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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第560話:不穏な次期皇帝争い

 メキスさんが続ける。


「オレが情報網を作り上げるのに四年かかった。残してきた部下達だけではとても組織が回らん。ドミティウス殿下は今後、知り得る情報が激減することに困るだろうよ」

「つまり、メキスさん達の報告は第二皇子が知る立場にあったんだ?」

「そうだ。命令系統としての上位者は軍にあったが、情報を扱う特殊性から、報告先は主席執政官たるドミティウス皇子殿下だった」

「ははーん?」

「おそらく情報収集組織が再びまともに機能するまでに陛下は亡くなられる。情報の優位性を失ったドミティウス殿下はアドバンテージがなくなり、カル帝国は未曽有の後継者争いとなる可能性が高い」


 状況としてはあたし好みなんだが、帝国の混乱でドーラが迷惑するのは御免こうむりたい。

 リリーは未曽有の後継者争いまで見越してドーラに来たのか?

 まさかな。


「皇位継承権一位二位の第一皇子第三皇子はどうなの?」

「帯に短したすきに長しだな。両殿下のいいところを足してさらに盛ってやればまあまあかもしれない」

「全然ダメじゃん。なら第二皇子が皇帝になると?」

「悪魔バアル」


 これは驚きだ。

 メキスさんの調査は悪魔バアルまで辿り着いていたのか。


「君は知ってるかな?」

「知ってる。戦争起こして悪感情をまとめて味わおうとする、質の悪い高位魔族」

「今回の帝国とドーラの争いの裏にやつがいたことも?」

「リモネスさんとドーラの聖火教大祭司に聞いたよ」

「なるほど、聖火教ルートの情報か」


 深く頷く。


「メキスさんこそどこで知ったの? まともには知り得ないことだと思うんだけど?」

「見たんだ。ドミティウス殿下はバアルに魅入られている」


 何じゃとて!


「……メキスさん、固有能力持ちだよね? それで知ったってことかな?」

「わかるか。さすがだな。オレは『隠密』の固有能力持ちなんだ」


 確か気配を消せるとかいうやつ。

 なるほど、だから潜入工作や情報収集担当なのか。


「二年近く前になるか、殿下のところに報告に行った際、妙な気配を感じたことがあった。バアルに気付いたのはそれが最初だな。注意して探っていると、度々殿下にバアルが接近していることがわかった」


 帝国の実力者である第二皇子を悪魔バアルが唆すことによって、帝国がドーラに戦争を仕掛ける構図が生まれたのか。

 しかし戦争まで至らず兵を引いたということは、第二皇子がバアルに操られているわけではない?


「独力で調べたんだ? メキスさんはやるなー」

「しかしドーラに居を移した身とあってはどうにもならん」

「どうにかしようと思っちゃダメだよ。バアルってうちのヴィルがすげえ嫌ってる悪魔なんだけど、負けたことないはずだって注意してくるの。各種属性に強い耐性持ってるからダメージ与えるのすら一苦労だし、こっちの魔法やバトルスキルを発動させないようにするスキルだか能力だかを持ってるって。聖属性の武器にはさすがに弱いけど、そんなのがあるところには近付かないってさ」

「よく調べたな」


 メキスさんが驚いている。


「大規模な戦争になるはずだったのを、飛空艇落として御破算にしたのあたしじゃん? いずれあたしの前に現れるだろうって話なんだ」

「!」

「まあでも、バアルについてはあたしの仕事だから任せといてよ。どうにかするから」

「どうにかって……まあ君のレベルで情報があって言ってるなら」

「バアルのことより、次代の皇帝候補について教えてよ。バアルさえいなくなれば第二皇子がいいのかな? メキスさんどう思う?」

「能力的には。しかし酷薄な性格も悪魔に魅入られやすい性質も変わるまい。危うさを感じるな。ドーラにとっても都合のいい皇帝じゃないぞ?」

「仲良くウィンウィンの関係を築ける人がいいんだけどなあ。とするとメキスさんの推しは誰?」

「年齢性別皇位継承順位を無視するならリリー皇女だ」

「マジすか?」


 評価高いなリリー。


「単純にステータス値が高いし国民の人気がある。周りの意見に耳を傾けるだけの度量もある。おまけに複数の固有能力持ちと聞いている。これ以上の条件を持つ皇位継承権保持者などいない」

「リリーが『冷静』持ちだって聞いた時は耳を疑ったなー。でも従者の黒服さんが残念ながら事実です、紛うことなき真実ですって断言したんだよ」

「ハハッ。でもリリー皇女はサッパリした性格で、怒りが持続することはないぞ」

「うんうん、確かに」


 メキスさんみたいな判断力確かな人が、リリーが皇帝に向いてるって考えるくらいなんだな。

 リリーすげえ。


「もうちょっと現実味の高い、皇位継承順位の高い人だと?」

「皇位継承順位が三位四位である、リリー皇女の二人の同母兄は、まだ若いが快活で優秀だ。それからあまり注目されていないが、第四皇子は向いていると思う」

「どんな人?」

「やはり側室の子だ。ただしドミティウス皇子とは母が別。次席執政官として確かな手腕を発揮している」

「わかった、ありがとう」

「順当ならば皇位継承権一位のガレリウス皇子が次の皇帝だぞ?」

「まあねえ」


 第一皇子は健康面に不安があると聞いた。

 どうやったってあたしが皇室の事情に首突っ込めるわけじゃないから、いい人が次の皇帝だといいなあと思うだけだが。

 誰が次の皇帝でも対応できるように、情報は集めとかないとな。

 本来パラキアスさんの仕事だけど、あたしにしか得られない情報もあるだろうから。


「ところで君は何しに来たんだ?」

「これあげるから、お金に困ったら使って」

「魔宝玉か。こんなに?」


 メキスさんが目を丸くする。


「ごめんねえ、実力にそぐわない待遇で。村長デス爺も寝るとこと食べるものくらいは確保するだろうけど、お金はないんだよ。つーかドーラ自体がビンボーでさ。いずれ何とかするからね」


「ハハッ、了解だ。しかしこういうのんびりした生活もいいもんだ。部下達も生き生きしているよ」


 そう言ってもらえるのは救われるが。


「今日の話はすごく参考になったよ。メキスさんはどうして核心に迫るようなことまで教えてくれたのかな?」

「君は手に入れた情報を活用できるだけの行動力があると見た。おまけにオレ達を信用して、オープンに話してくれたじゃないか」

「期待に沿うよう頑張るよ。あたしは褒められると伸びる子だからね」


 笑い合う。

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