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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第523話:状況が少しずつ動いていく

 ちょっと話題を変える。

 ヨブ君について疑問な点があったから。


「カトマスの成人年齢って一四歳って聞いたけど、合ってる?」

「確かに一四歳だねい」

「ヨブ君ってニルエと同い年なんでしょ?」

「はい、そうです」

「成人してから『アトラスの冒険者』になるまでの三年間何やってたんだろ?」


 ダンのケースは例外として、『アトラスの冒険者』は成人すると比較的すぐにお誘いあるみたいだけどな?

 ニルエが話す。


「ヨブさんは昔から期待されてたんです。子供の内から魔法を使えましたし、剣の筋もいいということで」

「うん、期待したくなるのはわかる」

「でも自信家というか楽天家というか。やればできる、明日から本気出すみたいなところはありました。この三年は、新人冒険者パーティーや商売のお手伝いなんかをしていたと思います」


 ニルエは言葉を選んでるけど、要するに定職に就かずフラフラしているとゆーことか。

 大いに頷ける。

 『アトラスの冒険者』本部サイドも様子見てたのかもしれないな。


「ニルエのお婿さんには向いてないねえ」

「そうだねい」

「もっと真面目な人がいいと思うよ」


 ニルエが慌てて言う。


「いえ、ヨブさんのような才能ある素敵な方が、私などを相手にするはずがないので」

「でも向こうはニルエを意識してるぞ?」

「ふん?」

「今日あたし達を見た第一声が『ニルエと魔女!』だったんだ。『魔女とニルエ!』じゃなくてさ」


 ニルエを気にしていたからこそ、先に名前が出たのだろう。


「なるほど、よく気がついたねい」

「何でもないところから物事を推測するの好きニヤニヤ」

「……」


 恥ずかしがらなくてもいいのに。


「最近モテてる?」

「……少し声をかけられるようになりました」

「まだそんなもんか。『いい子』持ちになってから一ヶ月も経ってないしな。ばっちゃんの孫という負の財産が重過ぎるのかな?」

「ナチュラルに失礼なことをお言いでないよ!」


 アハハと笑い合う。


「ニルエはこれからかー」

「本当にあのヨブとかいう新人は大丈夫なのかい?」


 自分の収入に関係あると思うと気になるのかな?


「怠けグセとゆー不安がないではないけど、弟さんが尻叩くから当面は大丈夫だと思いたい。散々メリットを言い聞かせてきたからね。全てを放り出して『アトラスの冒険者』辞めちゃうほど野放図とも思えないな」

「そうかいそうかい」

「実力はあるからねえ。あたしが『アトラスの冒険者』になった時よりはよっぽど」


 考えてみれば今回はおかしなケースだった。

 エルマみたいな初心者でひ弱な子が脱落しそうになるのはよくわかるし、手も差し伸べたくなるのだが。

 実力がどうこうより、ヨブ君本人の性格が大きく関わってたからなー。


「じゃ、今日は帰るね」

「ユーラシアさん、さようなら」

「また来るんだよ」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「サイナスさん、こんばんはー」


 夕御飯後、寝る前恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「カラーズは何もなかった?」

『特には。緑の民オイゲン族長が今日も緩衝地帯に来ていたが』

「目立っちゃわない?」

『あの鮮やかな緑髪はもちろん目立つ。しかしいずれ掃討戦獲得地の開墾を行うという大義名分があるしな?』


 オイゲンさんが商売の場である緩衝地帯に顔を出してる状況は、緑の民長老連に知られるとよろしくないんじゃないか。

 でも追及された時は他色の民の応援をもらう手があるか。

 強引に商売や交易を進めてもいいしな。


『白・黒・赤の民にも転移石碑設置以降の話は大まかにしてある。緑の民の現在置かれている状況と、今後仲間に引き入れる算段についてもな』

「赤のカグツチさんとか、余計なことしないよね?」


 あの人突っ走るところあるからな。

 掃討戦跡地でいい場所確保しようとして部族間で拗れると、後々面倒なことになるぞ?


『陰でユーラシアが動いてるって言ったら納得してたぞ』

「そお? 最近あたしが関与してればオーケーみたいな、謎の信頼感がある気がする」

『君のカリスマか人徳だろ』

「あれ? あたしのセリフを取られてしまった」


 笑い合う。


「転移石碑設置はいつになるのかな?」

『いや、わからないな』


 アルアさんとこで確認したいけど、素材の手持ちがほとんどない。

 確認のためだけで行くのも癪だな。

 他にやることあるのに。


「まーいーか。急かすようで悪いし。明日午前中にそっち行くよ。アレク、ケス、ハヤテはいるよね?」

『おそらくは』

「札取りゲームの進捗聞こっと」

『あれもユーラシアが考えたのか?』

「こんなん作ってってちょこっと口で言っただけだよ。よくできてるならあの三人の手柄。サイナスさん、どう思った?」

『子供向け、読み書きできない人向けの教材としていいと思う。札取りじゃなくて嵌め込みでもいいと思ったな』

「どゆこと?」


 嵌め込みとは?


『空欄絵札に字札を嵌め込む穴を開けておくのさ。全ての空欄絵札を埋めると字札が全部なくなるみたいな』

「あっ、サイナスさん頭いい!」


 それだと一人遊びもできるし、字札が全部収まった時の爽快感がある。


『対人ゲームとしては札取りのほうが面白いと思う。いずれ両方売り出せばいいんじゃないか?』

「いいねえ」

『どっちを買うか二択を迫るわけだ』

「おっ、サイナスさん人間が悪くなってきたね」

『君のやり口だからな?』


 アハハ、儲かりゃいいのだ。

 買った人も文字を覚えることができてウィンウィン。


『カトマスに行ったんだったか?』

「行った。『アトラスの冒険者』を辞めちゃいそうな新人がいたんだけどさ、マルーさんに協力してもらって復帰させた」

『……魔女に協力させるというのがよくわからないんだが?』

「マルーさん、ギルドに出資してるんだよ。辞めそーな子が冒険者としてものになれば、依頼手数料やアイテム売買でギルドが儲かる、配当金が出るぞーって」

『君の説得力は異常だな。協力を断ると損する気がする』

「だって基本的に乗ると得な話しか持ちかけないもん」

『どうして乗るべき話ばかり用意できるのかわからん』


 と言われても、関係者なんて損得に絡んでるに決まってるじゃん。


「じゃ、明日行くからね。おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は灰の民の村、午後は塔の村かな?

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