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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第542話:エルフの里

 フイィィーンシュパパパッ。

 『白き族長アビゲイル』の転送先にやって来た。


「……これはまたすんごい森だねえ」


 一本一本の木がやたらとデカく、幹が太い。

 地面がボコボコして歩きにくいが、道みたいになってるところもある。


「誰か住んでるようではありますねえ」

「そりゃあ『族長』って言うくらいだ。誰もいなきゃ困っちまうぜ」

「やはりリトルレインね。出直すね?」

「むーん?」


 ポツポツ雨粒が落ちるくらいで、雨自体は支障があるほどではない。

 が、足元がグスグスで探索もしづらいしな?

 出直そうとしたところで、何人かの男達が駆けつけてくる。

 へー、この足元で走れるんだな。

 大したもんだ。

 あ、緑の髪と肌、森エルフじゃないか。


「君らは何だ? ノーマル人と精霊だな? 迷い人か?」

「あたしは精霊使いユーラシアだよ」

「精霊使い? あっ、まさかヒバリ殿?」

「え?」


 隊長らしき年嵩の男があたしの顔を見て驚く。


「いや、ヒバリ殿のはずはないな。あれから一〇〇年も経っている」

「ヒバリさんを知ってるの? あたし、海の王国でもヒバリさんに似てるって言われたことあるんだけど」

「海の王国……ウミウシの女王ニューディブラか」


 得心したように笑顔になる隊長エルフ。


「拙者はカナダライと申す者。こちらへ。我らが里へ案内しよう」


          ◇


「あたしらの住んでる近くにもエルフの血を引いてるって言われてる一族がいてさ。族長家はそりゃあ鮮やかな緑髪なんだよ」

「ハハッ、エルフの血が濃いのかも知れんな」


 カナダライさんと話しながら行く。

 魚人以外の亜人とも仲良くしたいなあと思ってたところにエルフだよ。

 あたしはつくづく運がいい。


「急にこの地に現れたのは何故だ?」

「『アトラスの冒険者』って言ってね……」


 転送魔法陣とクエストが何ちゃらかんちゃら。

 一通り説明する。


「……とゆーわけ。だから転送魔法陣が出るってことは、何かここで困りごとがあるんじゃないかってことなんだけど」


 カナダライさんが眉根を寄せる。

 渋い男だなあ。


「困りごとか、なくはないな。冒険者に依頼すべきことかは族長の判断だが」

「そーだ、問題の転送先の名前が、『白き族長アビゲイル』だった」

「ほう?」


 じゃあ白き族長が問題を抱えているってことか。

 どんな人かな?

 向こうから駆けて来た一人のエルフにカナダライさんが呼びかける。


「テラワロス。お主の会った精霊使いとはこの御仁か?」


 ややタレ目のテラワロスと呼ばれたエルフが、あたしの顔を確認して言う。


「いえ、違います」

「あたしじゃなければ塔の村のエルだね?」

「そうです! エルさんには世話になりました」

「思い出した。エルが塔の探索を始めたばかりの時に、エルフがパーティーに入ってたと聞いたな」

「ぼくのことだと思います」


 思わぬ繋がりだな。

 しかしどーもこのやる気なさそうなタレ目エルフにはツッコみたくなるとゆーか。


「あんたはコケシの毒舌に耐えられなくてパーティー辞めちゃったんだよね?」

「いえいえ、コケシさんとは関係なくてですね……」


 アタフタするテラワロス。

 ハハッ、サディスティック精霊コケシにひどい目に遭わされたのは間違いなさそう。

 カナダライさんが感心したように言う。


「ほう、もう一人精霊使いがいて、知り合いと言うわけだな?」

「うん。ドーラに精霊使いはあたしとエルしかいないんだよ。エルのパーティにエルフがいたって話は以前チラッと聞いてたからね。会えるとは思ってなかったけど」


 人生いろんなことがあるもんだ。

 まあコケシとタレ目エルフはさておき。


「エルフと商売したいなーと思うと、何が欲しいのかな? あたし達には何売ってくれる?」

「紙と木材、キノコ、木の実、弓などが売れるものだな。こっちが欲しいものは、強いて言えば魔宝玉だ」


 いかにも森関係の産物だな。

 緑の民が紙を作るってのは、ひょっとしてエルフの技術を継いでるのかしらん?


「ノーマル人とは付き合いがほぼないので、ちょっと何を要求していいのかわからん」

「だよね。エルフは取り引きに魔宝玉を使うって聞いたよ。つまりお金が欲しいって意味なの?」


 カナダライさんが首を振る。


「いや、先ほどの困りごとに相当するんだが、最近魚人が高額の魔宝玉を対価として出すケースが続いてな、相対的に低額の魔宝玉の数が足りなくなっているのだ」


 何ですと?


「あ、ごめん。あたしのせいかも。海の女王がエルフや獣人との交易に必要な魔宝玉欲しいって言ってたから、藍珠一〇個と透輝珠五個譲ったんだ」

「何と!」


 この驚きようからすると、亜人社会で取り引きに使われている魔宝玉は、あたし達が思うより高額算定みたいだな?

 そーいや女王も藍珠透輝珠売った時、安くないかって言ってたわ。


「悪かったから低級の魔宝玉取ってくるよ。どこかで人形系レア魔物がたくさん出るとこ知らない? あたし達、藍珠や透輝珠落とすような人形系レアの出る場所は知ってるんだけど、踊る人形やギャルルカンがよく出る場所に心当たりがないんだ」

「出現しさえすれば、人形系の魔物を倒せるということだな? まあ君らのレベルなら当然であろうが……」


 あれ、エルフには人形系の魔物を倒す技術なり武器なりがないのかな?


「ともかくまず、族長に会ってくれ」


 森の開けたところがエルフの集落になっていた。

 三角の家が多く立ち並ぶ中で、一際大きな三角に案内される。


「客人をお連れ申した!」

「中へどうぞ」


 内部からの声に従い、奥の一室に通される。

 眼鏡をかけた白いエルフの女性がいる。

 ビックリ面を晒してどーした。


「ヒバリさん? いえ、そんなはずはありませんよね……」

「あたしは精霊使いユーラシアだよ。さっきカナダライさんにも言われたんだけど、あたしヒバリさんと似てる?」


 白いエルフがあたしの顔を覗き込む。

 ヒバリさんの時代の人だと、少なくとも一〇〇歳にはなってるんだろう。

 エルフの女性ってえらく若く見えるなあ。

 カナダライさんは結構な年齢だとわかるのに。


「生き写しです。顔もそうですが、全体から漂う雰囲気がそっくりで」


 カナダライさんも大きく頷く。


「実によく似ておりますな。物事に頓着しなさそうなところとか人を食ったような物言いとか、あ、いや失礼」


 マジで失礼だな。

 しかし眼鏡白エルフは嬉しそうだ。

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