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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第516話:公式ライバル店

「サイナスさん、こんにちはー」

「ああ、いらっしゃい」


 聖火教の礼拝堂から帰宅してお昼をすませたあと、灰の民の村にやって来た。


「アレクは?」

「アレクもケスも輸送隊として出ているぞ。今日帰ってくるが」

「勤労少年天晴れだねえ」

「君が輸送隊に入れたんだからな?」

「こき使われてしまえ」

「本音がひどい」


 アハハと笑い合う。


「これ、お土産のお肉だよ」

「いつもすまんね。で、今日はどうするんだ?」

「何か死亡認定されてたみたいだから、足あるわ、幽霊じゃないわってアピールしてくる」

「ハハハ、死亡認定じゃなくて生死不明だぞ。で?」


 掃討戦跡地を移民が暮らせるくらいまで開発したい。

 でも転移石碑が設置されないと動くに動けないからな?


「とりあえずフェイさんとこだけ話を通しとこう」

「移民のことか」

「うん。西域はあんまり人数を受け入れられないと思うんだよね。やっぱどーしても掃討戦跡地に移民を住まわせることになるからさ」


 地形と面積考えりゃ必然だわ。


「パラキアスさんもデス爺も、こっちに移民押しつけるつもりで掃討戦を企画したんだと思う。でも全部任せきりなのがひどいよねえ?」


 サイナスさんが苦笑しながら頷く。

 もっともサイナスさんは、早い時期からこういう事態を想定していたが。


「転移石碑ができたら各色の民の主だった人集めて、移民来るぞー開墾するぞーってぶち上げたいんだよね。そーゆーことやれるのフェイさん家しかないし」

「ああ」


 黄の民の族長宅はすごく大きいのだ。


「では行くか」


 カラーズ緩衝地帯へ。


          ◇


「……で、目一杯聖火教徒に貸し作ってきたんだ。今日なんかさ、ヴィルも礼拝堂に入れてもらえたんだよ」

「マジかい?」


 道中、サイナスさんと話しながら行く。


「空飛ぶ巨大軍艦の艦長と山に攻めてきた隊長さんは、さりげなくドーラに来いって誘ってみたけどどーだろ?」

「軍人らしい軍人はドーラにいないからな。必要な知識を持つ人材かも知れない」

「有能だったしなー」


 ドーラの兵隊といえば、レイノスの警備兵くらいだ。

 戦うための人員じゃない。


「間抜けな役人もいたよ。あたしを逮捕しに来たって堂々と宣言してたクセに、ちょっと煙に巻いたら何もしないで帰っちゃった」

「その役人の悲惨な運命が見えるようだ」

「物理的にクビって話でやしたぜ」

「傑作なのはその役人、今塔の村にいる皇女リリーにしつこく言い寄ってたんだって」

「君、帝国には戦争しに行ったんだろ? どこでゴシップを聞いてくるんだ?」

「捕まえた兵士を尋問した結果?」

「あれは尋問じゃなくて談笑でしたよ」

「ザッツライト」


 笑いながら緩衝地帯に到着。黄のショップへ。


「おーい、フェイさーん!」

「サイナス族長、よろしく。帰ってきたか、精霊使いユーラシアよ」


 緑のオイゲン族長と、あたしと同じくらいの年齢の男の子がいる。


「オイゲンさんこんにちはー。こっちの子は?」

「初めまして。自分は青の民族長代理ディオゲネスと申します」


 以前聞いてたセレシアさんの弟か。

 ほう、これはなかなか。

 角ばった顎が剛毅さを、澄んだ瞳が知性を感じさせる。


「ディオ君は剣術やってるっぽいね? セレシアさんが青の民を放ってレイノス行っちゃう理由がわかったよ。こんなしっかりした弟さんがいたんだねえ」

「ハハハ、ユーラシアが来たからには何か用があるのだろう? まずそれを話せ」

「帝国から移民が来るんだって。来年だけで一万人以上」

「「「一万人?」」」


 驚く三人にサイナスさんが説明する。


「先の掃討戦も、移民を彼の地に入植させようという含みがあったと思われます」

「何と、あの時期に今のこの事態を予測していたと?」

「まあデス爺とパラキアスさんの企んだことだから。でも移民だって放り出されたら困っちゃうでしょ?」

「ふむ。まず土地と食料ということだな?」

「将来のお得意さんだからね。先行投資しとかないと」


 オイゲンさんとディオ君は感心してるが、フェイさんはニヤニヤしている。


「どちらにしても、実際に動くのは転移石碑が設置されてからになります。それまで記憶しておいていただければ」

「転移石碑が設置されたらフェイさん家貸してよ。主だった人呼んでがーっと盛り上げて開墾するぞーってふうに持ってくから」

「了解だ。パワープレイだな?」

「うん、ゴリ押しの出番」


 フェイさんと笑い合う。


「ディオゲネス族長代理よ。これが精霊使いユーラシアだ。先ほどの話、相談してみてはどうだ?」

「何か問題あるの?」


 ラブい話かな?

 違うか。


「……即問題、というわけではないんですが……」


 ディオ君がためらいがちに話し出す。


「姉上は服飾産業に入れ込み過ぎではないかと、自分は危惧しているのです。今は大変売れ行き好調なのですが、いつまでも続くものではないのではないかと……」


 レイノスにあるセレシアさんの店の話か。

 うむ、確かに。

 皆が頷く。


「今、青の民の村は服飾一色です。針子も増やしてますし、姉上の店が傾くと青の民皆が危ういのです」

「あっ、針子増やすなって言ったのに。しょうがないなー」


 ブームなんて続かないんだぞ?

 セレシアさんの店はカラーズブランドを背負ってるという面があるから、問題あっちゃ困るんだが。


「服飾一辺倒なのは悪いことじゃないんだ。何故ならドーラ人は裸で暮らすような未開人じゃないから、服は必ず売れる」


 ディオ君が頷く。


「一方でセレシアさんは天才肌じゃん? あのデザインは熱狂的なファンを生むだろうけど、万人にウケるファッションではないよ。おそらく流行り廃りはあるから、ディオ君の懸念は正しい」

「ど、どうしたら……」

「もう一つ店を出せばいい」

「「「えっ?」」」


 ディオ君とオイゲンさんとサイナスさんの声がハモる。

 が、フェイさんは面白そうにしている。

 悪いやつめ。


「セレシアさんの店と対立軸的な店をオープンするんだ。例えばクラシック、実用的、帝国風辺りをテーマにするでしょ? で、セレシアさんの店のライバル店を名乗って、大々的にアピールする」

「自らの手でライバル店を作るのですか?」

「セレシアさんの店に満足いかない、いけ好かないって連中を取り込むんだよ」


 ライバル店立ち上げちゃえば、セレシアさんが過敏に反応して対決姿勢が愉快なことになりそう。

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