもまだラルフ君パパとの確執が解消されてないんで、もう一工夫必要なんだけど」

「緩衝地帯のショップを再開したとは聞きました」

「本格化はこれからだけどねえ……ところで緑の民の印刷ってどうなの?」


 ついでだ。

 エルマからも情報収集しておこう。

 

「あっ、先ほどのイシュトバーンさんの画集関係のお話ですか?」

「そうそう。もう一つ、識字率を高めるための札取りゲームってのがあって、それの印刷も可能なら緑の民に任せたいんだよね。エルマ何か知らない?」

「冒険者になり、外の世界を知って初めてわかったことですけれども、絵や版画については非常に優れていると思います」

「版画? 版画か、いいね」

「はい、やはり身近に紙があるからだと思いますけど。でも読み書きできる人が少ないので、字の方はどうなんでしょう? 役付きの人達への連絡には用いられているようですが」


 やるじゃないかエルマ。

 紙の種類と版画については今度見に行こ。


「エルマは冒険者になる前から読み書きできる子だったんだよね?」

「はい。両親から教えてもらっていたので」

「緑の民は読み書きできる人の割合ってどれくらいなのかな?」

「多くはないです。五、六人に一人じゃないでしょうか」

「紙があってもそんなもんか……」


 識字率向上の道は険しいな。

 まあいい、札取りゲームで一発逆転してくれる。


「お姉さま、師匠に聞いたのですけど、エルフ独自のパワーカードがあるとか?」

「うん。今度作り方教えてもらえることになったから、付き合ってよ」

「はい、もちろん」


 『クールプレート』と『ウォームプレート』。

 ああいう日常系のカードが今後のトレンドになるのではないか?


「じゃ、あたし帰るね」

「わたしも帰ります。お姉さま、さようなら」

「うん、さよなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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