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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第531話:無言がうるさい

 パワーカード側にも問題はある。

 例えば木刀だったら二〇〇ゴールドで結構いいやつが買えるもんな。

 ほぼ一五〇〇ゴールド均一のパワーカードは、中級冒険者以上にとってはメチャ安だけど、初心者にはあんまり優しいお値段じゃないんだよなあ。


「前から思ってたけど、パワーカードは値段の融通が利かないねえ。安くできないの?」

「できなくはないが、ほぼ既存のカードの劣化になる。『逃げ足サンダル』は使用素材の関係で安く製作できる稀有な例外だ」

「理屈があるんだなあ」

「パワーカードは装備枠が七枚までという制限があるしな。将来絶対使わなくなるカードって考えると、買う気失せるだろ」


 コルム兄の言うことももっともだ。

 初心者の時使ってた武器を将来強いのに買い替えるのは普通だが、絶対使わなくなるって言われると買うモチベーション下がるな。


「レンタルだとどーだろ?」

「えっ?」


 コルム兄の意表を突いたった。


「例えば攻撃属性はないけど攻撃力二〇%上がるカードとか、何の付加価値もないけど防御力二五%アップのカードを、一日一〇ゴールドで貸し出す、っていうの」

「普通に売ってるカードでもよくないか?」

「パクられたらどーするんだよ。販売してないカードだったらすぐレンタルのカードだって判別できるでしょ。安く製作できるなら万一パクられても損害小さいし」

「……」


 考えてるね?


「ユーラシア!」

「あっ、レイカ! 今塔から戻ったの?」


 レイカパーティーのお帰りだ。

 ジンもハオランも逞しくなってるね。


「行方不明と聞いて心配したんだぞ。まあユーラシアのことだから心配はしてなかったが」

「何だそれ? どっちなんだよ」

「ユーラシアさんは食堂行かないんですか?」

「行くけど、今こんなことがあってさ」


 新人三人組の話と、パワーカードレンタル案の話をする。


「ユーラシアが正しい。前衛の防御力が低いのは論外だ」

「パーティー全体の総合的な戦力で考えればね。でも個人の所有権とか財産とかが絡むと、案外難しい話だなーって」

「……」

「それでレンタルを考えついたんですか?」

「パワーカード七枚揃えてほぼ一万ゴールドって考えると安いけどさ。一枚一五〇〇ゴールドはルーキーに優しくない値段だから」


 木刀や投石で戦うつもりならもっとうんと安いしな。

 剣とか弓とかに慣れちゃったら、パワーカードに転向しようとはなかなか思わないだろう。

 肝心な最初の段階で二の足踏まれるのは痛いってことだよ。


「ははあ、なるほど」

「……」

「例えば『スラッシュ』一枚しか持ってないレベル一の新人さんが、攻撃力二〇%増強カードを四枚と防御力二五%増強カードを一枚レンタルして実戦に臨むとするじゃない? 十二分に元取れると思うんだよねえ」

「まあ安全まで考えればな」

「レンタルで儲けが出るかというと難しいですけど、新人の支援にはなりますね」

「ふうん、皆が好意的な意見か」

「……」

「さっきからハオランの無言がうるさいんだけど?」

「「「「!」」」」


 無言がうるさいってのは我ながら言い得て妙。


「でもパワーカード自体の知名度も需要も小さい内は不必要だね」

「最近知名度は上がってるんだぞ。塔の村限定かも知れないが」

「そーなの?」

「先ほどの初心者というのも、知ってたからここへ来たんでしょうし」

「言われてみれば」

「……この場所じゃダメだ」


 今日初めて発したハオランの言葉に全員が頷く。

 ここは路地の奥でわかりにくいしな。

 積極的な商売やる場所じゃない。


「コルム兄は好きでこんないじけた場所をナワバリにしてるんだろうし」

「好きじゃないよ」

「いじけた場所が似合うけれども」

「被せてくるなよ。他に場所がなかっただけだ」


 皆で笑う。

 レンタルの件は保留かな。

 コルム兄の考え次第だが。


「工房が近い点は便利なんだけどな」

「ところでレイカ達は何しにこんないじけた場所へ?」

「押すなあ」

「特に用があるわけじゃないが、塔で回収されたカードが売られることもあるだろう? だから定期的に覗くことにしてるんだ」

「へー、真面目だね」

「真面目だぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。


「あたしにも見せてよ」

「現在では製作法が失われているカードとしてはこんなところだ」


 『誰も寝てはならぬ』防御力+一〇%、睡眠無効、最大HP+一〇%

 『ヒット&乱』攻撃力+一〇%、混乱付与、混乱無効

 『前向きギャンブラー』攻撃力+一五%、会心率+八五%、防御力-三〇%、魔法力-三〇%

 『ポンコツトーイ』経験値獲得率+五〇%

 『厄除け人形』魔法防御+一五%、毒耐性三〇%、暗闇耐性三〇%、HP再生三%

 『闇払い』闇耐性三〇%、魔法防御+一五%

 『セントカーム』聖耐性三〇%、HP再生六%


「これ全部販売価格は一五〇〇ゴールドなの?」

「ああ」

「ちなみに買取価格は?」

「五〇〇ゴールドだ」

「ぼろい商売だなあ」

「大して売れるもんじゃないからな?」


 コルム兄が睨んでくるけど、わかってるってばよ。

 冗談じゃないか。


「上五つは使ったことあるよ。『闇払い』と『セントカーム』は知らないカードだった。闇属性や聖属性扱うのすげえ難しいって聞いたけど?」

「確かにね。かなりの研究の跡が窺えるカードだよ。『闇払い』と『セントカーム』は作れるようになるかもしれない」

「ほんと?」

「ああ、でもレア素材が必要になるな」


 作れても受注生産で高価になっちゃうってことか。

 ダンジョンで回収できる分がある内は用がないな。

 レイカが言う。


「『ポンコツトーイ』は必須のカードだな」

「最近買ってくれという引き合いが比較的多いカードだよ。階層によって出やすいのかもしれないな」

「『前向きギャンブラー』ってひどいカードじゃないか?」

「いや、これがないと倒せない魔物がいるんだよ」


 ウィッカーマンのことを話す。


「特殊な事情がないと倒そうと思わないだろう?」

「まあねえ。あたしも魔宝玉持ってこいクエストがなかったら、縁がない魔物だったかもしれないな」

「……」


 ジンが聞いてくる。


「他のカードはどう思われますか?」

「レイカのパーティーにはいらないだろうけど、『誰も寝てはならぬ』は最大ヒットポイント増強効果のおかげで使いやすいと思ったな」


 頷くレイカパーティー。


「食堂行って話そうか。コルム兄またね」

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