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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第535話:再会スリ男

 さてと、ほこら守りの村での用は終わった。


「あたし達は帰るね。ところでここからザバンっていう自由開拓民集落は近いのかな?」


 村長が言う。


「カトマスよりはうんと近いですな。ここから強歩三時間弱くらいになります。街道沿いの村ですぞ」

「方向は南だよね?」

「真南へ行くと街道に出ます。そこから少し西へ行ったところですな」


 ふむふむ、大体カトマスを中心とした位置関係がわかってきたぞ。

 ザバンへ行く時は、カトマスじゃなくてほこら守りの村から飛ぶと少し近いみたいだな。


「ヴィルは通常任務に戻っててね」

「了解だぬ!」


 まあ純朴な田舎の自由開拓民集落にいきなり悪魔は刺激が強いかもしれないから。


「ザバンに用ができちゃった。そっちへ飛んでくね」

「飛んでく、とは?」

「飛行魔法だよ。クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 フワッと浮き上がる。


「おお、すごい!」

「じゃあまた!」

「お気をつけて!」

「肉ありがとー!」

「ゆーしゃさまのぜんとにさちあれっ!」


 全速『フライ』でびゅーんと南へ飛ぶ。


          ◇


「これが街道かな?」


 数分飛ぶと西域街道らしき道を発見した。

 幅広で道草が剥げて地肌が露出しているところがずっと続く。

 まあ悪く言えば獣道の親分みたいなものだ。

 もっと西はわからんけど、カトマスに近いこの辺だと結構人の行き来も多いはず。

 なるほど、これならほとんど魔物も出ないだろうなと思わせる。


「もう少し西へ飛んでくれる?」

「はい」


 一つの集落が見えてきた。

 これがザバンかな?

 飛行魔法を切ってフワリと降り立ち、集落の中へ。


「こんにちはー」

「いらっしゃい、旅のお方ですかな? ほう、精霊連れとは珍しい」


 この爺ちゃんは精霊を知っているようだ。


「この自由開拓民集落がザバンでいいんだよね?」

「さようです」

「精霊に縁のある村なのかな? あんまり精霊って一目でわかる人は多くないんだけど」

「いや、精霊とは無関係ですがの」


 爺ちゃんが笑う。


「昔、カラーズへ行商へ行っていたことがありましてな。ワシは精霊に会うたことがあるのです」

「カラーズに縁があったかー。あたしはカラーズ灰の民の村出身なんだよ」

「ふむ、この村へは休憩ですか?」

「うん。お昼食べていこうかな」


 腹時計からするとそろそろいい時間だ。

 こういうところにお金を落としていくのもよさそう。


「どの店がおいしいかなあ?」

「ハハハ、ワシが言ってしまうと少々障りがありますでな。しかし昨日、バルバロス殿が魔物肉を持ってきてくれましたので、どの店も肉饅頭は美味いと思いますぞ」


 この爺ちゃんは村長さんか、少なくとも村の顔役の人っぽいな。

 だからどこかの店を贔屓するわけにはいかないんだろう。

 そしてここで『西域の王』バルバロスさんの名が出た。

 情報収集しとこ。


「バルバロスさんって会ったことないんだ。どういう人なのかな?」

「さよう、下々には優しい方でございますな。ここのところ西域で飢え死にが出ないのも、あの方の働きが極めて大きい」

「ふーん、あたしの知ってる人はバルバロスさんのこと、鬼だって言ってたよ」

「厳しいことは事実でございますぞ。自主自立を掲げておりまして、他者に頼らず生きることを旨とせよと、よく口にされます」


 ははあ、いかにも西域自由開拓民集落の考え方だな。

 強い魔物が現れて救援を呼べないこともあるだろうし、武力でも食料でもある程度自立できなくてはならんということだろう。

 だからレイノスも自分で何とかしろと、戦時の協力要請に反発したのかのかもしれない。


 あたし個人としては、ドーラが一まとまりになっていた方が商売しやすくていいと思う。

 でも交流が活発になるほど、自由開拓民集落からレイノスやカトマスに人口が流出することはあるかもしれない。

 確かにそれはつまんないなー。

 各自由開拓民集落が、地域の特色を持って個性を確立してくれるのがいい。


「……一度会ってみたいな」

「バルバロス殿ですか? 神出鬼没でございますぞ。会おうと思って会える人ではない」

「だろうなー」


 警戒心強そうだから、下手にヴィルで探させると危ないかもしれない。

 パラキアスさんやデス爺はどうやって会ってるんだろ?

 今度聞いてみるか。


「色々教えてくれてありがとう! どこかのお店で肉饅頭食べていくよ」

「ハハハ。それがようございます」


 とある軽食店に入る。

 いや、だって一番食欲を刺激するいい匂いがしたんだもん。

 こーゆーのは本能に従うのがあたしルール。


「大将、肉饅頭がおいしいって聞いたけど、まだある?」

「おっ、耳敏いね。たっぷりあるよ」

「やったあ! 八つちょうだい。それからお茶四つ」

「ちょうど一〇〇ゴールドだよ」


 おっと、先払いか。

 食い逃げが多いのかも。


「お嬢さん達は旅人かい? ザバンのは正真正銘本物のお茶なんだぜ」

「うん、ここでお茶作ってるって、カトマスで聞いたから来たんだ。飲んだことないから楽しみなの」

「若いのに粋だね」


 粋って、こそばゆい褒め言葉だな。


「へい、お待ち!」


 若い店員さんが持ってきてくれた。

 おお、ホカホカでいい匂いだ。

 考えてみりゃ、蒸し料理はあんまり食べる機会がないなあ。

 検分しながらいただくことにするか。


「あっ! 精霊使いユーラシア!」

「かの有名な精霊使いユーラシアだよ」


 あたしも有名人になったもんだなー……ん?


「あれ? あんた……」


 くすんだ赤毛とソバカスには見覚えがあるな。

 カトマスでお茶の葉をくれたスリじゃん。

 この店の息子だったんだね。


「お嬢さん、精霊使いユーラシアなのかい? 息子を知ってたのか」

「知ってるとゆーか……」


 後生だ、スリのこと言わないでくれ。どーしよっかなー。オヤジに殺されちまうよ。じゃあこの村案内して? わかった。……というやり取りを一瞬のアイコンタクトで行う。

 ダンと同じ才能の持ち主だったか。

 必死さのあまり開眼したのかな?


「……以前カトマスでナンパされて、お茶の葉をもらってさ。ザバンでお茶作ってることを教えてもらったから、今日来てみたんだ」

「ハハッ、お茶の結ぶ縁か」


 大将上機嫌だ。


「あとで息子さん借りていいかな? この村案内してもらいたいの」

「ああ、いいぜ。それより温かい内に食べちまいなよ」

「饅頭も美味いけど、お茶もうまーい!」


 軽食なのに満足感が高いな。

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