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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第568話:謎の画集推し

「満腹だー満足だー」


 結局ぜひにとゆーことで、夕御飯も緑の民の村で御馳走になってしまった。

 甘みの強い柑橘がおいしかったです。

 緑の民は柑橘作ってるとは以前に聞いてたけど、いろんな種類があるみたい。

 ケスも小遣い稼ぎができて大喜びで帰っていったし、あたし達も帰途に就く。


「やっぱり時間がちょっと足りなかった気がする」


 午前中から水出ししていた超すごいお茶のことだ。

 夕食後にいただいたのだが、旨みがもう一つのような。


「うん、ただ苦味はより少ないから、好みのような気もするな。サッパリしていてオレはよかったと思うよ」

「そーかー」


 まあ超美味いことには変わりない。

 帝国に売る時には注意書きしといた方が親切か。


「サイナスさんアレク、今日は御苦労様。これあげる」


 サイナスさんとアレクに墨珠を渡しておく。


「ケスとハヤテにも渡しておいてよ」

「魔宝玉か。これって高いんだろう?」

「売れば三〇〇~四〇〇ゴールドってとこかな」

「いいのかい?」

「下僕としてこき使ったからいいよ」

「……そう言われると高くない気がする」


 一頻りの笑いの後、アレクが言う。


「ユー姉はあれだけ働いて実入りがないじゃないか」

「いいんだよ。かなーり貸しを押しつけたったから。これで多少はムリが利くし」

「ユーラシアはお金だおゼゼだ言う割に、人間関係を大事にするよな」

「おゼゼは必要な分だけあればいいけど、人は簡単じゃないからね」


 人を動かせるネタは多く持っとくべきだと思う。

 あたし一人でできることなんて、たかが知れているのだ。

 あたしの美しくも可憐な身体は一つしかないから。

 皆あたしのために働け。


「ハハハ、何だかんだでユーラシアは大金持ちだからな」

「ところが近い内に文無しになるんだよなー」

「「「「「えっ?」」」」」


 うちの子達を含めた全員が素っ頓狂な声を出す。


「ユー姉、何事?」

「おゼゼでしか解決できないことはあるんだよねえ。仕方のないことだけれども」


 サイナスさんもアレクも何かを察したようだ。

 まああたし達はいつでも魔宝玉を狩れるし、レア素材のストックもかなりある。

 おゼゼに困ることはないのだ。

 ならば経済を回した方が皆のため。


「ユーラシアは緑の民の交易参加についてはどう考えている?」

「考えるまでもないよ。ここまで来たら時間の問題だわ。要するに緑の民族長家とヨハンさんがどう和解するかってだけじゃん」

「どうせユー姉は、エンターテインメント指数が最大になるにはどうしたらいいかって考えてるんだろうけど」


 さすがアレク。

 あたしのお茶目な性格をよくわかってる。


「姐御はタイミングを見てるんでやすかい?」

「いや、様子見してたのはその通りなんだけど、もう今はどうにでもなるじゃん?」

「早く決着つければいいじゃないですか」

「せっかくここまで待ったんだから、メッチャ愉快なフィニッシュを期待したくなるでしょ」


 おいこらダンテ。

 首竦めてふーってするな。


「どうしたら超絶面白くなるかなあ?」

「例えばどんなのを考えてるの?」

「魔境で遭難した長老ズをヨハンさんの息子の冒険者が救い出し、涙の和解なんてドラマチックだと思うけど」

「……そういう感動的なのは、『精霊使いユーラシアのサーガ』用に取っといた方がいいんじゃ?」

「一理あるね」


 サイナスさんが笑う。


「何の前触れもなく魔境が出てくるところは、いかにもユーラシアっぽいなあ」

「展開次第だけどね」


 どう展開させたら魔境が絡むかなあ?


「イシュトバーンさんの画集についてだけど」

「おっ、えらく唐突に話題が変わったね。アレクも男の子だったか。興味ある?」

「いや、もし新聞が売り切れちゃうような絵の画集が五〇ゴールドで発売されたら、確かに売れるだろうなと思ったから」

「あんた邪道って言ってたじゃないか」

「出さないのかい?」


 何だよ、サイナスさんまで。


「出さないよ。イシュトバーンさんに頼みに行ったら、いい女をモデルとして紹介しろって言うに決まってるもん」


 さすがにモデルになりそーな皆さんに迷惑はかけられない。

 ……でも実際に企画を進めることになったら、少なくとも一〇人はモデルが必要だな。

 おっぱいさんが参加してくれるなら、成功したも同然だが。


「イシュトバーン氏が断るセンはないのかい?」

「ないなー。絶対にノリノリだなー」

「アイシンク、ボスのサジェスチョンは断らないね」

「じゃあモデルの調達次第じゃないか。君、説得は得意だろ?」

「ええ? あたしが乗り気になれないんだけど」


 とゆーか、何でアレクとサイナスさんがけしかけてくるんだよ。

 あんたらとクララはあたしが眠くなっちゃうよーな本を読んでりゃいいわ。


「まーでも緑の民の印刷技術がどれほどかにもよるから、今進める話じゃないよ。販売ルートも未知数だし」


 ヨハンさんルートが使えなきゃ、ジンパパのヘリオスさんに売ってもらう手はある。

 けど、ヘリオスさんとこで印刷したんじゃないものを扱ってくれるかわかんないしな?


「まず正攻法でいこうよ。札取りゲームをヒットさせて、識字率上げるのが先。基本でしょ?」


 アレクとサイナスさんが顔を見合わせる。


「ユー姉が正攻法なんて言葉を知っているとは」

「うん、驚くべき違和感だな」

「何だとお!」


 いや、あたしだって意表を突く方が好きだけれども。


 ウダウダ話してる内に灰の民の村が見えてきた。

 今日で今年も終わりだ。

 何て色々なことがあった一年だろう。


「何て色々なことがあった一年だろう、って考えるのはユー姉らしくないと思うよ」

「乙女心がわからないくせに乙女の心を読むな。えっちなやつめ」


 今日はヴィルを飛ばさなくてもいいだろう。

 サイナスさんも疲れてるだろうし。


「明日は昼頃になるのかい?」

「いや、どーだろ? 他色の民にとっては転移石碑設置なんて、結構なイベントだと思うんだよね。期待されちゃってるはずだから、早めに行こうとは思ってる」


 これはイベンターの心得かな?

 それともエンターテイナーかな?


「ただしお肉のストックがないから、朝の内に狩っておかないといけないの」

「え? 新年早々に殺生なのかい?」

「変なケチつけると、灰の村にお肉回さないぞ?」

「ぜひ、よろしくお願いする」


 アハハと今年の笑い納めになった。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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