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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第557話:魔宝玉とクレソン

 ベースキャンプを出てすぐアトムが聞いてくる。


「姐御、今日はどうしやす?」

「北辺の人形系レアパラダイスまで飛ぶ練習しよう。衝突事故起こさないように、少し間隔広めに取ってね。もし飛行魔物に絡まれたらスピード上げて振り切って」

「「「了解!」」」


 せっかく飛行用パワーカード『遊歩』を手に入れたのだ。

 緊張感のある場面での練習も必要だろ。


「鳳凰双眸珠は一個手に入れればいいじゃん? それよりも普通に売買できるクラスの魔宝玉獲得を目的にするよ。最後にクレソン取って帰ろう」

「クレソン? どこかに植えるんでやすか?」

「あれは水さえあればいくらでも増える食物として有用だから、あちこちに移植したい。今日の分は、塔の村とあたしの名前のついた自由開拓民集落だね」

「特にユー様の名の集落は、洞窟コウモリの温室から排出される水温の高い水があります。かなり繁殖させることができると思いますよ」

「方針決定。じゃ、行くよ」

「「「了解!」」」


 各々が『遊歩』を起動し、北へ飛ぶ。


「気分がいいなあ。あ、ワイバーンだ」


 魔境に飛ぶ魔物は多いけど、ワイバーンの飛行スピードが最も速い。

 しかしレベルカンストしてるあたし達のスピードはずっと上だ。


「散開して躱して!」

「「「了解!」」」


 まあワイバーンもムリして追ってこない。

 そりゃドラゴン帯まで来るわけないわな。

 再び集合したうちの子達に指示を出す。


「うん、問題ないね。このまま人形系パラダイスへ」

「「「了解!」」」


 びゅーんと北へ。

 自由に空を飛ぶのは爽快だなあ。

 目的地に降り立つ。


「ヤッホー、エルドラドだ!」

「ついさっきパラダイスって言ってませんでしたか?」

「我が青春のアルカディアだ!」

「何でもいいでやすが」

「投げやりだなー。あんた達は各種経験値君に対するリスペクトが足りないよ」

「アイシンク、ボスのリスペクトがイチバン足りてないね」

「ユートピアはさておき、ブロークンドールがいるよー。カード編成戻してね」

「「「了解!」」」


 レッツファイッ!


          ◇


「かなり魔宝玉を得たと思います。午後はどうしますか?」


 お弁当を食べていた時の会話だ。


「もう少し狩ってく。デス爺とアルアさんに転送石碑のお礼しなきゃいけないし、メキスさんとこにも活動費が必要だからね」


 メキスさん以下の投降兵二五名を絶対に離反させてはならない。

 が、塔の村にはおゼゼがないからな。

 不満を持たれないよう、少々手を貸してやろうじゃないか。

 あたしの愛するドーラのためだから。


「魔宝玉よりゴールドがいいんじゃないでやすか?」

「アイシンクソー、トゥー」

「マルーさんからもらったお金のこと? あれはあれで使い道があるんだよ」


 まったくおゼゼはいくらあっても足りなくなるもんだ。


「魔宝玉は換金されて集められ輸出される。あるいはエルフや獣人との交易に使えるかもしれない。まあどこに流れても損にはなんないよ」

「そうですねえ」


 納得してもらえたようだ。


「さて、もうひと頑張りするよ!」

「「「了解!」」」


          ◇


「ただいまー」

「お帰りなさいませ」


 再び『遊歩』を使い、ベースキャンプまで戻ってきた。

 うん、『遊歩』にも大分慣れてきたね。


「お手持ちの草は何ですか?」

「これは東の湿地に生えてるクレソンだよ。魔境のやつは辛みが少なくて食べやすいの。冬でも繁殖するっていう特徴があるんだ」

「ははあ……ひょっとして移民の食料対策ですか?」

「重要だよね。ギルドでも移民についての話は出てるのかな?」

「いえ、ワタクシの想像ですけれども」


 オニオンさん、やるなあ。


「来年一年間で一万人以上の移民が来るそーな」

「い、一万人?」

「放っとくと餓死者出ちゃいそうなんだよ」

「治安の大幅な悪化も考えられますねえ。どうなることやら」

「マジで困るわ。今から動いとかないと間に合わなくなっちゃう。掃討戦獲得地のクー川近くのところに、カラーズから飛べる転移石碑設置してさ。人員送り込めるようにしてるんだ。年明けくらいから本格的に開墾始められると思う」

「年明け早々からですか」


 感心するオニオンさん。


「もー来年蒔く用の種を今から増やそうったってムリだからさ。とにかく来年一杯はイモと魚とクレソンで何とかなんないかなーって考えてるんだ」

「ユーラシアさん、帰国してからギルドって足運びましたか?」

「ギルド? 嫌な予感がするから行ってない」

 

 オニオンさんも微妙な顔してるしな?


「パラキアス氏とオルムス副市長から、ユーラシアさんが帰ったら連絡をくれという要請がありまして。おそらくギルドへ行くとポロックさんかサクラさんからそう伝えられると思います」

「面倒くさそうな仕事を押しつけられると動けなくなっちゃうからなー。ソル君に任せちゃう」

「ハハハ。ソールさんは大変頑張ってらしたですよ。ドーラの今後の方針を決める十人会議に参加したりして」

「へー、十人会議って名前がついてるんだ。格好いいなあ」


 おそらくパワーナインの九人とソル君で一〇人ということだろう。

 しっかり働いてちょうだい。


「こっち帰ってきてからミスティさんとマルーさんとデス爺には会ったけど、あんまりドーラの将来みたいなことは言ってなかったぞ。魔境引きこもりのオニオンさんが一番教えてくれるってどういうことよ?」

「魔境引きこもり……いや、ワタクシも新聞の受け売りですけれども」

「ふーん、新聞って役に立つんだなあ。あっ、オニオンさんに面白いこと教えてあげる。レイノスの新聞の紙は、サトウキビから砂糖絞った残りのカスから作ってるんだって」

「ほう、ムダがないですね」


 感心しているね?


「カラーズでも紙を作ってるからレイノスに売り込めないかと思ったけど、安い紙はとてもムリだなー。さすがに原料費タダには敵わない」

「ユーラシアさんは本当にいろんなことやってますねえ」

「楽しいんだよ。オニオンさんにもクレソンあげるね。水辺に植えとくとかなり増えるよ」

「ありがとうございます。ちょうど近くに溜池がありますので、植えといてみますよ」


 あちこちでクレソン増えるといいな。


「あたしギルド行くの四日後だな。多分だけど」

「職員には伝えておきますね」

「じゃあオニオンさん、さよなら!」

「さようなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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