第528話:大体納得していただいたようです
海の一族を刺激せずにドーラに入国する方法については知っていた、とゆーことを納得してもらった上でだ。
「ちょっと話戻すよ? 帝国とドーラの関係が悪化してたことは貿易船の行き来が細っていたこと、ドーラに渡航制限出てたことで明らかだから、戦争が近いなーってことはわかる人にはわかってた」
降参兵全員が頷く。
「でも艦隊で港町レイノスを砲撃するだけでドーラが降参するわけはないから、他に何か攻め手はあるんだろうなーってことでこっちも調べてたんだよ。その結果浮上したのが飛空艇とあんた達の潜入した方法」
「「「「「「「「飛空艇?」」」」」」」」
飛空艇はメキス隊長しか知らないみたい。
かなりの秘密だったみたいだから当たり前か。
「飛空艇についてはあとで話すけど、空飛ぶ巨大軍艦だと思って。帝国の作戦としては、あんた達潜入工作兵で物流をかき回し、ドーラを長期戦に耐えられないようにする。で、飛空艇からドッカンドッカン爆撃して音を上げさせるというものだった」
「隊長、本当ですか?」
「事実だ。何てこった、情報が筒抜けじゃないか。事前に全部知られていたとは」
メキス隊長が乾いた笑い声を立てる。
「ドーラ側としては西域でゲリラ戦やられて、物資をレイノスに運べなくなるのが一番困る。そこで頭のいい人が考えた。皇女リリーが塔の村にいるという情報をリークすれば、工作兵の攻撃目標をこの村に限定できるのではないかと」
「リリー様の居場所も情報操作だったのか……」
「隊長、どういうことです?」
隊員の一人が聞くが、塔の村に狙いを定めたのはおそらくメキス隊長の独断だ。
あたしが代わりに答えてやんよ。
「考えてごらんよ。対ドーラ戦で一番見返りの少ない仕事してるのあんた達だぞ? 上陸方法からしてすごく危険なのに、やってること地味だもん。派手な戦功は全部飛空艇が持ってっちゃう」
あっ、てな顔になってキョロキョロしだす隊員諸君。
飛空艇を知らなければ、そーゆー考えにならないもんな。
「隊長メキスさんは思った。皇女殿下の身柄を確保して帝国本土に連れ戻すことができるなら大変な成果だ。部下達の苦労に報いてやれると」
「「「「「「「「た、隊長……」」」」」」」」
ちょっとサービスして話盛ったった。
ハハッ、メキス隊長が苦笑してら。
「あんた達はこの村でリリー皇女を取り戻すぞーって命令受けてたはず」
「その通りだ」
「帝国のタムポートを出航した時に八艦だった艦隊から一艦分かれた。こりゃあ戦争始まったって知られる前に上陸し、電撃的にここ塔の村を落とす作戦だから気をつけろーってすっごい警戒してたんだ」
「ほぼ全て読まれていたとはな。情報戦で完敗してたら勝てるわけがなかった」
「あたしにもわかんないことがあるから教えて。土地勘ないだろうに、何で素早く攻めることができたの? 斥候出してたからよかったようなものの、冒険者まだ皆寝てたって言ってたよ?」
「『マップ』の固有能力持ちがいるんだ。かなり広い範囲で地形や集落の位置がわかる」
「ますます有能だねえ。ドーラでも力になってよ」
結構な固有能力持ちがいるんじゃないか。
危なかったな。
でも開発や探索に有用な固有能力でもある。
「他何か知りたいことはあるかな?」
「さっきの飛空艇って何だい?」
「あっ、忘れてた。戦争になった時、帝国がドーラを降すために何か秘密兵器を用意してる、完成を待って攻めてくるってのは比較的早い時期から推測できてたんだ。だって決戦兵器がないとドーラは降参しないんだから」
頷く皆さん。
「ただ秘密兵器が何だかはわかんなかったの。でもリリーの話が引っかかっててね」
「皇女殿下の?」
「昔、技術者との会食時に、空を飛ぶ巨大な船の話が出たことがあったんだって。魔法で狙い撃ちされると弱いんだけど、同席していた魔道士が魔道結界を張って攻撃魔法を無効化することは可能だと。その場では単なる笑い話だったらしいけど」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「飛空艇の正体が判明したのはドーラに艦隊が現れる六、七日前かな。ただドーラに来るほど燃料積んでないってことも同時に知れたから、どこかに試運転するんだろうと。行く先として浮上したのがテンケン山岳地帯。村人が反乱を企てているという噂があったから」
その噂もパラキアスさんが牽制のためにかなり以前から広めてたんだろうけどな。
「反乱の噂は俺も聞いたことがある」
「テンケン山の聖火教徒が不穏だってな」
一人の隊員がおずおずと言う。
「……自分も聖火教徒だ。平穏を望む聖火教徒が反乱なんて起こすはずがない」
「実際のところ、山の聖火教徒が反乱を企てているなんてことはなかった。でも真偽はどうでもよかったんだ。反乱の噂があって、爆撃したって他に被害が及ばない。周りから隔絶されていて飛空艇の機密が漏れにくい、という条件が重要だったんだよ。かくして山の聖火教徒の集落は、飛空艇の爆撃の餌食となることが決まった」
「「「「……」」」」
静まる一同。
「またちょっと話変わるけど、あたしは『アトラスの冒険者』なんだ」
「石板に導かれて旅をする伝説の冒険者というやつだな? 本当かウソかは知らんが」
「ドーラでは伝説じゃないんだ。目的地が記されてる『地図の石板』ってのをもらうと、目的地に瞬時に行ける転送魔法陣が設置されるの。あたしも『アトラスの冒険者』になって、おいしい魔物肉を常に狩れるようになった」
軽い笑い。
「ドーラに聖火教大祭司ミスティさんって人がいて、テンケン山岳地帯の聖火教徒の集落の出身なんだ。あたしはミスティさんにテンケン山の集落行きの石板を渡されてたから、元々山の聖火教徒達とは顔なじみだったってのが前提ね?」
頷く一同。
「とするとあたしとしては放っておけないじゃん? 村人達をドーラに避難させて、ついでに飛空艇がドーラに来るとどえらい迷惑だから落とした」
「待て、どうやって?」
「飛行魔法で乗り込んで内部から壊したの」
「ば、バカな……いや、君くらいのレベルだと可能なのか……」
絶句するメキス隊長。
壊すこと自体は簡単だったぞ?
だって飛行中に乗り込まれることなんか想定してないもん。
脱出時、艦長さんに時間稼ぎされたから危なかっただけだ。




