第521話:ヨブノブ試しに戦ってみる
マルーさん及びニルエと一旦別れ、ヨブ君の二つ目の魔法陣の転送先に飛んできた。
フィールドだけど岩陰の多い、半分ダンジョンみたいなところだ。
魔物を倒せのクエストだと思うけど。
「ノブ君にはこれ貸したげるね」
「お姉ちゃん、これは何?」
「美少女精霊使いの秘密の武器と防具だよ」
「すげえ!」
ハハッ、テンション上がってるわ。
『スラッシュ』と『シールド』のパワーカードを一枚ずつ渡す。
「カードに書いてある説明は読める?」
「おいら、字は読めないんだ……」
ヨブ君もすまなそうに言う。
「俺達、読み書きの教育は受けてないんだ。今になって読み書きできないのは不利だなって思うけど」
「まー仕方ない。でも全然心配いらないよ。二、三クエストを終えると、ドリフターズギルドっていう、冒険者の集会所みたいなところへ転送で行けるようになる。そこにはタダで読み書きを教えてくれる人がいるからね」
「そうなのか?」「すげえ!」
「ほらほら、『アトラスの冒険者』を諦めることがどれだけ損なのか、わかってきたでしょ? ま、いいや。ノブ君、カード起動してみ? 魔力を流し込むイメージで」
「わかった!」
『スラッシュ』のブレードが具現化する。
うん、問題ないね。
「将来は普通の武器がいいかもしれないけど、今は他に武器がないからこれでやってみなさい」
「いや、おいらこれ軽くて気に入った」
「そお? ギルドまで行ったら、いろんな種類のパワーカードを売ってるよ。七枚まで同時に起動できるから、どうやったら魔物を倒しやすいか、考えながらカード揃えていくのが楽しいんだよ」
ノブ君もパワーカード仲間になるかな?
実際に手にした時のフィーリングってすごく大事だと思う。
気に入ったのなら、ノブ君はパワーカードに向いてるかもしれない。
「パワーカードの製作職人もいるよ。自分だけの特注のカード作ってもらうと愛着あるんだな、これが。今では製法の失われたカードなんてのもあるんだ」
「すげえ!」
あれ、ノブ君だけじゃなくてヨブ君も瞳キラキラさせてますね?
男の子はパワーカード好きみたいだなあ。
「ヨブ君も興味あるみたいだから、パワーカードの利点欠点説明しとこうか?」
「「ぜひ!」」
食い気味だよ。
ヨブ君ったら、とても『アトラスの冒険者』を諦めかけてたとは思えんわ。
「普通の武器防具と併用はできないと思って。効果が干渉しちゃうんだって。だからもし伝説の魔剣とか手に入れたとしても使えない。パワーカードは容量の関係で、伝説的にすごいカードなんてものはない。あくまで組み合わせを工夫して戦うもんだと考えてね」
露骨にテンション下がったね。
目の輝きが失せたわ。
「だから強くなれてもうちのパーティー程度までかな。でもうちも捨てたもんじゃないよ。一日にドラゴン一〇体倒して、絶滅するからやめろって言われるくらい」
露骨にテンション上がったね。
ハハッ、現金なもんだ。
「ドラゴンを……。精霊使いユーラシアって、今ドーラで一番名を聞く冒険者だもんな」
「あたしは有名人だったか。可愛いって得だな」
「すげえ!」
うちのパーティーはレベルは高いけど経験不足だなあって思ってた。
でも対飛空艇戦で生き残ったことで、経験を積んだという思いがある。
成長した証かもしれない。
「あと手ぶらに見えるから結構舐められる。そーゆー時は投げ飛ばしてやると大人しくなるよ。でも蘇生薬持ってない時は投げ飛ばすの推奨しない」
「「すげえ!」」
おーい、ヨブ君の語彙もノブ君になってんぞ?
兄弟だなあ。
「利点としてはやっぱ軽いことは挙げられるね。冒険者は入手した素材やアイテムを売るのが大きな収入源だけど、手が空いてればたくさん持って帰れるじゃん?」
「ああ、わかる」
「お値段も有利な点だな。基本的なパワーカードは一枚一五〇〇ゴールドなんだ。一人前七枚フル装備分揃えて一万ゴールドちょいってのはかなり安い。もっとも強敵と戦わなきゃいけなくなると、あのカードがどうしても欲しい、特注したいってすぐなるけど」
「「すげえ!」」
あんまりすげえこと言ってない気がするけど?
話し手がすげえから尊敬されてしまうみたいだな。
「じゃあ魔物と戦ってみようか」
ヨブ君は以前練習用に使っていたという剣と、チュートリアルルームでもらった胸当てを装備している。
杖ももらったらしいが、いずれ売却だな。
杖なんか渡すから、魔法使いと勘違いしてリタイヤしかけるのだ。
ヨブ君が脱落しそうだったのって、半分バエちゃんのせいじゃないか。
「ここ、どんな魔物が出るのかな?」
「大ネズミ、土トカゲ、オオゴミムシが、ほぼ単体で出現するんだ」
「クリア条件は?」
「五回戦闘に勝利すること」
「あんた達なら楽勝だぞ? ちょっとこれ触ってくれる?」
ギルドカードを起動する。
「ヨブ君がレベル三、ノブ君が一か。ノブ君は魔法力も高いね」
「これは?」
「ギルドカード。ギルドまで行くともらえるの。レベルやステータスがわかるだけじゃなくて、他の冒険者と連携するのにも使えるから便利だよ。ギルドに行くのますます楽しみでしょ?」
「ああ」
ついでに聞いとくか。
「サクラさんって人知らない? 髪の毛アップにしてて眼鏡かけてるおっぱいさん。確かカトマス出身だったと思うけど」
「「知ってる!」」
おお、目が輝いてるね。
カトマスでも憧れのお姉さんなんだろうな。
「あの人ギルドの依頼受付所で働いてるんだ。ギルドに行くのさらに楽しみになるでしょ?」
「「うん!」」
「字が読めなきゃ依頼請けられないぞ? 勉強にも身が入るでしょ?」
「「うん!」」
やる気マックスになったところで大ネズミ出現。
レッツファイッ!
ヨブ君の攻撃! 大ネズミにダメージ! 大ネズミの反撃! ヨブ君が受ける。ノブ君の攻撃! 大ネズミを倒した! ワンターンキルだ!
「ひょっとして初勝利なのかな?」
「ああ」「やったぜ!」
「おめでとう。でも楽勝じゃないか。あたしは最初スライム一匹倒すのに三ターン以上かかったよ。こっちの白い子と二人がかりで」
「ウソだろう?」
ヨブ君が驚くけど、素人二人だとそんなもんだぞ?
あの時は戦術の失敗もあったけど。
「この分だとすぐクエスト終わるからやっちゃおうか。あっ、魔法の葉生えてるから採取して」




