第514話:聖火教の礼拝堂へ様子を見に行く
――――――――――一一四日目。
フイィィーンシュパパパッ。
うちの子達とともに聖火教の本部礼拝堂へお肉を持ってきた、が?
「お肉って礼拝堂の中に持ち込んでいいものなのかな?」
「さあ、どうでしょう?」
お肉は愛と平和の象徴で、あたしとしては信仰の対象にしてもいいものだ。
でも何となく不浄なものとゆー気もする。
聖火教のルールがわからんからな?
クララも知らないんじゃ考えるだけムダだ。
わからんことは聞くが吉。
「おっはよーございまーす!」
両開きの大きな扉を開け、中へ進む。
ニコニコした修道女に挨拶される。
「精霊使いさん、こんにちは。御無事でしたか」
「無事も無事、元気も元気だよ」
「よかったです。大変な爆発に巻き込まれたようだって言われてたんですよ」
「ギリギリセーフだったの」
そーだ、もじゃもじゃ長老のクランさんは、爆発を確認してからドーラに来たはずだ。
心配させちゃってたかもしれないな。
あたしのチャーミングなフェイスを見せて安心させてあげないと。
「ミスティさんと移民の皆はどうしてるかなーと思って、様子見に来たんだよ」
「ミスティ様含めて主だった方は皆、北の移民区画へ行っています」
「お土産にお肉持ってきたの。どこ置いとけばいいかな?」
修道女が首をかしげる。
「……やはり新しい住民がおいでになりました、北へ運んでもらうのが一番よろしいのですが」
「りょーかいでーす」
「お手数おかけして申し訳ありません」
北の整地してたとこへ。
やはりここが移民のための区画になったか。
「おーい! 精霊使いユーラシアがお肉持ってきたぞおー!」
一斉に集まってくる人々。
お肉の効果は絶大だな。
お肉イズベリーグレイト。
「ユーラシアさん!」
「精霊使い殿!」
ミスティさんと長老が声をかけてくる。
よしよし、ドーラでの生活は順調にスタートしているようだな。
長老の生気に満ちた顔見りゃわかる。
「御無事でしたか」
「うん、昨日ドーラに帰ってきたの。こっちで全て終わってるって知らなかったからさあ。攻めてくる兵隊さん達をからかい過ぎちゃったよ」
「精霊使い殿のおかげですぞ」
「今回はヴィルの働きが大きかったんだよ」
「高位魔族を使うことを印象付けて、聖火教から目を逸らせていただいたと聞きました」
「そうそう。聖火教徒何にも悪くないから、邪険にされると可哀そう。サービスだよ」
「本当にありがとうございます!」
「あたしよりヴィルを褒めてやって欲しいな。呼んでいい?」
「「もちろん」」
「ヴィルカモン!」
赤プレートに呼びかける。
「ところでお肉だよ。皆で食べてよ」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
どこ持っていっても喜んでもらえるお肉は素晴らしいなー。
お、来た来た。
「御主人に呼ばれてヴィル参上ぬ!」
「今回の作戦で大活躍した悪魔ヴィルでーす。ミスティさんとの連絡係を務めて山の集落の皆の移動を滞りなく成功させ、帝国本土で暴れることによって、この件で聖火教徒の立場が悪くなることを防ぎました。拍手!」
「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」
ヴィルがすごく嬉しそう。
よかったね。
「ヴィルはいい子ですけど、一方で悪い子の悪魔もいます。そっちはあたし達の前に現れたらお仕置きしておきまーす。ってのはひとまず置いといて」
ミスティさんが何か言いたそう。
やはり戦争に直接関係あって戦前に知らなくていいこととは、悪魔バアルのことだったようだ。
騒動の原因となったバアルの情報は得ておきたいな。
「帝国から移民が大勢来まーす。来年だけで一万人以上は間違いないって」
「い、一万人以上?」
「どうすんだ。多過ぎるだろ……」
人々がざわつく。
現在のドーラのノーマル人人口がおそらく一〇万人くらいだろう。
移民一万人のインパクトは非常に大きい。
「はい、落ち着いて。移民の主体は貧しい人、若い人、聖火教徒なんだって。見捨てておけないでしょ?」
困り顔ながら頷く人々。
「食べ物さえあればどうにかなるって。春までになるべく畑広げといて。冬の貯えの内でも、来年蒔けるような種はなるべく節約しといてね。できることは以上だ!」
「そ、それくらいなら……」
「まあ何とか……」
ホッとした表情が広がる。
……ミスティさんの一存でこの北の区画を整地させたことを、不満に思ってる信徒がいたってことだったな。
もうテンケン山岳地帯からの移住者のためだってわかってるだろうけど、少々ミスティさんの求心力上げといてやるか。
「んーでもここは、世界一の聖火教徒の集落になるポテンシャルはあるんだぞ?」
「「「「えっ?」」」」
ポカンとするなよ。
「よく考えてみなよ。移民が来たがる、人口が増えるってことは、ドーラの発展は約束されてるのも同然でしょ?」
「おうよ」
「精霊使いさんの言う通りだな」
納得する人々。
「で、平野の広がるアルハーンとクー川下流域は、今後ドーラで最大の人口を抱える可能性が高い」
皆が頷く。
真剣に聞いてるね。
「中でも礼拝堂のあるここは港町レイノスに近く、またカラーズやアルハーン平原中心部との中継点に位置するでしょ? 気候が良くて土地の広さがあって、今後帝国からどんどん聖火教徒が来ることが決まってる。ここ以外のどこに、聖火教徒の希望を託すに相応しい場所があるってゆーんだ」
皆のテンションが上がってきたぞー。
「聖火教の未来は諸君らの働きにかかっているっ!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
「この地に本部礼拝堂を構えたミスティさんの見識は正しいぞ!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
「お肉食べてパワーをつけるのだ!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
よーし、こんなもんだろ。
「ユーラシアさん、ありがとうございます」
ミスティさんが感動しているみたい。
これもサービスだよ。
「いいんだよ、お肉は正義だからね」
「いえ、お肉ではなく……」
違うの?
まあ野菜を食べるのも健康のために必要だと、亡くなった母ちゃんは言ってたけどな。
「ちょっと礼拝堂のほうへ、よろしいですか」
「うん」
「ワフロス、あなたもお出でなさい」
「は」
「ワッフー出世したねえ」
完全にワッフーがミスティさんの側近ポジションのようだ。
笑いながら礼拝堂へ歩を進める。




