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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第571話:ドーラの夜明け

 フェイさん達黄の民が掃討戦跡地に建てた、米作りのための基地まで飛ぶ。

 実に立派だなー。

 ほんの数日で建てたって信じられんわ。


「この基地を建てた時はまだ、移民のことはほとんど考慮されていなかったが」

「それなー」


 まだあれから一ヶ月しか経ってないのにどーなってんだか。

 運命の変遷が早過ぎる。


「移民がどうなってるかわかるか?」

「今朝聞いたところだと、今月末から月一〇〇〇人を上限に受け入れだって」

「今月末? 春から来るのではないのか?」

「違うみたいだよ」


 冬に来られても食料をこっちで用意しにくいから厳しいんだよな。

 どんだけ保存食持ってくるか知らんけど。

 まー暖かくなってから来るより畑を万全にできるからいいやと、前向きに考えよう。


「フェイさん、転移石碑埋めるの、米作するところに近い方がいい?」


 米作の都合だけじゃなくて、開墾の時やおそらく移民達も使うだろうことを考えると、あんまりクー川に近いところでもよろしくないかもしれない。

 首を振るフェイさん。


「いや、それだと大雨に降られると石碑が水に浸かってしまうと思われる」

「うんうん」

「やや小高いところがよいだろう。こちらだ」


 もう場所決めてあったんだな。

 フェイさんの決めた場所なら大丈夫だろ。

 いざという時には設置し直せないことはないんだし。

 フェイさんが西の方、なだらかに盛り上がった地形を指差す。


「あそこだ」

「ああ、気持ちのよさそうなところだねえ」


 黄の民達が穴を掘っていき、アレクとクララは『スライムスキン』紐をぺたぺたと転移石碑に溶かしつけていく。

 デス爺とアルアさんが手持ち無沙汰みたいだな。


「ねえ、じっちゃん。あのスライムスキンで作る魔力取り込み用の足なんだけどさー。すごく難しいんだよ。あたしじゃサッパリ。サイナスさんでも理論まではわかんないって言ってた」

「そうかそうか」

「アレクが理解してるからって喜ばないでよ。せっかくマルーさんに教えてもらったけど、一般的には広められそうにないな」


 今のところアレクとクララしかこの技術を継承していない。


「転移装置は広まらんでもいい。生半可な知識で振り回されても却って危ないじゃろ。大きな黒妖石もそう手に入るわけじゃなし」

「いや、転移装置をあちこちに作れないのは、仕方ないかなと思う。けど魔力の利用は別だよ。例えば魔力を集めて溜めておくみたいな用途なら、小さい黒妖石を固めて焼いて塊にすれば使えるみたいなこと、マルーさんが言ってたし」

「ほう?」


 デス爺も興味を持ったか?


「地中から吸い上げて溜めた魔力をどう利用するのじゃ?」

「一番経済効果が大きそうなのは塩かな。海水を天日に当てて濃縮する装置作っとくでしょ? それに蓄えた魔力と転移術使って海水を自動で持ってくる。最後の煮詰める作業のところも魔力と火魔法を使えれば、すげー手のかかる製塩がほぼ自動でできるんじゃないかと思うんだ」


 デス爺とアルアさんが驚いた顔をする。


「なるほど、の。塩は必須であるし、急激に移民が増えれば足りなくなる可能性が高い。海水を持ってくるつもりなら、人の転移ほど注意はいらない、か」

「製塩に転移術を使うというのは、アンタが考えたのかい?」

「うん。便利でしょ?」

「呆れたやつじゃ」

「まあまあ、デスさん、手伝ってやんなよ」

「このアイデア、サイナスさんとアレク、それから黄の民のフェイさんにも話してあるんだ。製塩はもともとパワーのある黄の民にやってもらおうと思ってたから」


 実際に製塩事業を始めるとなると、海水転移以外の装置を作るのは黄の民の担当になるだろうからな。


「アレクは塩について何も言っておらなんだぞ」

「今輸送隊と識字率向上のゲームと魔力吸い取りでアレクも忙しいんだよね」

「全てお主が振った仕事であろうが!」

「まあ」


 何だかんだでアレクは優秀だからなー。

 でも嫌そうな顔してないんだよ。

 一人で図書館にこもっていた頃と違って、今はケスとハヤテがいるから。

 意見を交換しながら色々やってみるのが楽しいんじゃないかな。

 

「あ、準備できたみたい?」

「ユー姉、運んで」

「わかった。紐の方お願い」


 先ほどと同じようにあたしが転移石碑を持ち、紐部分をアレクとケスが持つ。

 穴の中央まで運び、紐を放射状に広げた。


「よし、埋めていいか?」

「フェイさんちょっと待ってくれる? ねえアレク。これってたくさん魔力吸ってる紐とあんま吸ってない紐とあるのは何でなの? 結構バラツキあるんだけど?」

「あっ、ユー姉見えるんだ? たくさん吸ってるのはどれか教えてよ」

「え? パッと見これとそれが多いかな」

「特に少ないのはどれ?」

「これとかあっちのやつとか……」


 あれ? 印や番号の書いてある紐がある。

 何かの実験だったのかな?


「ユー姉ありがとう。フェイさん、埋めてください」

「おう!」


 黄の民達が埋めている間にアレクに聞く。


「要するに作り方の違う紐があるってことなの?」

「うん。太さや折り方にバリエーションつけてみたんだ。効率の良い魔力吸収法がわかるといいでしょ?」

「へー、やるなあ」

「ユー姉の人外な視力があってこそだよ」

「ハッハッハッ、褒めても何も出ないぞー」

「……褒めてないけどね?」


 よし、掃討戦跡地側の転移石碑も設置完了だ。

 デス爺とアレクが転移石碑を見て頷いている。


「じっちゃんは転移先が見えるって話だったじゃん。さっきの転移実験必要だった?」

「む、やって見せることが必要だったのじゃ」


 あたし達は転移石碑に慣れちゃってるけど、ふつーの人にとっては怪しげな魔道の装置であることに違いない。

 口だけで説明するより、実際に見たものの方が納得しやすいってことか。


「なるほどな? じゃ、じっちゃんは緩衝地帯で皆に使い方の説明してあげてよ。アレクは魔力を安定して吸えてるかチェックして。こっちはあたしとクララで見とくから」

「うむ、了解じゃ」「わかったよ」


 ドーラ独立後の初めての年明け。

 その記念すべき最初の日に転移石碑が設置されたというのは象徴的ではある。

 ドーラの夜明けだ。

 格好つけ過ぎかな。


「ではユーラシアよ。実験的に何人かこちらへ来させるから、説明してやってくれ」

「うん、じゃーねー」


 うちの子達とケス、ハヤテ以外の面々が転移装置で帰っていく。

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