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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第532話:リリーは平常運転

「おーい、エル、リリー!」

「ユーラシア! レイカ!」


 食堂に行くと、既にエルとリリーがいた。

 リリーが言う。


「無事に帰ってきたのだな! 信じておったぞ!」

「そりゃ帰ってくるわ。ユーラシアさんだぞ。まー腹の足しにならない話題より最近の食堂のオススメは何なの? お腹減っちゃった」

「相変わらずだな」


 皆で笑う。

 料理料理、注文注文と。


          ◇


「皆で食べる御飯は美味いなー」

「土産話でもあるんだろう?」


 御飯を食べながらレイカが水を向けてくる。


「といっても、あたしが飛空艇に乗り込んで落としたとこまでは知ってるんだよね? その飛空艇の艦長さんがなかなかできる人でさ。操舵室壊したぞ墜落するぞって言ったら、すぐ諦めて総員退避命令出したんだ。で、話を引き延ばしてあたしをデカブツごと道連れにしようとしたな」

「ユーラシアが話に付き合ってたからだろう?」

「何でわかるんだよ。あたしもエンタメ……じゃなかった、情報が欲しいからさ」


 アハハ。

 黒服が興味深そうに聞いてくる。


「艦長は誰でしたか?」

「クリーク・ミュラー少将って人だよ。予備役に編入だろうって話だったから、ドーラに来るよう誘っといた。多分来るんじゃないかな?」

「クリーク少将が?」


 驚く黒服。


「陸海両方で実績のある気鋭の軍人です。順調に出世するものと思われていましたが」

「運が悪かったねえ。でもああいうできる人がドーラに来て働いてくれると嬉しいなー」

「運か」

「運ね?」


 納得いってるのかいってないのか。

 エルとレイカがうんうん言ってる。


「その後えらそーな役人が来てさ。飛空艇を墜落させ破壊した容疑であたしを逮捕するってまくしたてたんだよ。だから空飛ぶデカブツなんて落せるわけないだろ、何かの間違いじゃないの、誤認逮捕したら経歴に傷がつくぞーってしらばっくれたら帰っちゃってさ。あとで聞いたらクビだって」

「虐め過ぎではないか? 少し可哀そうだの」

「伯爵家の次男だかで、リリーに執拗に言い寄ってるって話だったぞ? 四〇がらみの人だったけど」


 途端にリリーと黒服が苦笑する。


「男爵のババドーン殿か」

「そんなような名前の役人だったな。すげえ嫌われ者で、今回の失態でも誰も擁護する人いなかったってよ」

「さもあろう」


 リリーが頷く。


「だけどどうしてユーラシアは貴族の事情なんかに詳しいんだ?」

「何度も歩兵や魔道士が攻めてきたんだよ。隊長さんや兵士さん捕まえて、色々話聞いてたの」

「どうせ尋問じゃなくて掛け合いだったんだろう?」

「あたしだって娯楽が欲しかったんだもん。山ごもりは寂しくて」

「寂しいんだぬ!」


 皆が笑う。


「リリーが帝国で大人気ってのは本当だったよ。リリーの話題は鉄板だもん」

「そうであろ?」


 得意げだね?


「ハグしたことあるから知ってるけど、リリーは割とあるぞって教えてあげたら、兵士さん達がすげー羨ましそうだったわ」

「何があるんだ!」


 エルがツッコんでくる。

 だから無防備に戦闘状態に入ろうとすんな。

 胸部装甲が貧弱だとゆーのに。


「愛嬌」

「あ、愛嬌だったか」

「じゃなくておっぱい」

「うがー!」

「ヴィル、ぎゅーしてあげなさい」

「わかったぬ! ぎゅー」

「ああ、ありがとう。癒される……」


 久しぶりだな、このやり取り。

 テンポがいいから何度でも見たくなる。

 今日は皆がいるから喋らないけど、クラッシャー精霊コケシも満足そうだ。


「セバスチャンよ、この芸は安心して見ていられるな」

「ドーラの伝統芸能に指定してもいいかもしれませんね」


 ピントのずれた会話にレイカパーティーが苦笑してる。


「リリーお茶がないと朝起きられないみたいなこと言ってたけど、あっても昼まで起きないらしいじゃないか。リモネスって人に聞いたぞ」

「リモネスに会ったのか。やつめ、余計なことを……」


 黒服が聞いてくる。


「賢者リモネス氏にも会ったんですか?」

「山にこもってた最後の日に一人で来たんだよ。あたしらは正体不明の敵対勢力だったはずなのに、何でもない感じでふらっと寄ってきたわ。あの人も相当とんでもないねえ」

「『真実を見抜く帝国の目』とも言われています。陛下も皇妃殿下もかなりの信頼を置いている傑物です」

「ユーラシアが『とんでもない』って言うくらいか。どんな人なんだ?」


 レイカも興味があるみたいだ。


「聖火教徒で、『サトリ』っていう相手の考えてることが少しわかるっていう固有能力の持ち主。外見は普通だけど、強いて言うなら薄藤色の瞳が印象的かな」

「考えてることがわかるって、危険な能力だな」

「あたしのカンだけど、こっちの考えが筒抜けってことは多分ない。でも害意とかウソとかを見逃すことはないなー」

「ほお」


 頷いてるけど、多分話しただけではリモネスのおっちゃんの特異性は伝わらないだろうな。

 『サトリ』は確かにヤバいけど、リモネスさんのすごさは固有能力だけじゃない。

 飄々とした態度の中に強い覚悟とか気概とかを感じる人なのだ。

 

「塔の村はどうだったの? 皆活躍したってチラッと聞いたけど」

「うむ、ユーラシアに偵察は任せたと言われたからな。あの日は気が高ぶって寝られなかったのだ。で、夜中の内から周りを偵知していたら怪しい集団の気配を感じ、急ぎ村に知らせたのだ」

「そんな理由かい!」


 レイカよ。

 自慢げに語る内容じゃないからな?


「主力はボクだって言われて、何となく寝付けなかったんだ。そこへレイカが飛び込んできたので速やかに準備できた。戦闘はオマケだったよ。余裕をもって待ち受けることができた以上、苦戦する要素はなかった」

「エルもかい!」


 おいおい、次の日攻められてたらどーしてたんだよ?

 睡眠不足で迎え撃つつもりだったのか?

 いやまあ敵の指揮官ができる人であれば、開戦初日に攻め寄せることは間違いなかっただろうけど。


「ぬしらが我を狙ってこの村に攻め寄せてくることは、精霊使いユーラシアの情報で知れておったわ! しかし皇女リリアルカシアロクサーヌの睡眠を邪魔するとは何事かーと怒鳴りつけてやった」

「おお、リリーは平常運転っぽいね」


 リリーの演説で降したってコモさんが言ってたけど、寝起きで機嫌が悪かっただけかもしれない。

 リリーを救い出すつもりで来た帝国兵がこんなこと言われたら萎えるだろうなあ。

 ちょっと笑える。

 まあ勝てたのなら何でもいいんだけどさ。

 大事なのは結果。

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