第544話:日常系パワーカード
目を引くパワーカードがあるなあ。
『攻撃の友』は地味だがいいカード。
上昇するパラメーターの種類は『鷹の目』と同じだけど、攻撃力が大きく上がる分普段使いしやすいと思う。
『森の番人』は『ボトムアッパー』の機能限定強化版だ。
森にいるとパワーアップとか、いかにもエルフっぽい。
『ウインドエッセンス』は風魔法の使い手の多いエルフらしいカード。
付属スキルの『大木斬り』は、『ウインドカッター』の強化版みたいなカマイタチ系の魔法で、文字通り木を切るのによく用いられているんだそう。
そして問題作。
温度が下がる? 温度が上がる?
「『クールプレート』と『ウォームプレート』って何?」
「おお、お客人、いいところに目をつけたね。うちの売れ筋商品だぜ」
「戦闘には関係ないんだよね?」
「関係ないね。夏でも冬でも快適に、がコンセプトだ」
「へー、面白い発想のパワーカードだね。あたしも欲しいな」
つまり身に着けることで身体を冷やしたり温めたりする、日常系パワーカードということか。
メッチャ賢いな。
欲しいけど支払いどうしよう?
エルフはゴールド使わないって言うし、あたしも今低級魔宝玉持ってないしな?
高級魔宝玉で支払うと問題大きくなりそうだし……。
テラワロスが提案する。
「クエストの報酬を決めてなかったでしょう? 『クールプレート』と『ウォームプレート』を四枚ずつでいかがです?」
「よおし、乗った!」
実に面白い考え方のカードでいいな。
誰にでも使えるし。
日常品と考えると何だかんだでいいお値段するから、誰にでも使えるものじゃないけど、需要はありそう。
「ちなみにこの『クールプレート』と『ウォームプレート』、例えば魔法の弓とかと効果干渉しないの?」
「一般武器の効果とは干渉しない、と言いたいところだが、世の中特殊なマジックアイテムもあるだろうからな。絶対に効果が干渉しないとは言い切れないぜ」
ふむふむ、了解。
ふつーのパワーカードと同じ注意してりゃいい。
お土産にもよさそう。
「わかった、ありがとう! じゃ、テラワロ君、明日の午後また来るから」
「はい、お待ちしてます」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「サイナスさん、こんばんはー」
夕食の時間をうちの子達と楽しんだあと、お馴染みのヴィル通信だ。
『ああ、こんばんは』
「昨日話したすんごいおいしいお茶ね、すんごくおいしくなった」
『……全然変わってないように思えるんだが?』
「気のせいだよ」
『おいしいランクの違いが理解できない』
口で言ったところでわからんかもしれんけど。
淹れ方を説明するホニャララ。
「……ってわけでマジでふおおおおおーって味だった。今度サイナスさんにも飲ませてあげるね」
『おいしいものを食べ慣れてるユーラシアがそう言うくらいだと、期待できるなあ』
「期待しててよ。出し殻でもう一回出してみたけど、普通のお茶レベルだったな。あの幸せを感じさせる成分は初出しじゃないとダメだった」
『水に溶けやすい成分のようだな』
そーゆーことかも。
「お茶にしたあと、冷たくしたり温めたりしてもおいしいのか、検証しようと思ってるんだ」
『繊細な茶葉のようだしな。売る時は詳しい説明が必要だろう』
「でも魔法で出した水じゃないと最高の美味さを味わえないんじゃ、幅広く売るわけに行かないなー」
『幅広く売らなくたっていいじゃないか。大金持ち用にぼったくってやればいい』
「え?」
何ですと?
『君、輸出品として考えてるって言ってたろう? 帝国貴族用なら、淹れ方が難しいと逆にステータスだ』
「おおう、そのセンで行こう。これからぼったくってよさそうな品は、サイナスさんに相談する。あたしのやり方があくどいって言われた時は、サイナスさん直伝だって宣伝しとくよ」
『おい、やめろ』
「あたしがやめろと言われて聞く人間だと思われるのは心外だなー」
『……』
御機嫌斜めになったようだ。
冗談なのに。
「午後は新しいクエストでエルフの里に行ってたの。今日は雨降ってたから行っただけだけど」
『エルフ? どっちだ?』
「森エルフだよ」
エルフには住む場所によって森エルフと洞窟エルフがいる。
元々この両者は同族だったらしいが、今は仲悪いってのが定説。
「で、昔パワーカードができた頃の冒険者にヒバリさんって人がいるんだけど、今のエルフの族長がそのヒバリさんのパーティーの一員だったんだって」
『エルフはやはり長命なんだな』
「あたしもビックリ」
カナダライさんはともかく、アビーはそんな年齢には見えなかったしな。
「エルフには独自に発達したパワーカードがあるんだ。クエスト片付けたらもらえることになった」
『よかったな。君金持ちだから、珍しいものをもらえたほうが嬉しいだろう』
「えっ? おゼゼはおゼゼで嬉しいけど」
『うん、ユーラシアの性格は常に両方だった。反省している』
何の反省だ。
殊勝だけれども。
「カラーズは何かあった?」
『ないな。転移石碑が設置されるまでは、特に変わったことは起きないと思う』
確かに。
『明日の午前中にこっち来るんだろう?』
「行く。お土産のお茶持ってくね」
あと一応、札取りゲームの試作品は持っていくか。
『訪問の表向きの名目は、転移石碑設置後の開墾についてでいいんだな?』
「いいよ。緑の民長老ズに会えるといいなー」
『長老連に会えたらいきなり丸め込みにかかるのか?』
「……いや、もうちょっと緑の民の皆が商売に興味持ってからがいいかな」
やる気になってるとこにニンジンぶら下げると加速が利く。
作戦通りならば、既に緑のオイゲン族長からあちこちに使者を出してるはずだ。
各村で吹き込まれた情報で、少しずつ交易に興味持ってきた人も出始めてるんじゃないか?
その辺りも見極めたいが。
「サイナスさんは、今緑の民がどうなってるかって知らないよねえ?」
『この前、君やフェイ族長代理達とオイゲン族長に会ったのが最後だな。以降、新しい情報はない』
四日前か。
状況が変わるには十分な時間だが?
「じゃあ、全ては明日オイゲンさんに会ってからだね」
『ああ。では明日朝待ってるからな』
「サイナスさん、おやすみなさい」
『おやすみ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『はいだぬ!』
明日は緑の民の村とエルフの里だな。




