第543話:アビーって呼んでいい?
目の前の眼鏡白エルフが喜んでいる。
異種族とのファーストコンタクトは、失敗すると後を引くもんだ。
スムーズでよかったよ。
「本当に懐かしいです」
「あんたが族長のアビゲイルさんでいいんだよね?」
「はい。よろしくお願いします」
握手を交わす。
細くて奇麗な指だなあ。
「アビーって呼んでいい? 何かそう呼ばなきゃいけない気がする」
「ますます懐かしいですね。ヒバリさんも私のことアビーと呼んでいましたよ」
カナダライさんが説明する。
「族長はその昔、ヒバリ殿のパーティーに所属していてな。それはそれはやんちゃな振る舞いをしていたのだ」
「もう、カナダライさんたら」
アビーがちょっと恥ずかしそうにする。
優しい目をしてる人だな。
「あれ、ヒバリさんのパーティーということは、やっぱりパワーカード使ってたの?」
「御存じでしたか。あっ、ユーラシアさんは精霊使いならば、必然的にパワーカード装備ですか?」
「あたしは冒険者になった時からパワーカードだよ。こういうところで先輩に会えるのは嬉しいなあ」
「私達の里にもパワーカード職人がいるんですよ。ウッドエルフの感性で独自発展したカードもありますので、御覧になっていってはいかがですか?」
「面白いね。あとで見ていくよ」
カナダライさんが言う。
「族長。ユーラシア殿は『アトラスの冒険者』だそうですぞ」
「ああ、『渡りガラス』ですね? 石板・転送魔法陣・クエストでコンボを決めるという」
「合ってるけど、そんな愉快な解釈した人は今までいなかったなー」
あれ、アビーって変な人なのか?
「あらまあ、だからここへいらしたのですか? どうぞクエストこなしていってくださいな」
「どうぞ言われても困るわ! とっととお題を出せ!」
きょとんとした顔をするアビー。
アカン、この人天然だ。
挨拶まではまともだったけど、一度道を外れるとどんどん逸れて暴走する気がする。
「族長、例の魔宝玉流通量の問題ですが、ユーラシア殿に振ってよろしいでしょうか?」
「はい、ベストだと思います。お願いします」
族長宅を辞し、カナダライさん達と打ち合わせをする。
「カナダライさんが補佐していないと、この里は回らないと見切った」
「ハハハ、いや族長は少々気ままなところはありますけどな。ウッドエルフ史上最高の魔道士ではあるのです」
ふーん、人は見かけによらないもんだ。
そして森エルフは自分らのことをウッドエルフと呼ぶらしい。
「で、あたし達は何したらいいかな?」
「ふむ、やはり人形系レア魔物を倒していただき、魔宝玉を持ってきてもらうのがよいですな。比較的多めに出現するエリアがあります。テラワロス! お主が案内せい」
「はい、承りました」
ほう、担当はテラワロスか。
「じゃ、明日には雨やむらしいから午後に来るね。よろしく」
「は、よろしくお願いします」
さて、今日は帰ろうかな。
ん? テラワロス何?
「パワーカードのお店でも見て行きませんか?」
「見る見る! 連れていってもらおうかな」
エルフの作るパワーカードか。
ノーマル人とは違った方向に進化してるんだろう。
興味をそそられるな。
族長宅から近い三角小屋に入っていく。
「こんにちは。お客になるかもしれない人を連れてきましたよ」
「おう、テラワロスじゃないか。ノーマル人と精霊?」
事情がわかってなさそうなカード屋に言う。
「お客になるかもしれない人だよ。あたし達もパワーカード使いなんだ。エルフ独自のカードがあるって聞いたから、どんなのがあるか見せてくれないかな?」
「族長とカナダライさんのお客人なのです」
「何だよ、早く言えよ」
テラワロスのえらく端折った説明に納得するカード屋。
族長よりもカナダライさんのお客人で納得してたような?
「どれがウッドエルフ独自のカードだかはよく知らないが、うちで販売してるのはこんなところだ」
リストを見せてくれる。
どれどれ?
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『ライトスタッフ』【殴打】、攻撃力+一〇%、魔法力+一〇%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『攻撃の友』攻撃力+二〇%、敏捷性+五%、命中率+一五%
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『ハードボード』防御力+三〇%、暗闇無効
『武神の守護』防御力+二五%、HP再生五%
『サイコシャッター』防御力+五%、魔法防御+一〇%、睡眠/混乱/激昂無効
『エルフのマント』魔法防御+二〇%、回避率+一五%、敏捷性+五%
『ホワイトベーシック』魔法力+一五%、スキル:『ヒール』、『キュア』
『マジシャンシール』魔法力+二〇%、MP再生三%
『森の番人』森にいる限り攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+一二%
『ウインドエッセンス』風属性与ダメージを+五〇%、スキル:『大木斬り』
『ファイブスター』火耐性/氷耐性/雷耐性/風耐性/土耐性三〇%
『スプリットリング』HP再生一〇%、MP再生四%
『天使の加護』HP再生一六%
『オールレジスト』基本八状態異常および即死に耐性五〇%
『クールプレート』温度が下がる
『ウォームプレート』温度が上がる
「ふーん、知らないカードが何種類かあるなあ」
「だろうな。ノーマル人とはほとんど交流がねえし」
「あっ、『エルフのマント』は持ってる。家に伝わってたんだよ」
ノーマル人パワーカード職人には製法が伝えられていないものだけど、こっちでは普通に作られてるカードなんだな。
「『エルフのマント』は、うちの族長が現役で冒険者やってた時代に考案したカードだと言うぜ」
「へー、アビーやるなあ」
「ああ。例えば六枚装備すれば、回避率+九〇%でほぼ敵の物理攻撃なんざ当たらねえ。魔法防御+一二〇%で魔法にも強い。いいカードだろ?」
「……そーゆーファンキーな使い方は想定してなかったわ」
『エルフのマント』は複数同時装備が前提のカードだったのか。
全然思いつかない発想だったわ。
何枚も手に入る見込みがなかったカードだし、まさかまさかの使用法だった。
パワーカードって奥が深いわ。
初期から持ってた『エルフのマント』の素性が明らかになったり。




