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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第524話:前途ある若者達に会いに行く

 ――――――――――一一六日目。


「……あれ、思ったより増えてるんじゃない?」

「そうですねえ?」


 あたしん家から灰の民の村への途中、クレソンを挿した湧き水のところだ。

 春になったらごわさーっと繁殖するという話だったが、もう既に増えてきてるぞ?

 クララまで疑問形だと不安になるな。

 どーゆーことだろ?

 いや、増えるのはありがたいんだけど、正体不明なのはちょっと。


「アンノウンなクレソンかもしれないね」

「魔境原産でやすし」

「あり得るね」


 普通のクレソンより低温でも成長して繁殖するのか?

 本当ならば一年中食べ放題じゃないか。


「ひょっとしてメッチャありがたい性質?」

「逆に高温に弱いのかもしれませんが」

「なるほど、暑いのはダメって可能性もあるのか」

「しかし青物の少ない冬に食べられるなら嬉しいですぜ?」

「アイシンクソー、トゥー」


 うんうん、夏は食べられる野草もあるし、作物で困ることない。

 移民が来た時のこと考えても、厳しいのは冬だ。


「味はどうなんだろ?」


 皆が葉を摘まむ。


「うん、ふつーにおいしい」

「成長が早いせいですかね。辛みがほとんどないです」

「毎日食っても飽きないでやすぜ」

「サラダ向きね」


 このクレソンはいい。

 水のあるところならば育つとすると……。


「アトムが言うように、冬にこれが食べられるのは大きいわ。夏どうだかわかんないけど、早めに広めとくのががいいかもね」

「賛成です。夏がダメならダメで、秋以降に増やして冬用の食草として活用すればいいと思います」

「よし、今度魔境行ったらたくさん取ってきてさ。あたしの名前のついた自由開拓民集落と、掃討戦跡地米作りのところの貯水池、聖火教本部礼拝堂に持っていこう。その三ヶ所が一番必要だわ。他だとレイノス東の自由開拓民集落も水が豊富なんだっけ? ソル君とラルフ君に協力してもらってもいいな」

「「「了解!」」」


 レイノス東の自由開拓民集落は食料十分あるから必要性は薄いか。

 むしろ野菜の少ない塔の村でありがたがられるかもしれないな。

 あそこ水源がどこにあるか知らんけど。


 でも一番必要なのはこれから来る移民になんだよなあ。

 まだ掃討戦跡地は水が豊富なところが少ない。

 米作りのための水路や貯水池が絡みになるか。

 うーん、どっちにしても転移石碑設置後になっちゃうな。


「ま、いいや。行こうか」


 灰の民の村へ。


          ◇


「サイナスさん、こんにちはー」

「やあ、いらっしゃい」


 灰の民の村にやって来た。

 サイナスさんはいつも穏やかだ。


「これ、お土産ね」


 ストックしていた最後の黄金皇珠を渡す。


「これって結構な価値のある魔宝玉なんだろう? いいのかい?」

「ゲームのいいアイデアもらったからお礼だよ。前にレア素材『ささら雲母』もらっちゃったから、代わりにしてもらってもいいし」

「黄金皇珠って売ったらいくらくらいになるんだ?」

「二万ゴールドくらいかな」

「『ささら雲母』よりずっと高価じゃないか。悪いだろう?」

「つまんないこと気にするなあ」


 『ささら雲母』のおかげで交換できるようになったパワーカード『スコルピオ』は、今になって攻撃力増強の重要な役割を果たしている。

 すごい役立ってるから、少々の価格差なんていいのだ。

 思うにあたしにとってアイテムとは、手に入るタイミングが重要なんだよな。


「あたしがいいって言ってるんだからもらっておけばいいじゃん」

「君がいいなら大事に保管しておこう」

「黄金皇珠は験担ぎで欲しがる商人さんが多いんだって。いざという時もすぐ換金できると思うよ」

「そうか」


 サイナスさんも嬉しそうだ。


「前途ある若者三人は図書室にいる?」

「ああ。もうケスやハヤテも来てる時間だ」

「行ってくる!」


 図書室へゴー。


          ◇


「おーい、アレク! ケス! ハヤテ!」


 皆が一斉にこちらを向く。

 ハハッ、嬉しそうだな。


「ユー姉!」「姐さん!」「ユーラシアさん!」

「字覚えのゲームどうなってるかな? サイナスさんが、もうかなりできてるみたいなこと言ってたから」

「いきなりそういう話なんだね?」

「いや、一昨日あんた達を見た時は疲れてそうだったから、話すのやめたんだよ」


 一応気を使ってるんだぞのアピール。


「ボク達のことではなくて。ユー姉は帝国戦で危ないところを担当してたんだろう?」

「戦争での活躍を聞きたい」

「話して欲しいだ!」

「ええ? 争いなんて何も生まないんだぞ? 悲惨な戦争の記憶なんて忘れて、未来への第一歩を踏み出すことを考えなよ」

「いいこと言ってるつもりかもしれないけど、ドーラではほぼ戦争なんてなかったからね?」

「この戦争を知らない子供達め」


 仕方ないから、あたしが帝国のテンケン山岳地帯で経験した、戦争の悲哀と悲惨さとゆーものを教えてやるか。


 「……役人を名乗る詐欺に気をつけろと、回覧板で回ってきたぞ? って言ったら、同行してた子達が笑っちゃってさあ」

「「「あははははははは!」」」


「……で、その艦長さんが四天王と言うからにはあと二人いるのだろう? って聞くから、『カードマニア』と『インチキ横文字トーカー』だよと教えてあげた」

「「「あははははははは!」」」


「……『精霊使いユーラシアのサーガ』のエピソードとして相応しいくらいかなって言ったら、ヴィルが相応しいくらいぬ! って」

「「「あははははははは!」」」


「……お前ら一〇〇人も雁首並べて一人もおかしいと思わなかったのかって、上の人に怒られたらどうするの? 経歴に傷がつくぞ? って言ったら、何もしないで帰っちゃったんだ。迎え撃つ準備してたのに」

「「「あははははははは!」」」


「……おっぱい割とあるんだよって教えてあげたら、どうして知ってる! って聞くんだよ。ハグしたことあるから って言ったら全員がすげえ羨ましそうなの。リリーの話は帝国で鉄板」

「あははははははは!」


「……覗きには敏感な年頃だし。でもすごいえっちな感覚があるから嫌いなんだけどって抗議したんだ。ハハハすまんなって謝らせたった」

「「「あははははははは!」」」


「……おかげで美少女戦士殿のような方と知り合うこともできますがって言うからさ。十分おつりが来るねえって」

「「「あははははははは!」」」


 どーだ、これがバエちゃんの腹筋を崩壊させた攻撃だ。

 まいったか。

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