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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第519話:ビレッジネームテラーって何?

「サイナスさん、こんばんはー」


 寝る前恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。今日はこっちへ来たから連絡ないと思ったけど』

「あたしの可愛い声が聞けないとサイナスさんが可哀そうだから」

『ハハハ』


 どーゆー意味の笑いだろうな?

 美少女の提供する癒しに心がほぐれた?


「明日灰の民の村へ行って、アレク達に札取りゲームの進捗聞こうかと思ったんだけどさ。ちょっとあたし用ができちゃった。カトマス行ってくる」

『『強欲魔女』のところか?』

「マルーのばっちゃんのところも顔出すよ。でも直接の用は脱落しそうな『アトラスの冒険者』を指差して笑ってくること」

『いい趣味だこと』


 アハハと笑い合う。


『君そんなのの世話焼いてるのか?』

「『アトラスの冒険者』に選ばれる人って、皆結構な才能持ち能力持ちなんだ。埋もれちゃうともったいなくてさ。人材活用の面で」

『ふうん。面倒見がいいな』

「聖母のようでしょ?」

『やってることは廃物利用だけどね』


 再びアハハと笑い合う。

 ドーラは人口少ないからな。

 優秀な人にはしっかり働いてもらって、国力を底上げしたい。

 あたしの目指すいい国への第一歩だ。


「とゆーわけで、灰の民の村へ行くとしても明後日以降だから」

『うん、了解だ』

「今日はそれだけ。おやすみなさい」

『ああ、ちょっと待った』


 何ぞ?

 可愛いあたしの声をもっと聞きたいってことか?


『今日の青の民ディオゲネス族長代理だけど、君どう思った?』

「冗談通じなさそうな子はあんまりタイプではないかも」

『そうでなくて』

「なかなかだねえ。将来有望と見たよ。正直こんな子が青の民にいるのかってビックリしたくらい。セレシアさんより族長向き」


 セレシアさんは店に専念して、ディオ君が族長やればいいんじゃないの?

 でもディオ君じゃ若過ぎて民が納得しないかもか。

 なら今の族長代理のポジションは案外いいのかも。


『やはり君はそう見るか。わかった。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はカトマスか。


          ◇


 ――――――――――一一五日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「カトマスへようこそ! お、美少女精霊使いじゃないか。おはよう」

「おっはよー、イケてるおっちゃん!」


 朝からカトマスに飛んできた。

 いつもこのおっちゃんいるな。


「おっちゃんは転送先の番人なの?」

「オレか? まあ番人と言えば番人かな。本来の職はビレッジネームテラーだ」

「ビレッジネームテラー?」


 聞いたことのない謎ワードだ。

 言葉の響きがダンテっぽい。


「カトマスへようこそ! って言うための人員だな」

「必要なの? その人員」

「必要不必要の問題じゃないんだな。イケてる村の心意気ってやつさ」

「おおう」


 確かに『~村へようこそ!』って言われたら気分がいいな。


「おっちゃん、ありがとう。勉強になったよ」

「ハハッ、楽しんでいってくれよ」


 楽しんでいってくれよと言われりゃ、歓迎されてる気になるもんだ。

 確かにイケてる村には必要な人員だわ。

 マルーさんの家へ。


「おっはよー」


 うんうん、マルーさん元気だね。

 ニルエは奥かな?


「おや、アンタかい! 生死不明って聞いていたんだよ。アタシを心配させるとは偉くなったもんだねい」

「ごめんねえ。寿命削れちゃった?」

「削れてないよ! 不吉なことをお言いでないよ!」


 アハハ、マルーさんもあたしを心配してくれていたのはわかる。

 ニルエも出てきた。


「ユーラシアさんいらっしゃい!」

「ニルエ、これお土産ね」


 冷凍コブタ肉をニルエに渡す。


「ありがとうございます」

「ん? アンタ、固有能力が減ってるね」

「減ってる?」

「『ゴールデンラッキー』が素因に戻ってる」


 へー、素因に戻ることもあるんだな。


「あたしの『ゴールデンラッキー』は強い固有能力だって言われてたんだけどな」

「固有能力が消える例はないではないけど、あれほど強い固有能力がなくなるのは前例がないねい」

「ふーん、面白い?」

「まあアンタだからそういうこともあるんだろ」


 流されたぞ?

 残念、エンターテインメントにはならなかった。

 でも『ゴールデンラッキー』はいつ減ったんだろ?

 リモネスのおっちゃんはあたしの固有能力五つって言ってたから、それ以後か。

 いや、おっちゃんは『鑑定』能力持ちじゃなくて、あたしの心を読んで五つって言ったのかもしれないしな?


「どうする? 『ゴールデンラッキー』を復活させとくかい? 比較的簡単な条件だよ」

「運のパラメーターが下がるわけじゃないんでしょ? じゃあ実質的に何も困らないからいらない」

「そ、そうかい」


 残念そうだね。

 ばっちゃんは固有能力を重視する人だから、発現させとけって考えなんだろうな。

 まー自然でいいよ、自然で。


「ユーラシアさんは、今日どうされたんですか」

「ニルエと同い年のヨブ・タルクスカルって人に会いに来たの」

「ヨブさんですか。もちろん存じておりますが」

「よかった。家に案内してくれない?」

「もちろん構いませんよ」


 マルーさんが興味を持ったようだ。


「アンタが会いたがる男とは、どんなやつだい?」

「『アトラスの冒険者』の新人さんだよ。ただもう脱落寸前なんだよねえ。転送魔法陣を一ヶ月近く使ってないみたいで」

「ふん、落伍間近な子かい。どうしてアンタが関わろうとしてるのかはわからないけどねい」

「せっかく『アトラスの冒険者』になったのに、爪痕も残せないってもったいないじゃん? 手伝ってやろうかと思って。ばっちゃんも協力してよ」

「……アンタが言うなら仕方ないが……」


 乗り気じゃないね?


「ばっちゃんは冒険者ギルドの出資者と聞いたよ」

「出資に何か関係があるのかい?」

「『アトラスの冒険者』が儲かれば配当金が出るんでしょ?」

「……ああ、今期は出るらしいね。主にアンタの働きだと聞いたが」

「新人が入ってくるたびに、初期装備代や魔法陣の設置で費用がかかるんだぞ? 冒険者がまともに働けば依頼手数料やアイテム売買でおゼゼが儲かるのに、『アトラスの冒険者』が赤字体質なのは新人の脱落と冒険者不足が原因だ」

「う、うん……」

「脱落しそーな冒険者を救い上げることは『アトラスの冒険者』の儲け。イコールばっちゃんの儲けだ。老後が豊かになるんだぞ?」

「……」


 無事協力を取りつけました。

 やったぜ!

 人間を動かすのはお得かそうでないかだね。

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