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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第541話:一六個目の転送魔法陣

 女王が忌々しそうに話を続ける。


「しかし悪魔バアルはほぼ全ての属性に高耐性を持っているらしくての。ほとんどダメージが入らなんだ」

「最終的には女王の軍が勝ったんでしょ?」

「ヒバリが助太刀してくれたのじゃ。ヒバリは聖属性で攻撃できるパワーカードを持っておった」

「聖属性の武器を持ってたのに、バアルは逃げなかったんだ?」

「パワーカードは特殊じゃから、起動するまで気付かなかったんじゃなかろうか」

「なるほど?」

「ヒバリ達は逃亡防止のアイテムを用い、優勢に戦いを進めていたが、惜しくも逃亡防止の効果が切れ、きゃつに逃げられてしまった」


 ふむふむ、参考になる話だな。

 【聖】の攻撃属性を持つパワーカードは存在することが判明っと。


「大内乱以降、わらわの覇権がドーラ近海を覆い、聖属性の武具も手に入れた。しかしそうなるときゃつも近付いてこなくなった」

「バアルもバカじゃないなー」


 やはり聖属性の武器があると近寄ってこないようだ。

 ヴィルの言ってた通りだな。

 あたしが聖属性のカードを持てば、『あやかし鏡』の二回行動も『暴虐海王』の弱体化付与もあるから何とでもなりそうだが。

 聖属性のカードがなくとも『アンリミテッド』は衝波属性だから、防御力無視である程度のダメージは入るか。

 

「わかった。あたしの前に現れたら、きつく折檻しとくよ」

「勝てるのか?」

「負ける気はしないな。厄介だなーとは思うし、逃げちゃう前に倒せるかはわかんないけど」

「さようか……任せたぞよ」

「うん、任せて」


 聖属性のカードがキーポイントになりそうだな。

 しかし聖属性とは縁が薄そうな気がする。

 カンでしかないが。


「ごちそうさま。そろそろ帰るよ」

「うむ、また来るがよい。肉をたくさん持ってな」

「わかってるってば、もーいやしんぼめ」


 女王と笑い合う。


「そろそろ食料以外の地上の物資を交易対象にできると思うよ。魚の取り引きの時にこういうものが欲しいって言っとくと、関係の商人さん連れてくると思うから」

「うむ、わかった。食料は解禁にならんのか?」

「帝国から大量に移民が来るって話なんだ。急なことだから、農産物の増産がどこまで可能か難しいんだよね。とにかく飢え死に出ないように何とかしようとしてるところ」

「さようであったか。残念なことであるの」

「いや、逆に言うとどんどん増産するってことだよ。ちょっと待てば海底にも入りやすくなるはず」


 海の王国だけじゃなくて、他の亜人とも仲良くして特産品とか手に入らんものかなあ?

 せっかくドーラには様々な亜人がいるんだから。


「魚でよければ供給するでな」

「うん、ありがとう。じゃあまたね」

「肉を待っておるぞ」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 地上に戻ると既に雨が降っていた。

 もっとも小雨程度だ。

 家の中でうちの子達と話す。


「女王の話、どう思った?」

「あっしはタレが好みでやすね」

「あたしもタレがボリューミーでいいかな。まだコクや辛みで改良の余地があるよねって、そーじゃなくてさ!」


 ついノってしまった。

 いや、焼き肉のタレが美味くてかつ改良の余地があることは間違いないけれども。

 黄金のタレを求めて研究せねばならんな。


 クララが話を進める。


「悪魔バアルのことですね?」

「うん。特にバアルの能力についてだけど。女王の教えてくれたことにいくつか注目すべき点があったな」


 バアルは当面の敵だ。

 悪魔は契約にうるさいそうなので、長い時間かけて作成したプランをオシャカにしたあたしに代償を支払わせようとするだろう。

 まーあたしのレベルくらいは知ってるんだろうから、まともに来るわけはない。

 絶対に変なことしてくるだろうと思うが?


 バアルには魔法もバトルスキルも効かない。

 攻撃魔法だけじゃなくてバトルスキルすらも使えなくなったということは、その手の状態異常なのか特殊なフィールドなのかと思う。

 しかし『薙ぎ払い』を使えた理由がわからない。


「『薙ぎ払い』はノーコストね」

「ノーコストのスキルは使えるということ? あり得るね」


 こっちのマジックポイントの使用を禁じる能力か?

 クララが言う。


「今のところ一番矛盾が少ない仮説です」

「どうでやすかね? あっしは悪魔バアルに拘らなくてもいい気はしやすが。ちょいと痛い目に遭わせてやれば、逃げてあっしらの前に現れなくなりやすぜ」

「アトムの言うことももっともだね」

「カンプナキマデ、アタックすべきね」


 おお? ダンテが攻撃的なのは珍しいな。

 まーあたしもちょこちょこちょっかい出されると鬱陶しいので、チャンスがあればとっちめてやりたいとは考えている。


「逃封の札の効果と『煙玉』の効果ってどっちが強いのかな?」


 昔ヒバリさんは逃亡防止をかけて戦ったって言うけど、『煙玉』は今やチュートリアルルームでスクロールを売ってるくらいのメジャーなスキルだ。

 『煙玉』の逃走効果のほうが強いなら、当然対策してるだろうしな。


「今度実験してみましょう。結果いかんでやり方が変わってしまいます」


 クララの意見に全員同意する。

 逃封の札買っといてよかったな。


「聖属性攻撃のカードが欲しいなー」

「手に入るといいでやすね」


 偶然頼りだな。


「新しい転送先に行ってみようか。雨だったら帰ってこよ」

「「「了解!」」」


 小雨の中、東の魔法陣区画へ。

 思えばこの場所、以前はクララがうしさんを飼えなくなるって悲しがってたなあ。

 あの時に比べて格段に多くなった転送魔法陣に感慨を覚える。


 今は一六個の転送魔法陣が並んで、それぞれが赤く柔らかな光を放っている。

 が、九個目『カル帝国・山の集落』行きの魔法陣は輝きを失い、機能を失っている。

 ダンテの最強魔法『デトネートストライク』によって、転送先のビーコンが失われたからじゃないかな。

 撃たせた時は聖火教徒の住居跡を吹き飛ばすことが目的だったので、転送先がなくなることは考えてなかったけど。

 おかげでコッカーを狩りに行けなくなってしまった。

 もっとも帝国の魔道士によってこっちを逆探知されることもないだろう、とも言える。


 一六個目の転送魔法陣の上に四人で立つ。

 強くなる立ち上る光とフイィィーンというやや高い音、頭の中に事務的な声が響く。


『白き族長アビゲイルに転送いたします。よろしいですか?』

「よろしく」

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