第564話:紙飛行機、曇り空割って
「精霊使い殿、今日も楽しく過ごせましたぞ」
「いやいや、あたし達も楽しかったよ」
「サイナス族長、今後ともよしなに」
「こちらこそよろしくお願い致します」
今日の会談は終了。
オイゲンさんも長老ズも上機嫌だし、あたし達もお昼御飯御馳走になって万々歳だ。
チラッと話題を振ってみるか。
「緑の民もショップ出したみたいだねえ。来る時に見たよ」
「今日からですぞ? 一部の民から出店させてくれと強い要望がありましてな」
長老ズも頷いている。
……ふむ、どれくらい売れてるかとゆースケベ心が見える。
仕掛け時だな。
「ショップがどんな塩梅か、皆で見に行かない?」
「面白い趣向ですな」
「売れておるかのう」
皆ワクテカしてるけど、どーせ売れてないぞ?
カラーズ緩衝地帯に向けて出発。
◇
「こんにちはー。どう?」
「サッパリだ」
緩衝地帯の緑の民のショップに着いた。
朝見た時と商品の量が全然変わってない。
店員からは焦りと疲労感を感じる。
まー悪いけど予想通りだ。
商売は甘いもんじゃないわ。
「紙は最初に黒の民が少し買っていったが、それだけだ」
「蝋燭は一本も売れない」
「商売の難しさがわかったかな? 品質のいいものなら売れるってわけでもないんだぞ?」
「痛いほどわかったけど、痛過ぎる」
あれ、メンタル弱いな。
「精霊使い殿、何とかなりませんかな?」
オイゲンさんもソワソワしている。
ここで売れないとなると緑の民のやる気もなくなり、長老ズの態度も急変しかねないってことか。
しょうがないな、今日だけだぞ?
「はい、ここにいるケスに、紙を売るアイデアがあるそうでーす」
「二〇〇ゴールドだ!」
「二〇〇ゴールドだって。そのアイデア買う?」
顔を見合すショップの店員。
「そりゃあ、紙が売れるようになるなら買いたいが……」
「よし、あたしが保証人になるよ。売れないようならその二〇〇ゴールドはあたしが払おう。どう?」
「精霊使いの保証つきかよ。もちろんオーケーだ」
「反対する理由がねえじゃねえか」
「ケス出番だよ!」
「任せてくれ!」
皆が不安そうな顔するけど、あたしは楽しみだなあ。
ケスは目端が利く子だ。
どんなアイデアを出してくるんだろ?
何だ、紙を折ってる?
折って、畳んで、開いて?
あっ、飛んだ!
ついーっと曇天を行く様子を皆が見てるぞ!
「紙飛行機。おいらが小さい頃考えた」
ははあ、白の民ルカ族長が手持ちの紙を飛行機に変えられて、ケスを叱る様が目に浮かぶようだ。
そのイタズラが今、日の目を見るわけだが。
「よーし、ケスよくやった! この紙一枚いくらで売ってるの?」
「三枚で一ゴールドだ」
「ケス、ショップの店員に折り方教えてあげて! 紙飛行機一つ二ゴールドで売る!」
「な、何倍の値段?」
六倍だぞ?
商売やるなら計算もしっかり覚えてね。
あたしは声を張り上げる。
「はーい、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。カラーズの新名物、紙飛行機だよ! あらあら不思議摩訶不思議、紙が空を飛び宙を舞うよ!」
アレクと実演しながら人を集める。
「お母ちゃん、あれ欲しい」
「でも、高いかも……」
「今日は特別価格、二ゴールドだよ! さあ、買った買った!」
「たった二ゴールド?」
「面白そうだな」
「二ゴールドなら、まあ……」
「おー、飛ぶ飛ぶ!」
あっという間に行列になる。
「ほらほら、オイゲンさんもサイナスさんもハヤテも長老さん達も! 売れる時売らないと機会を逸するよ。折り方教えてもらってどんどん折って!」
買ったお客さんが飛ばし始め、目新しさがさらに客を呼ぶ。
こうなると実演はいらない。
アレクも折り組に回す。
「さーいらっしゃいいらっしゃい! カラーズの新名物、紙飛行機だよ! 紙飛行機用の紙も別売りしているよ! こっちは三枚一ゴールドだ!」
列はさらに長くなり、紙も単品で売れ始める。
サイナスさんが泣言を言う。
「おいユーラシア! そろそろ勘弁してくれ!」
「あっ、サイナスさんそれはフリにしかならない!」
アレクはよくわかってるなー。
「カラーズの新名物紙飛行機だよ。今日だけビックリ二ゴールド! 今日だけビックリ二ゴールド! ここへ来てない人にも教えてあげて呼んできて!」
よーし、列の後ろがどこかわかんなくなった。
こんなもんだろ。
「蝋燭の係、一人ついて来て。聖火教徒に売りに行くよ!」
「あ? おう、わかった!」
「抜けるのか? ズルいぞ!」
ズルくない!
こっちだって商売だわ。
あんたらは列が捌けるまで紙飛行機売ってろ。
「行こうか。あっ、ちょっと待った。こっち来て!」
先に黄のショップへ行く。
「おーい、フェイさーん!」
黄の民族長代理のモヒカンの大男に声をかける。
「おお、ユーラシアか。何だ?」
「これ、この前言ってたドーラの識字率上げるゲームの試作品なんだ」
「……なるほど、絵で読みを判断させて、字形を一致させるということか」
「これを木で作って欲しいの。印刷はどこかに頼むから。いくらでできるかな?」
フェイさんが少し考える。
「……印刷を綺麗に出そうと思うと目の細かい木がいいか。では試作で一個作るなら一二〇ゴールド。五〇〇個注文ならば一個あたり一二ゴールドといったところだな。数が増えれば応相談だ」
フェイさんは職人を介さずとも自分で数字が出てくる。
だから話がとっても早くまとまるのだ。
「じゃ、まず試作を一つお願いする。いつできるかな?」
「待て、絵札はこの大きさがいるとしても、字札はもう少し小さくてもいいのではないか? 間伐材を利用できるならば、量産した時もう二ゴールド安くできるぞ」
「間伐材?」
間引きや枝落としで出た材だそーな。
普通はせいぜい薪にするくらいしか用途がない。
柱にするような材木よりうんと安いからということらしい。
そーゆーもんを利用できれば安く作れるな。
間伐材覚えとこ。
「両方のサイズで試作品作ってよ。二四〇ゴールドね」
「二五〇ゴールド出せば、箱も合わせて作ってやろう」
「商売が上手いなー。じゃ、二五〇ゴールド」
「正月に入ってしまうな。四日後の会議の際に渡そう」
よし、この件もオーケーと。
「インウェンいるかな? 輸送隊関係のことで用があるんだ」
「いるぞ。おい、インウェン! 精霊使いがお呼びだ」
蝋燭男に輸送隊の副隊長だと説明しておく。
緑の民は輸送隊に縁がないからな。




