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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第530話:初心者パーティーって難しい

「春までにはポーションとマジックウォーターの製法は完全にマスターできると思います。一年後には万能薬と蘇生薬まで、何とか覚えたいです」

「うん、いいねえ」


 降伏した潜入工作兵諸君と別れたあとは、塔の村を見て回っていた。

 そんで自由開拓民集落麗しのユーラシアからの研修生が、薬の製法を学びに来ているのを見つけたのだ。

 道具屋のおばちゃんが言う。


「働き者でこっちも助かってるんだよ」

「あたしの薫陶が行き届いてるからだなー」

「まったくユーラシアは変な世話焼いてるんだから」

「だって村にあたしの名前つけてるんだもん。放っとけないじゃん」


 おばちゃんとアハハと笑い合う。

 よし、順調だな。

 ポーション等を自作できれば、必ず集落の売り上げに繋がる。


 さてと、まだ皆が塔から帰ってくるまでに少し時間あるし、コルム兄を冷やかしに行くかな。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 路地の奥まったところのパワーカード屋に来た。


「やあ、いらっしゃい。無事で何よりだ。一時期ユーラシアの生死が不明だって言われてたんだぞ?」

「もー言わないでよ。さっきコケシにエア葬式代エア供物代エア空涙代寄越せって絡まれたとこなんだ」

「うわ、災難だったな」

「同情してくれるのはコルム兄だけだよ」


 うちの子達はコケシがあたしのエンターテインメントの餌食になった、って顔してるけどな。


「パワーカード屋の商売はどうなの?」

「一時期よりはうんと暇になったよ。エルとレイカのパーティーが、両方ともカード装備枠飽和したから。ちょこちょこ買いに来る人はいるけどね」


 暇過ぎるのも困るんだが。

 後進も育たんし。

 考えなきゃいかんな。


「うーん、場所がわかりにくいんだよね。宣伝しなきゃいけなくない?」

「いや、新規でも誰かに教えられて来るんで、問題はないんだよ」


 口コミ商売ということか。

 塔の村の冒険者人口自体がまだ増えるだろうことを考えりゃ、それでいいのかなあ?


「おっと、お客さんのようだ」


 男の子三人組がやって来た。

 初心者だな。

 しかし?


「いらっしゃいませ」

「辺鄙なところへよーこそ」


 何かあたしの方見てくるんだけど?

 美少女だから仕方ないか。


「精霊使いエルさんですか?」

「あたしはエルじゃないほうの精霊使いだよ」

「ということはユーラシアさん? あの有名な?」

「かの有名な美少女精霊使いユーラシアだよ」


 コルム兄が笑い出す。


「掛け合いはいいから。パワーカードの御用向きですか?」

「装備から相談しに来たんです」


 ふむ、ルーキーだしな?

 装備品としてパワーカードも考慮に入れてるってことのようだ。


「君達三人とも固有能力持ちだけど、自分ではわかってるんだ?」

「はい。僕達カトマス出身で、『強欲魔女』に鑑定してもらっていますので」

「カトマス出身だと魔物と何度か戦った経験のある子が多いんだけど、君達はズブの素人だよね?」

「三人とも元々冒険者志望ではなかったのですけど、せっかく固有能力持ちならそれを生かした職業もありかと思いまして、冒険者に優しい塔の村へ来たんです」

「同期でドラゴンスレイヤーのパーティーで活躍する者が出たんだ。だから俺達もって」

「ああ、アンとセリカのこと?」


 驚く三人。


「御存じで?」

「御存じも御存じ。アンセリを今やドラゴンスレイヤーのソル君に紹介したのはあたし」

「「「!」」」


 コルム兄が聞いてくる。


「面白そうな話だから、オレにも聞かせてくれないかな?」

「需要と供給がマッチしたってだけの話なんだ。ソル君は『スキルハッカー』という、スキル一二個まで何でも習得できる超レアの固有能力持ちなんだけど、初心者だからなかなか先に進めないって悩みを抱えてた。一方でアンセリも年若の女の子だから、才能に相応しい役目を任せてもらえないって嘆いてた。アンセリはともに後衛職だから、二人で冒険ってのも効率悪くて難しかっただろうし、当時はまだここ塔の村も発足前だったしね。たまたまあたしはソル君とアンセリの両方と知り合ったから、仲立ちしたんだよ」


 考えてみれば、塔の村発足後だったらアンセリはこっち目指したかもしれないな。

 タイミングって面白い。


「固有能力が向いてるから冒険者目指すっていう考え方もいいと思うよ。どんな能力なの?」


 三人はそれぞれ『白魔法』、『タフ』、『飛影』とのこと。

 回復、壁、スピードアタッカーとバランスもいい。

 ギルドカードでパラメーターも確認したが、『白魔法』は典型的な後衛魔法タイプで、『タフ』の子は防御力と最大ヒットポイントが、『飛影』の子は攻撃力と敏捷性が高い。

 理想的やんけ。


「何の問題もないな」

「うん、文句つけようがないねえ」


 前途洋々じゃん。


「ここに来たということは、お客さんということでいいですか?」

「実は予算が三人で五〇〇〇ゴールドしかないんだ」

「足りないのはわかってるけど」


 ははあ、なるほど。

 なけなしの五〇〇〇ゴールドってことか。

 問題っちゃ問題だけど、『アトラスの冒険者』の初期装備も一人三〇〇〇ゴールドだしな?

 

「どう見る?」

「そりゃあパワーカードでいくなら前衛、特に盾役の『タフ』の子に厚く、後衛の回復役の子は最初装備なんかなくていいと思うけど」

「ドーラ最強パーティーのリーダーがこう言ってるよ?」


 三人で話し合っているが?

 うーん、でもまあ難しいかも。

 装備品だって個人の持つ財産だ。

 三人均等にって考えが普通だろうからな。


「すいません。他もよく検討してみます」

「うん。後悔のないようにね」

「じゃーねー」


 三人が去り、ダンテが言う。


「ヒーラーに厚くするのもベーシックね?」

「ダンテの言う通りではあるけど、五〇〇〇ゴールドだとパワーカード三枚しか買えないじゃん?」


 ダメージ源である属性つき武器を前衛二人に装備させるのは必須。

 あと一枚何を買うという選択ならやっぱり……。


「後衛より盾役の防御用のカードが先決ですねえ」

「あのボンらは理屈がわからねえのか?」

「合理性よりも、三人の意見の折り合いが大事だからね」


 うちだとあたしの考えとカンで方針が決まるから、非効率なことは起きないんだが。


「つくづくあんた達がパーティーメンバーでよかったと思うよ」

「よかったぬ!」

「ユー様……」「姐御……」「ボス……」


 照れるなよ。

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