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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第538話:うちの子達曰く

 自由開拓民集落ザバンから帰宅し、うちの子達の意見を聞いた。

 枝変わりで出たという、素晴らしく美味いお茶。

 しかし真の実力を発揮させるためには、用意しなければいけないものがいくつかあるとのことだ。


「さて、じゃあいるものはガラスの器いくつかと、水の魔法だね」


 アトム曰く、おそらく水に含まれる微量な成分が味の邪魔をする。

 ザバンの水は比較的混ざりものが少ないのだろうと。


 ダンテ曰く、魔法で生み出された水はピュアである。

 ザバンの水よりあのお茶には適しているだろうと。


 クララ曰く、煮出してしまうと香りが飛んでしまう。

 水出しするのがあのお茶には合っているだろうと。


 つまり結論としては、余計な成分の染み出てこないガラスの器と水魔法が必要。

 加えて水出しするとゆーことだ。


「それにしてもあのお茶、美味かったですぜ」

「うん、あれよりおいしくなりそうってのが信じられないよ」


 皆が頷く。

 ぜひ成功させねば。

 おいしいものは大正義だから。


「緩衝地帯へ行きましょうか? 赤の民のショップが閉まる前に」

「ウォーターマジックはどうするね? アレクボーイに頼むね? チュートリアルレディーから買うね?」

「緩衝地帯で先に器買おう。『プチウォーター』はあとでバエちゃんとこで買ってくる」

「「「了解!」」」


 『プチウォーター』は一応単体水属性攻撃魔法の位置づけだが、水弱点の魔物以外にほぼダメージは入らない。

 しかしコストなしで清潔な水を飲めるため、そのスキルスクロールは隠れたヒット商品になっているようだ。

 『小魔法』の固有能力持ちであるアレクが使える魔法なんだけど、アレクの得にならないことであんまり手かけさせるのも悪いから。


「クララ、『フライ』お願い」

「はい、フライ!」


 フワッと浮き上がり、びゅーんと緩衝地帯へ飛ぶ。

 『フライ』は風を受けないから、この季節でも寒くなくていいな。

 赤の民のショップの近くにフワリと着地する。


「こんにちはー」

「おお、ビックリした。精霊使いじゃないか」


 今日はお客さんだとゆーのに。


「ガラスの器が欲しいんだよ。蓋付きで大きいやつ一つと、小さいやつをいくつか」

「え? アバウトだな。大きいやつってどれくらいのだよ?」

「一抱えくらいあるのがいいな。小さいのはふつーのコップでいい」

「持ち手はあったほうがいいかい?」

「大きいやつには欲しいわ。小さいやつにはいらない」

「じゃあこの辺だな」


 ああ、結構色々種類があるな。

 大きい両手持ちの注ぎやすいやつ、これがいい。

 あとコップを四つ……じゃ足りないか。

 もうちょい買っとこ。


「デカいやつは場所だけ取ってよ。今まで全然売れなかったんだ。代金は少しまけといてやるぜ」

「ありがとう!」

「へい、毎度あり!」


 よーし、ガラスの器は手に入ったぞ。

 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「あっ、ユーちゃんいらっしゃい!」

「買い物に来たんだよ」

「毎度っ!」

「商売人の顔だねえ」


 アハハと笑い合う。

 このチュートリアルルームも、最初は無機質で変わった場所だなあと思ったものだけれど、最近はバエちゃん家としか思わない。

 慣れってのは怖いもんだ(怖くない)。


「スキルスクロールよね。魔法? バトルスキル?」

「『プチウォーター』のスクロール一本ちょうだい」

「はい、一〇〇〇ゴールドです。ちなみに何に使うの?」


 お金を払いながら答える。


「普通の答えで悪いけど、ピュアな水が欲しいんだよ」


 バエちゃんが興味深そうな目で見てくる。

 何だろ?

 飲料水用途で『プチウォーター』買う人は結構いるでしょ?


「『飲める水』じゃなくて『ピュアな水』ってところに企みを感じるの」

「おおう。バエちゃん、なかなかやるね。すごく香り高いお茶の葉手に入れたんだけど、ピュアな水じゃないと雑味が入っちゃうっぽいんだよ。結論として魔法の水が必要なの」

「やっぱり飲食物に関係あるのねえ」

「あたしの行動原理の根本だねえ」


 アハハ。

 この前『プチサンダー』買った時も魚獲り目的だったわ。


「ユーちゃんまだ帰ってからギルド行ってないの?」

「行ってないな」

「どうして? 皆心配してるわよ?」

「どうしてって言われても、特に用がないから。それに今ギルド行くと、余計な仕事押しつけられそうな気がするんだよ。淑女危うきに近寄らず」


 面倒な仕事はソル君に任せておく。

 とゆーかあたしはあたしで大変忙しいのだ。


「ダンさんが今日来て、何か知らないかって聞いてきたから、無事に戻ってるってことは伝えておいたわ」

「ありがとう。それでいいよ」

「早めに顔出すのがいいんじゃないの?」

「うーん、ギルドの優先順位あんまり高くないんだなー」


 売るものがないし。

 大体もう年末じゃん。

 年明けてからで全然構わないと思う。


「例の大量移民のことで忙しいの?」

「とは別に識字率上げたいっていう目標もあってさ。ドーラで読み書きできる人が二、三割しかいないんだそーな。識字率ともう一つの目標である交易活発化の関係で根回ししたいことがあって、お土産用のお茶が欲しかったの。そしたら産地ですごく美味いのに淹れるの難しいお茶を手に入れちゃったから、やること増えちゃった」


 手持ちのおゼゼが寂しくなったから、素材なり魔宝玉なりを稼ぎたい。

 でもマーシャの占いでは新クエストの優先順位が先なんだよな。


「だからお茶なのね? 忙しいのねえ」

「楽しいけどね。じゃあ、また来るよ」

「うん、またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 ザバンで手に入れた高いポテンシャルを持つお茶の検証実験だ。


「一掴みお茶葉を入れてと」

「多くないでやすか?」

「多いのかな? ま、実験だから。プチウォーター!」


 大きい両手持ちのガラス容器に水を注ぐ。


「ベリーグッドね」

「よーし、練習の成果だな」


 『プチウォーター』を最初に使った時、すごく勢いよく水が出てビックリしたのだ。

 ダンテに言われて試し撃ちし、練習してなかったら、容器を割っちゃってたかもしれない。

 世の中いろんなところに罠があるもんだ。


「明日朝くらいには飲めると思います」

「水出しだとそんなもんか。楽しみだねえ」


 こっちはこれでオーケーと。


「焼き肉のタレを作っておこうか。明日海の王国に持っていこう。今日の夕御飯は試食だね」

「「「了解!」」」

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