第551話:ゾワッとした感じ
――――――――――一二〇日目。
フイィィーンシュパパパッ。
朝食後、超すごい茶の温めたものと冷たいものを飲み比べてから、エルフの里に来た。
ちなみに冷たいものはバッチリだが、温めると成分が飛んでしまうようだ。
やはり熱しちゃダメだな。
今のところ判明している事実としては、ガラスの器で魔法の水による水出しが良いということ。
テラワロスが既に門のところまで来てるね。
やる気があって感心感心。
門番さんと話をしている。
「こんにちはー」
「お客人、いらっしゃい。昨日は大層な活躍だったらしいじゃないか」
「あれくらいは美少女精霊使いとしてはふつーだよ」
「でもテラワロスはもう飛行魔法を勘弁してほしいそうだぜ?」
「ダメだ許さん!」
「だ、そうだ」
「……」
死んだ目をしたテラワロスを引っ掴んで、びゅーんと北西へ。
◇
「はあ、大分気分が良くなりました」
「よかったね。あたしも嬉しいよ」
何だテラワロス、その顔は。
あたしはどこぞの残虐精霊とは違うわ。
あんたを虐めたいわけではないわ。
まあテラワロスもクララに『キュア』をかけてもらったら症状が改善したようだ。
『キュア』は基本八状態異常を解除する治癒魔法だと聞いたが、案外いろんなものに効く気がする。
クララが精霊だからか、それともレベルが高いせいだろうか?
「今日中にクエスト終わらせるよ。高速『フライ』はあと一回だから頑張れ」
「は、はい」
煮え切らないね。
覚悟が足りんのかな?
「戦闘不能にして連れ帰って、あとで蘇生魔法かけてもいいけどどうする?」
「『フライ』と『キュア』でお願いします」
「即答だね。蘇生魔法よりも消費マジックポイントが低いから当然か」
「マジックポイントの問題じゃないですけど!」
よしよし、元気出てきたじゃないか。
「いざ行かん、謎の谷へ!」
ユーラシア隊およびおよび気力を振り絞ろうとしているタレ目エルフ出撃。
◇
「ところでテラワロ君はどうしてこの辺に詳しいの?」
昨日出撃時のテラワロスのレベルは一〇を少し超えたくらいだった。
このエリアの魔物と戦うには、レベル二〇くらい必要だと思うのだが。
狩りの一員になってたとしても、足手まといになっちゃうんじゃないか?
「高レベルのパーティーについて行ってですね、研修を積むという制度があるのです」
「なるほどなー」
あたしの得意技パワーレベリングみたいなもんだな。
後進を育てようとする考え方は必要だから。
「アイシンク、エルフはフォレストで十分暮らせるね。ワザワザ遠征してバトルするのホワイ?」
「森では手に入らないアイテムを得るのはもちろんなんですけれども、主たる目的は戦闘訓練ですね」
「仮想敵はどいつなんでえ?」
「伝統的にはドワーフです。現在さほど仲が悪いわけではないんですけれども」
ふーん、お肉を得るためとゆーことが魔物を倒す第一目的になっているうちのパーティーとは違う。
魔物じゃなくて、他種族と戦うこともあるからということか。
殺伐とした事情だな。
あたしは他所の種族と仲良くしたい。
「あ、踊る人形二匹だ。ここで複数出るのは初めてだな。谷が近いから?」
「どうでしょうかね?」
テラワロスも懐疑的だが。
薙ぎ払い!
よし、両方逃げなかったぞ。
墨珠一個黄珠二個ゲット。
クララが聞く。
「このあたりには森エルフ以外にどういった種族が住んでいるのでしょうか?」
「うちのクララはコケシの親友なんだ。気をつけたほうがいいぞ」
「……えっ?」
「冗談だとゆーのに。コケシの親友ってのは本当だけど、クララは穏やかな性格だから大丈夫」
ホッとするテラワロス。
コケシにこっぴどくやられたのは本当っぽいニヤニヤ。
「ドワーフ以外だと洞窟エルフと呼ばれている穴居族、有角族、獣人、赤眼族ですかね。交渉があるという意味では北の吸血族、海の魚人が含まれますか」
赤眼族!
クララと素早く視線を交わす。
「あたしの読んだ本には、赤眼族は他種族と馴れ合わないって書いてあったわ。実際もそうなの?」
「こっちからは近付かないです。逆に向こうから出てくることもありません」
「へー。野蛮なん?」
「どうなんですかね? よくわからないです。閉鎖的なだけなのかもしれませんし」
バエちゃんやシスター・テレサを見てると、閉鎖的って感じはしないしなあ。
やはりバエちゃんとこの世界の人に直接関係してることはなさそう。
そこから追放された一族という可能性はありそうだけど。
「……一ヶ月ほど前ですか。大規模な山火事があったんですよ」
「火事はヤバいよなー」
「赤眼族の住んでる一帯だったんじゃないかって話なんです。詳しいことは不明ですが」
「本当に火事なら大変だぞ? 今冬だから食べるものなくなっちゃう。可哀そうだねえ」
気にはなるが、今のところは何とも。
「御注意ください。この辺から近寄るなと言われている谷になります」
うちの子達に聞く。
「何か気付いたことある?」
「植生から、毒が充満しているなどということはなさそうです」
「石の組成が変ですぜ。変わった素材が落ちてるかもしれねえ」
「マジックパワー濃度が若干ハイね」
なるほど、意見を総合すると……。
「うん、危険はなさそう」
「どうしてそうなるんですか! メチャメチャ強い魔物がいるかもしれないじゃないですか!」
「だってあたし達ドーラ最強のパーティーだもん」
少々強い魔物はいるかもしれない。
でもこれくらいの魔力濃度じゃ、魔境中央部以上の魔物が生息できるなんてとても考えられないし。
「さあ、行こうか。地形と足元は注意ね」
前へ進む。
急峻な谷になっている地形は上から何か落ちてくるのが怖いので、クララには上方を注意してもらって、いざという時に『フライ』で逃げ出せる用意はさせておく。
アトムとダンテが採取係だ。
少々薬草は見逃しちゃうだろうけど仕方ない。
「ギャルルカンね」
「どーもギャルルカンの色味は好きじゃない」
ピンク地に黒のぶち模様のギャルルカンは毒キノコを連想させる。
食べたら食中毒起こしそう。
食べないけど。
「……広がって囲んで。そーすりゃ逃げられない」
「「「了解!」」」
よし、一撃。
レアの藍珠は落としていかなかったが、墨珠をゲット。
この谷の地形を生かせば逃がさないで倒せるな。
……何だ?
ゾワッとした感じがする。




